転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
上 下
889 / 1,156

八百五十九話 意外と効率が良い

しおりを挟む
「ソウスケさん、ミレアナさん、ザハークさん。今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

第三騎士団は、主に王族の女性を守る女性騎士団。

ソウスケに挨拶をした女性は、既に四十を越えているものの……多くの部分が二十代後半にしか見えない瑞々しさを有している。

「えっと、それでは……まず訓練を始める前に、自分の実力に疑問を持っている方がいれば、一歩前に出てきてもらえないですか」

騎士団長は当然ながら前に出ないが、何名かの女子騎士……特に男嫌いが激しい女性騎士が反射的に前に出た。

(良かった……って、別に良くはないんだよ。確かにあぁ言って、誰一人としていなかったらそれはそれで変な気持ちになるけども)

合計、六人の女性騎士が一歩前に出て、それぞれがソウスケと……ザハークに鋭い視線を送っていた。

「それでは、今から俺と六人の方々で戦いましょう」

「「「「「「ッ!!??」」」」」」

今までソウスケは、自身のことを気に入らない騎士に対し、一対一で沈めてきた。
しかし、相手を納得させた上で沈めるのは……少々時間がかかる。

なので数的有利であるにもかかわらず負けたという、どう頑張っても反論が出来ない状態で彼女たちの反抗心を折ろうと決めていた。

「ふむ……時間削減を考えると、そちらの方がよろしそうですね」

「理解いただいてなによりです」

女性騎士団長、アマンダ・ファニエスは一対六の模擬戦を申し出たソウスケに対して、特に心配するような素振りを見せず、提案を了承。

その対応が更に六人の怒りを買う。

「それでは、審判をお願いしても良いですか」

「えぇ、勿論です」

こうして予定通り、女性騎士たちとの模擬戦がスタート。

「ハッ!!!!」

「ヤッ!!!!」

一対六という絶対的に数有利な状況であっても、彼女たちは六人でソウスケを囲むようなことはせず、冷静にそれぞれの役割を把握して冷静に攻め込む。

(ふ~~ん……これまでの話が広まってるからか、それなりに馬鹿みたいに力づくで倒そうとはしてこないな。しっかりと連携して攻撃を仕掛けてくる)

即席の連携ではなく、日頃の成果が十全に現れている。

その練度に心の中で賞賛を送りながら、冷静に迫る攻撃を二本のロングソードで弾く。

(そろそろ三分か四分ぐらい経ったかな)

この模擬戦はソウスケにとって、騎士たちのガス抜き戦。
数分ぐらいは適当に攻めて守ってを繰り返す。

面倒なやり方かもしれないが、最後に圧倒的な速度で騎士たちを倒す流れであるため、反抗心を折るという目的を考えれば、非常に有効的な手段と言える。

「ッ!!!???」

「あがっ!?」

「なっ!? ッ!!!!」

「いっ!!??」

「クソッ!!!! っ、ぁ……」

「あ、ぁ……」

ソウスケがその気になった瞬間、彼女たちの腹に次々と拳と蹴りがめり込まれ、武器をロングソードの斬撃によって弾き飛ばされてしまった。

「そこまで。さぁ、あなた達。これで英雄と呼ばれる方が、どれほど強いのか……身に染みて解ったでしょう」

「「「「「「はい」」」」」」

ソウスケという特別指導者に対して、嫌悪感が全て消えたわけではない。

それでも、実際に戦って完敗しても少年が自分たちより強いという事実を認められない程、彼女たちは落ちぶれていなかった。

「では、訓練を始めましょう」

特別指導という名目で一日限り指導者となったソウスケだが、やる事と言えば何回も何回も第三騎士団の女性騎士たちと模擬戦を行い、その度に何かしら気付いた弱点や変な癖、改善案などを伝える。

(最初は結構鋭い目を向けてたけど、こっちが伝えたアドバイスは随分素直に聞いてくれるな。それだけ王族の女性たちに対する忠誠心が強いのか……それとも、同じ女性を守ろうとする意識が飛び抜けてるのか)

答えは片方のどちらかではなく、両方。
彼女たちは主に立場、力が弱い同性たちを守るために、たとえまだ嫌悪感を持っている相手からのアドバイスであっても、素直に聞き入れて更なる高みを目指す。
しおりを挟む
感想 252

あなたにおすすめの小説

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。

暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二 その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。 侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。 裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。 そこで先天性スキル、糸を手に入れた。 だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。 「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」 少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売中です!】 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...