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八百四話 敢えて走る
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(周囲への警戒が二、目の前の敵を潰すことに八。それぐらいの割合で動いた方が良さそうですね)
今まで対峙してきた部隊と比べて、確実に実力が一段上。
下手すれば、同じ部隊の者たちが死んでしまう可能性は、十分にあり得る。
ソウスケ本体ほどではないが、ミレアナも一緒に戦場を駆ける仲間たちが死ぬのは忍びない。
出来ることなら、戦争が終わるまで誰一人死なないでほしいという思いはある。
だからこそ……その思いが嘘偽りではない事を、戦場で証明する。
ダンジョンの宝箱から手に入れた風弓を使用。
当然ながら、そこら辺のマジックアイテムとは性能が段違い。
そして……普段のミレアナであれば、魔力を矢に変換して敵を討つところだが、今回は物理的な矢を使用。
鏃にはオルトロス亜種や、バーンティガーにガルムの牙や爪が使用された、一本だけでも買い取るには金貨が必要になる矢を使い、敵の冒険者や騎士たちを仕留めていく。
(本当に、ソウスケさんは仲間思い、ですね!)
自分たちの実力の高さ故に、他の者たちと比べて随分余裕があるのは重々分かっている。
それでも、矢の鏃にBランクやAランクモンスターの素材を使用する者など、まずいない。
(無事であれば、後で回収しないといけませんね)
最高級の矢で敵の体を貫き、同時に攻撃魔法を発動し、体勢を崩していく。
ただ、敵も戦時中に遭遇してきた相手の中ではトップクラス。
勢い止まらず降りかかる鋭い矢、攻撃魔法などを潜り抜け、ミレアナの懐に潜り込む猛者もいる。
「うぉぉおおおあああああああああっ!!!」
絶対に倒す。
同じ冒険者を殺めるという罪悪感を振り切る。
様々な感情が入り交ざった雄叫びを上げ、麻痺毒付きの短剣を振るう。
「シッ!!!!」
「なっ!? がっ……ぁ」
パッと見では後衛メインの冒険者に見えなくもないが、接近戦が不得意ではない。
ソウスケ本体から譲り受けた飛竜の双剣を取り出し、麻痺毒付き短剣を弾き、風の斬撃を喉に叩きこむ。
決死の覚悟で挑んだ一撃を跳ね返されれば、次の対応に素早く反応出来ないのも無理はない。
着々と戦況はソウスケ本体たちの方に傾き始めていた。
勿論部隊の冒険者や騎士たちも無傷とはいかない。
それでもまだ二日目とはいえ、ソウスケ本体たち三人との連携度の高まりもあって、このタイミングならソウスケ本体の援護が来る……と、言葉で表しにくい直感が働く。
その結果、この戦いの最中では、まだ体の欠損などの怪我は負っていない。
(黒髪の子供に、鬼人族に近い容姿を持つオーガに、ハイ・エルフ? の女が厄介過ぎる!!!)
敵部隊のリーダーの頭には、既に撤退の二文字がチラついていた。
事前にソウスケ本体たちに関する報告を受けてはいたが、圧倒的に警戒度が足りない。
戦争に勝つためには、目の前の部隊を……特に三人を絶対に倒す必要がある。
それを本隊に伝えたいが、絶対に見逃してくれない圧を感じるため、実行に移せない。
「行け!!!!」
「ッ!!!」
一人の騎士から伝えられた言葉で、全てを察したリーダーは……コンマ数秒も迷うことなく、大将や参謀たちがいる場所へと駆け出した。
「おっ、らっあああ!!!!!」
自分たちの情報を、より正確に本隊へ伝えられてしまうかもしれない。
そんな可能性を想定出来ないわけがなく、残っている数と質的に余裕があったソウスケ本体は、全力でレヴァルグをぶん投げた。
「頼みました!」
「おうよ!」
念の為、ミレアナはザハークにその他諸々を任せ、本隊へ逃げようとしたリーダーを追いかけた。
身に付けているマジックアイテムの種類によっては、レヴァルグの投擲を防げるという事実はインプット済。
「これは……くっ、本当にギリギリで逃がしてしまいましたか」
レヴァルグが着弾した地点には、死体らしい何かが全くない。
投擲攻撃によって全て吹き飛んだ可能性もあるが、全く見当たらないということはあり得ない。
「もしかして、転移石でも使ったか?」
「えぇ、おそらく転移石を使って逃げたかと」
「くそ……いや、嘆いても仕方ないか」
一人だけ逃がしはしてしまったが、今回の激突でも無事勝利を収めたことに変わりはない。
今まで対峙してきた部隊と比べて、確実に実力が一段上。
下手すれば、同じ部隊の者たちが死んでしまう可能性は、十分にあり得る。
ソウスケ本体ほどではないが、ミレアナも一緒に戦場を駆ける仲間たちが死ぬのは忍びない。
出来ることなら、戦争が終わるまで誰一人死なないでほしいという思いはある。
だからこそ……その思いが嘘偽りではない事を、戦場で証明する。
ダンジョンの宝箱から手に入れた風弓を使用。
当然ながら、そこら辺のマジックアイテムとは性能が段違い。
そして……普段のミレアナであれば、魔力を矢に変換して敵を討つところだが、今回は物理的な矢を使用。
鏃にはオルトロス亜種や、バーンティガーにガルムの牙や爪が使用された、一本だけでも買い取るには金貨が必要になる矢を使い、敵の冒険者や騎士たちを仕留めていく。
(本当に、ソウスケさんは仲間思い、ですね!)
自分たちの実力の高さ故に、他の者たちと比べて随分余裕があるのは重々分かっている。
それでも、矢の鏃にBランクやAランクモンスターの素材を使用する者など、まずいない。
(無事であれば、後で回収しないといけませんね)
最高級の矢で敵の体を貫き、同時に攻撃魔法を発動し、体勢を崩していく。
ただ、敵も戦時中に遭遇してきた相手の中ではトップクラス。
勢い止まらず降りかかる鋭い矢、攻撃魔法などを潜り抜け、ミレアナの懐に潜り込む猛者もいる。
「うぉぉおおおあああああああああっ!!!」
絶対に倒す。
同じ冒険者を殺めるという罪悪感を振り切る。
様々な感情が入り交ざった雄叫びを上げ、麻痺毒付きの短剣を振るう。
「シッ!!!!」
「なっ!? がっ……ぁ」
パッと見では後衛メインの冒険者に見えなくもないが、接近戦が不得意ではない。
ソウスケ本体から譲り受けた飛竜の双剣を取り出し、麻痺毒付き短剣を弾き、風の斬撃を喉に叩きこむ。
決死の覚悟で挑んだ一撃を跳ね返されれば、次の対応に素早く反応出来ないのも無理はない。
着々と戦況はソウスケ本体たちの方に傾き始めていた。
勿論部隊の冒険者や騎士たちも無傷とはいかない。
それでもまだ二日目とはいえ、ソウスケ本体たち三人との連携度の高まりもあって、このタイミングならソウスケ本体の援護が来る……と、言葉で表しにくい直感が働く。
その結果、この戦いの最中では、まだ体の欠損などの怪我は負っていない。
(黒髪の子供に、鬼人族に近い容姿を持つオーガに、ハイ・エルフ? の女が厄介過ぎる!!!)
敵部隊のリーダーの頭には、既に撤退の二文字がチラついていた。
事前にソウスケ本体たちに関する報告を受けてはいたが、圧倒的に警戒度が足りない。
戦争に勝つためには、目の前の部隊を……特に三人を絶対に倒す必要がある。
それを本隊に伝えたいが、絶対に見逃してくれない圧を感じるため、実行に移せない。
「行け!!!!」
「ッ!!!」
一人の騎士から伝えられた言葉で、全てを察したリーダーは……コンマ数秒も迷うことなく、大将や参謀たちがいる場所へと駆け出した。
「おっ、らっあああ!!!!!」
自分たちの情報を、より正確に本隊へ伝えられてしまうかもしれない。
そんな可能性を想定出来ないわけがなく、残っている数と質的に余裕があったソウスケ本体は、全力でレヴァルグをぶん投げた。
「頼みました!」
「おうよ!」
念の為、ミレアナはザハークにその他諸々を任せ、本隊へ逃げようとしたリーダーを追いかけた。
身に付けているマジックアイテムの種類によっては、レヴァルグの投擲を防げるという事実はインプット済。
「これは……くっ、本当にギリギリで逃がしてしまいましたか」
レヴァルグが着弾した地点には、死体らしい何かが全くない。
投擲攻撃によって全て吹き飛んだ可能性もあるが、全く見当たらないということはあり得ない。
「もしかして、転移石でも使ったか?」
「えぇ、おそらく転移石を使って逃げたかと」
「くそ……いや、嘆いても仕方ないか」
一人だけ逃がしはしてしまったが、今回の激突でも無事勝利を収めたことに変わりはない。
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