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八百八十一話 知ってるからこその心配

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「ここのボスはガーゴイルが三体とグレートウルフが二体です」

女性騎士たちは誰一人欠けておらず、勿論アネットも無事。

第三騎士団は万全な状態で三十層のボス部屋前に到着していた。

「よう、ソウスケじゃないか。ミレアナさんとザハークも久しぶりだな」

「ダイアスさんじゃないですか」

前回、前々回と同じく自分たちに視線を向けてくる者は多いが、実際に声を掛けてくる者はいない……そう思っていたが、ついに声を掛けてくる人物が現れた。

ただその人物はソウスケたちの知人である学園の教師、ダイアスだった。

「どうも、久しぶりですね……って言うほど日数は経ってないかもしれませんね」

「はっはっは! 確かにそうかもしれねぇな。けど、その間に起こったことを考えれば……こうして無事に再会できて心の底から良かったと思ってるぜ」

ソウスケたちが戦争に参加しているのは知っていた。
加えて、三人の実力はそれなりに解っているからこそ、ダイアスは三人が超最前線へ向かうと確信していたからこそ心配していた。

「無事に生き延びることが出来ましたよ。ところで、俺が造った魔剣……ストラングルの調子はどうですか?

「最高過ぎるぜ! ここら辺の階層に出現する奴らはすばしっこかったり、それなりに堅い連中が多いが、ソウスケが造ってくれたストラングルがあればスパッとぶった斬れるぜ」

「それは良かったです」

ソウスケ作である風の魔剣、ストラングル。
ランク五の逸品であり、腕力強化と風結界、再生の効果が付与されており、使用者が雷魔法のスキルを覚えていなくとも専用技である風雷切牙によって風雷の強斬撃刃を放つことが出来る。

「ソウスケさん。そちらの方の武器を……ソウスケさんが造ったのですか?」

「えっと……あれか、王都とか学術都市以外で活動してる騎士さんたちですよね。だったら知らないのも無理ないか。ソウスケとザハークは鍛冶師としても一流なんですよ」

「…………」

アマンダは自信満々な表情で語るダイアスの言葉を理解するまでに少々時間がかかってしまった。

「……ソウスケさん、それは本当なのですか?」

「はい、一応鍛冶師としても腕が鈍らない程度に活動してます」

「俺たちにとっては、趣味の一つだな」

平然とした表情で言ってのけるが、常識的に考えれば……色々とあり得ない部分が多い。

「見てみますか?」

「そう、ですね……よろしければ、見せて頂いても良いですか」

「どうぞ」

ソウスケと一緒にいる騎士であれば問題無いだろうと思い、ダイアスは鞘からストラングルを抜いてアマンダに渡した。

「………………これを、本当にソウスケさんが……語彙力が低下してしまいますが、まず凄いという言葉が出てきました」

「ありがとうございます」

「ただ、これが趣味の域……なのですか?」

これまで幾つもの武器を視てきた。
がらくたから一般的な武器、目の前のストラングルの様な逸品まで多くの武器を視てきたからこそ、目の前のロングソードをソウスケという十代半ばの青年が造ったということに驚きを隠せなかった。

「っと、そろそろ俺らの番が回ってきそうだな。ソウスケ、上に戻ったら飯でも食べようぜ」

「良いですね。俺は地上に戻ってから二日は休息日なんで、その時に声を掛けてください」

「分かったぜ!!」

意気揚々と同僚の教師たちの元へ戻っていくダイアス。

「ソウスケさん、もし……今、ご自身が造った武器を持っていたりしますか?」

「俺の自作ですか? 先日造ったやつで良ければありますよ」

特に何かをイメージし、誰かの為に造った武器ではない。

しかし……それでも、ソウスケは一人の製作者として使用する素材の性能を全て引き出そうと、全身全霊を込めて造った。

(っ……間違いなく、一流と呼べる質を持つ短剣。ランクは三か四でしょうが、その中でもおそらく最高品質の逸品……)

そこまで短剣を使うアマンダではないが、それでも衝動的にその場でソウスケ作の短剣を買いたくなってしまった。
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