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八百二十二話 まだ終わっていないが

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「喰い抉れッ!!!!!」

後衛の猛者たちを潰して均衡を崩したことで、一気に勝負に出る。

蛇腹剣と水龍の蒼剣による二刀流。
そして魔法の使用、その三つだけに絞り、レジル・アルバティアを殺しに掛かる。

レジル・アルバティアが持つレイピアも最高品質の傑作と言える業物だが、喰らいに喰らってきた蛇腹剣の刃には敵わず……その綺麗な顔ごと食われた。

まだ生き残っている彼と親しい者は、当然の如く激情に駆られる。
その怒りを利用してソウスケ分身を抹殺しようとするが、気付いたときには全てを斬り裂く斬撃刃と攻撃魔法が迫りくる。

レジル・アルバティア、そしてもう一人の前衛を殺すことに成功。
そこでもう、完全に均衡は崩れ去った。
ソウスケ分身にとって最も厄介だった存在は、卓越した剣技と読みによる回避で中々攻撃を当てられなかったレジル・アルバティア。

部隊の大将を倒せた時点で、王手も同然の状況。
他の者たちも超猛者であることに変わりはないが、突如召喚された水龍とレイピアどころかその命ごと喰い抉られたレジル……その二つに気を取られてしまえば、もう潰すことは容易い。

再び比較的、乱戦時に使いやすい蜘蛛の糸や毒液を使い始める。

多くの後衛、前衛二人が殺られたことで、彼らの精神は崩壊……することはなかった。
一瞬にして後衛が殺られ、自分たちの頼れるリーダーまでもが殺られた。
故に……今、絶対にここで仕留めなければならない。

誰一人として命乞いなどすることなく、最後は捨て身の覚悟で挑んだ。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……はぁ~~~~~」

激動の数分を過ごし、なんとか生き延び……思わず地面に腰を下ろす。

(正直、水龍の蒼剣から水龍? が出てこなかったら、本当にヤバかった)

逃げに徹すれば退避出来た可能性は十分にあった。
しかし、逃げてしまえば……その日は他のエイリスト王国の戦闘者たちが殺される。
もしかしたら、先日助けたレガースやその部隊のメンバーが殺されたかもしれない。

「あそこだっ!! あそこに黒衣の死神がいるぞ!!!!!」

「ッ!!!???」

警戒を解いてはいなかった。
解いてはいなかったが、少し休息を取りたいという思いがあった。

慌てて魔力回復ポーションを飲み干し、再び二つの切り札を抜く。

「黒衣の彼を助けるんだ!!!!!」

ソウスケ分身とレジル・アルバティアが率いる部隊との戦闘に気付いた者たちは、なにもルクローラ王国側の部隊だけではない。

あれだけ地形をボコボコにするよな戦闘を行っていれば、当然エイリスト王国側の部隊も気付く。

(レガースさん……超助かるぜ)

名刀、残焔を抜刀し、幅があるとはいえ敵国の部隊に突貫。
彼と同じ部隊の戦闘者や、戦闘の一部始終を見ていた戦闘者たちも参戦。

中には今回の戦争中、ソウスケ分身のお陰で助かった者たちもおり、助けられた恩を返すためにと闘志を迸らせる戦闘者もいた。

(まだまだ、喰い抉らねぇとな)

当然、守られて終わりではいられない。
一仕事を終えた後だとしても、目の前に倒すべき敵がいるのであれば、味方にうっかり攻撃を当ててしまわない範囲で暴れ回る。

結果……ソウスケ分身やレガースが対応する戦域では、今日の内に多くのルクローラ王国側の部隊が殲滅。
二回戦目が終了した後もソウスケ分身が回復に奔走したことで、結果的にエイリスト王国はほぼノーダメージ。

まだ、まだ戦争は決着していない。
それは解っていつつも、レガースたちは今回の勝利を盛大に祝った。

ソウスケ分身は街中に入れないと告げると、わざわざ料理人が作った料理を外に持ち運び、街の外で宴会を開いた。
まだ喜び過ぎるには早いかもしれない……しかし、別の場所ではルクローラ王国側の飛び抜けた猛者が捕虜として捕らえられた。

こうして一部の戦況だけではなく、全体的な戦況がエイリスト王国側に傾き始めた。
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