上 下
963 / 1,135

千五話 俺だけを見ろ

しおりを挟む
(本当に、こんな奴と出会える、とはな!!! 場合によっては、あの紅騎士よりも、上か!?)

ソウスケたちが女王蟻との戦闘を始めた頃、ザハークは……まだアサルトベルとの激闘を楽しんでいた。
六つの足、全ての漆黒のブレードを持ち、毒を自在に操る殺戮蟻。

人型のモンスターが繰り出すのとはまた違う攻撃が、ザハークの闘争心を更に熱くさせる。

だが、そんないつも通り強者との戦闘を楽しむザハークとは違い、アサルトベルは非常に焦っていた。
何故なら……自分は強者として生まれ落ちたにもかかわらず、目の前の鬼すら圧倒的出来ない。

強敵であることは解っていたが、それでも戦い続ければ勝てる自信があった。
実際にアサルトベルの戦闘技術、魔力操作の腕はザハークとの戦闘で確実に上昇し、既に一流に近い域に到達している。

六つの足から生えているブレードによる斬撃は……ただ魔力を纏っている状態であればまだしも、毒を纏った斬撃であれば、ザハークでも真剣に対処しなければならない。

身体能力の高さ、センス。
近距離と遠距離、どちらも行える万能型。
ソウスケたち三人抜きで突撃していた場合、数分以内に全滅していた。

だが……殺戮蟻にとって大き過ぎる壁が三つもあり、まだその一つも越えられていない。

こうしている間にも、着々と他の敵たちが女王に向かって進行している。
アサルトベルの本能には女王を守らなければならないという命が刻まれているが、だとしてもまず現在戦闘中の難敵を倒さなければいけない。

「ッ!!! ギィィイイイァアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!」

決めた。

まず……まず、目の前の鬼を全力で殺す。
全身全霊で、全集中状態で殺すことだけを考える。

後の事は、終わってから考えれば良い。

(っ!! ふっふっふ、そうだ!!! それで良い!!!! 他のことなんて何も考えるな!!! 俺を殺すことだけを考えろ!!!!!!)

バーサーカーらしい雄叫びを心の中で上げながら、ザハークも水の激流を纏いながら最高の死合いに身を投じる。

勿論……意外とバーサーカー状態になっていても……ザハークはここが、今自分がどういった場所で戦っているかは忘れていない。

だからこそアサルトベルが放つ斬撃刃などは比較的相殺し、あまり周囲を壊させない。
加えて、自身の攻撃はなるべく確実に当てる。
吼えながらもその点は徹底し、なるべく主人に迷惑が掛からないように戦い続けた。

「ギ、イ……ィ、ァ」

「ふぅ~~~~~……出来れば、もう少し強くなったお前と戦いたかったが、それは贅沢が過ぎるというものだな」

全てのブレードを叩き折り、最後にその首を切断した。

まだ残された胴体がピクピクと動いているが、完全に虫の息状態。
これからの逆転劇は……絶対にあり得ない。

「……さて、向こうは……もう終わっていたか」

「もう終わっていたか、じゃありませんよ。全く……派手に戦いましたね」

ザハークの言う通り、殺戮蟻と最後の激闘を演じている間に、ソウスケ達は親玉であるホワイトクイーンアントの討伐に成功。

ソウスケとミレアナは最後の最後までサポートに徹し続けた。

他のメンバーたちがホワイトクイーンアントの甲殻をぶち破るのには……それなりに時間が掛かったが、今回の討伐に参加したメンバーは全員一定以上の経験値を持っており、堅い相手にどう戦うなど解りきっている。

二人はただ危ない攻撃が彼らにぶつからないように魔法や矢を放ち続けた。
その結果……本来であれば倒し切るまでに五分以上は掛かるであろう白蟻の女王を三分弱で倒した。

それから約一分後に、鬼人族に見た目が近いオーガと殺戮蟻の激闘が終わった。

その激闘が終わるまでの間、女王を倒し終えたメンバーは瞬きをすることすら惜しみながら、その激闘に魅入っていた。
しおりを挟む
感想 252

あなたにおすすめの小説

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA
ファンタジー
~完結済み~ 「この世界のルールはとても残酷だ。10歳の洗礼の試練は避ける事が出来ないんだ」 この世界で大人になるには、10歳で必ず発生する洗礼の試練で生き残らなければならない。 その試練はこの世界の最下層、魔物の巣窟にたった一人で放り出される残酷な内容だった。 生存率は1%未満。大勢の子供たちは成す術も無く魔物に食い殺されて行く中、 生き延び、帰還する為の魔法を覚えなければならない。 だが……魔法には帰還する為の魔法の更に先が存在した。 それに気がついた主人公、ロフルはその先の魔法を習得すべく 帰還せず魔物の巣窟に残り、奮闘する。 いずれ同じこの地獄へと落ちてくる、妹弟を救うために。 ※あらすじは第一章の内容です。 ――― 本作品は小説家になろう様 カクヨム様でも連載しております。

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

処理中です...