上 下
899 / 1,129

八百六十九話 相応しい持ち主に

しおりを挟む
「ッ…………」

「いやぁ~~~、これはちょっと……俺も驚きかな」

門下生たちと第三騎士団の女性騎士たちは勝った負けたを繰り返していたが……途中からターリアが模擬戦に参戦。
そこから怒涛の勢いで女性騎士たちに勝利を収め、全戦全勝。

(門下生の中で頭二つ三つ跳び抜けてるとは思ってたけど……えっ、ちょっと待って。本当に現実、なのか?)

女性騎士たちもその現実がまだ上手く飲み込めておらず、複雑な表情を浮かべていた。

これが実戦であれば……そう思う者は二流も三流。
練習で勝てないのに、何故本番で勝てると思うのか?
それが解かっているからこそ、女性騎士たちも自分たちの身に起きた結果に対し、とやかく言葉を荒げなかった。

「でもね、彼女はソウスケ君たちと別れてから、それまでも鍛錬には非情に集中してたんだけど、更にこう……鬼気迫る思い? が増したんだよね」

「それは何故でしょうか」

「彼女の当面の目標はね、ソウスケ君が造ってくれたフレイザーと火竜・焔に見合う剣士になることらしい」

「フレイザーと火竜・焔の持ち手として…………ん? あの、俺としては既に渡した時点で見合っていると思っていたんですけど」

「はっはっは! それは彼女にとって嬉しい言葉かもしれないけど、ターリアは納得していなかった。最も……あの時と比べて明確に強くなった今でも、まだ相応しい剣士に慣れたとは思ってないみたいだけどね」

「えぇ~~~~~~」

良く解らないというのが率直な感想。

ソウスケから視て、ターリアは別れた時と比べて明らかに戦闘力が上がっている。
離れた場所から観戦しているザハークが思わず笑みを浮かべてしまうぐらいには強くなっている。

(楽勝って訳ではなかったみたいだけど、それでも第三騎士団の女性騎士たちに全勝してるのは事実であり……あっ、また勝った)

アマンダ以外の団員、全員がターリアに挑んだが……結果は全敗。
苦戦した模擬戦もあったが、結局アマンダ以外の女性騎士全員に勝ってしまったという事実は変わらない。

(……本当に、強いですね)

アネットの隣で観戦していたアマンダはターリアの強さに感心させられていた。

(流石学術都市で育った方と言いましょうか……ダンジョンに生息するモンスターの相手だけではなく、対人戦も非常に優れている)

主に一声かけ、ターリアの元へ歩を進める。

「ターリアさん、でしたね。お見事でした」

「ありがとうございます」

「……第三騎士団を預かる身として、一応声を掛けなければなりません。もし良ければ、第三騎士団に来ませんか?」

「「「「「「「っ!!??」」」」」」」

頭の片隅で可能性は浮かんでいた。

それでも実際に目の前で行われると……まさか!? といった表情になるのも無理はない。

(そりゃあ、模擬戦とはいえ自身の部下たちの多くを倒したんだ。普通に考えて同性なんだし、勧誘しない方がおかしいよな)

とはいえ、実際に目の前で勧誘が行われるのを見て、ソウスケも驚いていた。

「ありがたい申し出ですが、私は貴族出身でなければ騎士でもありません。その……手続きの上で、色々と不備が出ると思います」

「安心してください。第三騎士団の女性騎士にも平民出身の方はいますから。もし妨害してくるような輩がいれば、団長パワーで黙らせます」

色んな意味で黙らせられる力がある為、薄ら寒さを感じたソウスケたち。

「…………申し訳ありません。私は、今……手に入れた新しい武器の持ち主に相応しい剣士になることで頭が一杯です。今後どうなるかは解りませんが、今はその事しか考えられないので、折角の申し出ですが、お受けできません」

「そうですか……それでは、最後に私と一つ模擬戦をしていただけませんか」

「あ、はい。それでしたら」

何故最後に模擬戦を申し出たのか、なんとなく理由は解る。
だが、まだ熱が冷めていないことを考えると、ターリアとしても丁度良い申し出だった。
しおりを挟む
感想 251

あなたにおすすめの小説

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二 その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。 侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。 裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。 そこで先天性スキル、糸を手に入れた。 だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。 「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」 少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界転移でのちに大陸最強の1人となった魔剣士 ~歌姫の剣と呼ばれし男~

ひぃ~ろ
ファンタジー
とある過疎化の進んだ地区で地方公務員として働いていた 橘 星那 《たちばな せな》高卒30歳独身、彼女無しが近くに住んでいた祖父の家に呼ばれ 蔵の整理をしたところ大きく古びた櫃のようなものを開けるとその中に吸い込まれてしまい きづいた時には見慣れぬ景色の世界、異世界へと飛ばされていた そこで数々の人々と出会い 運命の人に出会い のちにナンバーズと呼ばれる 大陸最強の13人の一人として名をはせる男のお話・・・・です ※ おかげさまで気づけばお気に入り6、000を超えておりました。読んでいただいてる方々には心から感謝申し上げます。  作者思いつきでダラダラ書いておりますので、設定の甘さもありますし、更新日時も不定、誤字脱字並びにつじつまの合わないことなど多々ある作品です。  ですので、そのような駄作は気に入らない、または目について気になってしょうがないという方は、読まなかったことにしていただき、このような駄作とそれを書いている作者のことはお忘れください。  また、それでも気にせず楽しんで読んでいただける方がおられれば幸いとおもっております。  今後も自分が楽しく更新していけて少しでも読んで下さった方が楽しんでいただければと思います。

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

処理中です...