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八百九十一話 無意識に背負う
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「それじゃ……やるか」
鍛冶場で作業の準備を整えたソウスケは……先日のヒートミノタウロス戦よりも気合と緊張感を持ちながら作業に取り掛かる。
それはソウスケだけではなく、ザハークも同じ心構えだった。
「そういえば、ミレアナさんも錬金術を嗜んでいるとお聞きしましたが」
「私など、まだまだ未熟者です」
少し情報を集めれば、ミレアナが錬金術で製作したポーションや杖を売っていた販売実績を知れる。
「その……何かを造るというのは、楽しいですか?」
「ッ、そうですね…………楽しい、とは思います」
アネットからすれば、学術都市に来てからの日々は本当に刺激的であり、これまで触れてこなかったことに触れられる……こんな日がずっと続けばいいとすら思っていた。
「ただ、本職の方々は心の底から楽しいと思っているかは、解りません」
「それは……生活が懸かっているから、でしょうか?」
「それもありますが……錬金術、鍛冶などは……芸術と似ているかもしれません」
「芸術、ですか」
宝物庫に武器やマジックアイテムが置かれていることは知っている為、ミレアナの回答に対して強い疑問を持つことはなかった。
「はい、そうです。金だけを求めている方であれば、そういった考えを持ち合わせていないかもしれませんが、少なくとも……私はそれに近い感覚があると思っています」
ミレアナはソウスケ、ザハークとパーティーを組んで活動している関係上……錬金術に使える素材のランクが高い。
早い段階でそういった素材に触れられることは確かに良いものだが、自分がまだまだ未熟だと自覚しているからこそ……もっと素材の性能を引き出せていればと思わずにはいられない。
「まぁ、私の場合はソウスケさんやザハークと同じく趣味でやっているからこそ、必要以上に葛藤することはありまあせんが」
「……私が鍛冶や錬金術ではなくとも、何かを始めることは……おかしいでしょうか」
これはミレアナだけではなく、アマンダ達からも返答を聞きたい問いだった。
王女とは……立場上、普通の人ではない。
その立場に居るからこそ出来ないことは多い。
実際は王族の権力を私的な理由で悪用するバカなら出来ないことなどないかもしれないが、色々と見えない縛りが多い。
「…………鍛冶や錬金術だけではなく、実戦……戦闘という行為であっても、本格的にのめり込めば……その道の業を背負うことになるかと」
「業、ですか」
まだ十歳ということもあり、聡明寄りであるアネットであっても直ぐには理解出来なかった。
しかし、アマンダ達を含む女性騎士たちは直ぐにミレアナが何を伝えたいのかを理解した。
「本当にその道にのめり込んでしまうと、逃げられない感情、思いと言いますか……アネット様に解り易い例は、次期国王候補と呼ばれている方が背負うものが解り易いでしょうか」
「次期、国王候補が…………常に、国をより良い方向へ導かなければならない、業……という事でしょうか?」
「その通りです。アマンダさんたちであれば、仲間や……仮にアネット様や他の王女様方が怪我を負ってしまった際、もっと訓練に力を入れていればと、常に真面目に取り組んでいてもそういった思いが湧き上がるでしょう」
同意するようにアマンダたちは何度も首を縦に振る。
「私も同じです。もし、ソウスケさんに……ザハークの身に何かあれば、何故あの時こうしなかった、何故こうなると予想出来なかったのかと……一生悩み続けるでしょう」
さすがにそれは大袈裟が過ぎる、といった思いは一ミリも湧かない。
「私としては、アネット様がこれから何かを始めることに対し反対などいたしません。ただ…………個人的には、あまり深くのめり込まないことをお勧めします」
センスが、才能がないからどうこうという話ではなく、個人的に……アネットにはその業を背負って欲しくないと思ってのアドバイスだった。
鍛冶場で作業の準備を整えたソウスケは……先日のヒートミノタウロス戦よりも気合と緊張感を持ちながら作業に取り掛かる。
それはソウスケだけではなく、ザハークも同じ心構えだった。
「そういえば、ミレアナさんも錬金術を嗜んでいるとお聞きしましたが」
「私など、まだまだ未熟者です」
少し情報を集めれば、ミレアナが錬金術で製作したポーションや杖を売っていた販売実績を知れる。
「その……何かを造るというのは、楽しいですか?」
「ッ、そうですね…………楽しい、とは思います」
アネットからすれば、学術都市に来てからの日々は本当に刺激的であり、これまで触れてこなかったことに触れられる……こんな日がずっと続けばいいとすら思っていた。
「ただ、本職の方々は心の底から楽しいと思っているかは、解りません」
「それは……生活が懸かっているから、でしょうか?」
「それもありますが……錬金術、鍛冶などは……芸術と似ているかもしれません」
「芸術、ですか」
宝物庫に武器やマジックアイテムが置かれていることは知っている為、ミレアナの回答に対して強い疑問を持つことはなかった。
「はい、そうです。金だけを求めている方であれば、そういった考えを持ち合わせていないかもしれませんが、少なくとも……私はそれに近い感覚があると思っています」
ミレアナはソウスケ、ザハークとパーティーを組んで活動している関係上……錬金術に使える素材のランクが高い。
早い段階でそういった素材に触れられることは確かに良いものだが、自分がまだまだ未熟だと自覚しているからこそ……もっと素材の性能を引き出せていればと思わずにはいられない。
「まぁ、私の場合はソウスケさんやザハークと同じく趣味でやっているからこそ、必要以上に葛藤することはありまあせんが」
「……私が鍛冶や錬金術ではなくとも、何かを始めることは……おかしいでしょうか」
これはミレアナだけではなく、アマンダ達からも返答を聞きたい問いだった。
王女とは……立場上、普通の人ではない。
その立場に居るからこそ出来ないことは多い。
実際は王族の権力を私的な理由で悪用するバカなら出来ないことなどないかもしれないが、色々と見えない縛りが多い。
「…………鍛冶や錬金術だけではなく、実戦……戦闘という行為であっても、本格的にのめり込めば……その道の業を背負うことになるかと」
「業、ですか」
まだ十歳ということもあり、聡明寄りであるアネットであっても直ぐには理解出来なかった。
しかし、アマンダ達を含む女性騎士たちは直ぐにミレアナが何を伝えたいのかを理解した。
「本当にその道にのめり込んでしまうと、逃げられない感情、思いと言いますか……アネット様に解り易い例は、次期国王候補と呼ばれている方が背負うものが解り易いでしょうか」
「次期、国王候補が…………常に、国をより良い方向へ導かなければならない、業……という事でしょうか?」
「その通りです。アマンダさんたちであれば、仲間や……仮にアネット様や他の王女様方が怪我を負ってしまった際、もっと訓練に力を入れていればと、常に真面目に取り組んでいてもそういった思いが湧き上がるでしょう」
同意するようにアマンダたちは何度も首を縦に振る。
「私も同じです。もし、ソウスケさんに……ザハークの身に何かあれば、何故あの時こうしなかった、何故こうなると予想出来なかったのかと……一生悩み続けるでしょう」
さすがにそれは大袈裟が過ぎる、といった思いは一ミリも湧かない。
「私としては、アネット様がこれから何かを始めることに対し反対などいたしません。ただ…………個人的には、あまり深くのめり込まないことをお勧めします」
センスが、才能がないからどうこうという話ではなく、個人的に……アネットにはその業を背負って欲しくないと思ってのアドバイスだった。
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