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八百四十二話 それはそれで恐ろしい

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今回の戦争で誰が一番活躍したのか。
その議論で名前が挙がった中で……一番に輝いたのは、最年少の参加者であるソウスケ。

候補の中にはルティナ・ヴィリストを殺さずに捕虜として生かしたザハークの名前も挙がった、全体的な功績を考えた結果……戦争に参加した騎士も含めて、一番活躍した人物はソウスケと決定。

平民出身? であるにことを考えれば、政治事情が根深い貴族界隈……そこそこの活躍をした騎士がその褒美を貰ってもおかしくない。
というより……そもそもソウスケは他の参加者よりも多く硬貨が入った袋を貰っただけで、満足している。

しかし、パーティーメンバーであるミレアナや従魔であるザハークの活躍も含めれば、その活躍は群を抜いていると言っても過言ではない。

その功績を称え……国王は宝物庫に眠っていた一つの武器を褒美として、ソウスケに送った。

宰相がソウスケに手渡した木箱の中に収められていた武器は……一本の名槍。

「開けて構わんぞ」

渡してきた本人の言葉を信じ、ソウスケはゆっくりと蓋を取り、中に入っていた武器の存在感に驚きを隠せなかった。

(…………いやいやいや、俺に渡して良いのか?)

送られた武器は、ソウスケが名槍レヴァルグをメインに使用して暴れていたことから、特別に送る武器は槍が良いだろうと判断された。
そして送られた名槍の名は……ブロウス。ランク八の超名槍。

ランクこそレヴァルグに一つ劣るものの、その性能や攻撃力は勝るとも劣らない超が一つでは足りない名槍である。

「この様な特別な武器を頂き、誠に感謝します」

「うむ、これからもお主の活躍に期待している。して……お主に、国王陛下から一つ質問がある」

宰相が口にした言葉により、ソウスケは面と向かって国王陛下を直視することを許可された。

「お主は……黒衣の死神と親しいようだな」

「は、はい」

親しいというより、本人である。

この一件に関しては、ソウスケと関りがあった騎士たちが……全て今回の戦争でトップ・オブ・トップであるソウスケに丸投げした。
そこまで糸を汲み取った訳ではないが、本能的に適当に流してはいけないと思い、一先ず親しくはあると肯定。

「黒衣の死神は……ジェリファー・アディスタに関して、何か申していたか?」

当然のことながら、黒衣の死神……もといソウスケ分身が打ち立てた功績もザハークやソウスケ本体に負けていない。

ソロで活動しながらルクローラ王国側の戦闘者たちを大量に倒し、レジル・アルバディアを含む猛者たちのみで編成された部隊を単独で撃破。
加えて正真正銘、最後の戦いでジェリファー・アディスタというそこら辺の男性騎士が束になっても勝てない高位騎士との死合いで倒し、尚且つその命を奪わずに捕獲。

普段から国の財産状況をなどを気にしなければならない宰相にとっては、頭を悩ませなければならない褒美を与えなければならい功績者。
しかし、その功績者は王都に到着する前に、忽然と姿を消した。

「いえ、特に彼は自身の功績に関して褒美を要求するような発言はしていませんでした。今回の戦争での功績、ジェリファー・アディスタの件に関しては、好きなように使ってくれて構わないとも口にしていました」

「…………そうか」

国としては、外交の手札になる重要人物が手に入った。
その手札を捕獲した人物が何も欲しがらないとくれば、嬉し過ぎて舞い踊ってしまう。

だが……国を豊かにし、正しい方向へ持っていくことが使命である国王からすれば、今回の様な無償で強大な手札を送れたことは……ある意味恐ろしく感じる。
それはエイリスト王国の国王だけではなく、宰相も同じ気持ちだった。

「ただ、探す様な真似はしないでほしいと口にしていました」

「ふむ……訳ありであれば、それを要望するのは当然か……あい分かった」

正直なところ、まだ不安はぬぐい切れない。
それでも今はとりあえず、外交において強力なカードを手に入れたことを喜ぶべき。

ソウスケと国王陛下のやり取りはそこで終わり、冒険者たちは一斉に退室した。
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