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八百三十二話 あんたも覚えはあるだろ

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「ふんっ!!!!」

「ッ!!!???」

腹部を刺された痛みを根性で耐え、水龍の蒼剣を振るい……ジェリファーの片腕を切断。

そして痛みを堪え、一瞬で背後に回る。
背後から両腕を伸ばし、スリーパーを仕掛けた。

ギリギリのタイミングで反応しかけたが、ジェリファーの腕が隙間に入ることはなく、ガッチリとホールド。
ジェリファーもなんとか解こうと得意の雷で攻撃するが、ソウスケ分身も同様に雷で対抗。

「ッッッッッッッ……ぁ」

「たはーーーッ!!! はぁ、はぁ、はぁ……ふぅ」

根性をフル稼働させ、なんとか落とすまで刺された痛みに耐え続け、締め落とすことに成功。

勝負が終わったタイミングで刺さったままだった双剣を引き抜き、再生のスキルを使用。
腹部が刺されただけで抉れたわけではないため、速攻で完治。

ついでに水龍の蒼剣で切断した右腕を拾い、ジェリファーの腕を回復魔法で元に戻した。

「ッ!! はぁ、はぁ、はぁ……」

「早い目覚めだな」

「……私は、負けたのだな」

「そうだな。ギリギリの勝負ではあったが、勝ったのは俺だ」

結果、ルクローラ王国側が三連勝。

全勝を決めたことにより……賭けていた内容が実行に移される。

「ふ、ふざけるな!!!!!!」

結果に納得がいかないバカが走って逃げようとするが、それを予め予想していた者たちによって捕らえられる。

「はっはっは!!!! 本当に勝っちまいやがったぜ!!!!」

「ある程度強いとは思ってたけど、最高の結果を出してくれたわね」

多くの者たちを捕虜にするだけではなく、彼らが身に付けていた金になりそうな物は、全てソウスケたちのもの。

相変わらず抵抗しようとする馬鹿は何人かいたが、冒険者たちが死なない程度に拳骨を下し、無理矢理鎮火。

ソウスケ以外の冒険者たちも殺してはならないと解ってはいるが、その分四人以上に遠慮がない。

「ほぅ、良い縄だな。これなら、こいつらがどう頑張っても逃げられないだろう」

ソウスケお手製の縄に縛られることで、ある程度の不可がかかり、多くの者が縛られた状態での戦闘が不可能になった。

武器がなくとも強い者は強いが、それでも武器や防具を取られ、手を縛られて負荷をかけられた状態では、バカな真似を起こそうという気は起きない。

「しっかし、良くあんな方法を取ったな、お前。痛かっただろ」

「……あぁ、そうだな。雷を纏っていたこともあり、ダメージは決して低くなかった。だが……あの女性騎士は、痛みを堪えてでも勝利に手を伸ばさなければ勝てない相手だった」

「いや、だからってそれを実行出来るのがすげぇって話なんだよ。あの姉ちゃんがすげぇ強いのは俺も同感だけどよ」

「なら、あんたは今まで痛みなんかクソ食らえと思いながら、強敵を倒そうとしたことはないのか」

「……だっはっはっは!!! そうだな。そうだったな……そんなこと、今までしょっちゅうあったよ」

ソウスケ分身の言葉に、懐かしい過去を思い出し、熟練の高ランク冒険者は心の底から声を上げて笑った。

周りで二人の会話を聞いていた冒険者だけではなく騎士たちも似た様な過去があり、大なり小なり笑い声を上げる。

「にしても、お前さんは……あれだ、エイリスト王国からスカウトされたりしなかったのか?」

既にどこの組織に所属してないという事情は広まっており、黒衣の死神が何故ルクローラ王国に付いたのかと疑問を持つ者もいた。

「……この国に、守りたいと思う者たちがいた。それだけだ」

分身とはいえ、ルクローラ王国で活動してきたソウスケであることに変わりはなく、それらしい言葉に嘘はなかった。

「そうかそうか。はっはっは! 良い理由だ。守りたい奴がいるから戦う……若いくせにかっけぇじゃねぇか」

「……どうも」

突然褒められ、小さく言葉を返すだけで、どう反応すれば良いのか困る。

何はともあれ、今回の戦争……詳細を見ずとも、ルクローラ王国の快勝という結果で終わった。
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