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七百九十八話 二つのミス
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一人で動いている仮面を付けた強者がいた。
圧倒的な身体能力と魔剣の二刀流。
攻撃魔法の腕や、同時発動出来る技術力に、人か? と疑いたくなるような攻撃方法で一つの部隊を、一人で全滅させた。
(なんだ、あの仮面の冒険者……冒険者か? おそらく、冒険者だろう)
その姿から、兵士や騎士には見えない。
しかし、冒険者……には少し見えない。
そもそも冒険者の中で、仮面を付けて行動する者などいない。
だからこそ、余計に一人で一つの部隊を全滅させる勢いで戦う者が、いったい誰なのか……男たちは、どれ一人として思い付かなかった。
ただ……あの者は、ここで絶対に殺すべき。
全員が同じ気持ちであり、異論はない。
男たちがそう思ってしまうのも、無理はないほど仮面の者……分身ソウスケは暴れに暴れ、最終的に誰の手も借りず、一つの部隊を全滅させた。
そして一瞬……ほんの一瞬ではあるが、確かに気を抜いた。
次の瞬間、弓の名手である男は弓タイプのマジックアイテムに、ドラゴンの歯を矢じりに使った矢を装填。
魔法使いによって風と雷の魔力が付与され……渾身の一矢が放たれた。
男たちは、全員その一矢であれば、ドラゴンや防御に特化したゴーレムをも貫けると確信した。
ここまでの流れで、男たちは二つのミスを犯していた。
一つが、分身ソウスケという一人で一つの部隊を滅ぼす怪物について、本陣に戻って大将に伝えなかったこと。
仮面の男について本陣の作戦を考えるのが仕事の者たちに伝えていれば、今後の説教を変えられたかもしれない。
二つ目が……放たれた轟魔弓が、確実に分身ソウスケに当たると思ってしまったこと。
放たれた矢の速度や攻撃力を考えれば、確かにそう思ってしまうのも無理はない。
だが、世の中に絶対はない。
どれだけ自信がある攻撃を放てたとしても、それが防がれる。もしくは躱される可能性はゼロではない。
「なっ!?」
分身ソウスケは反応速度を遺憾なく発揮し、ギリギリで回避に成功。
そして次の瞬間、収納袋から取り出した一振りの剣を……その場で振った。
(っ、熱い!!!???)
突如、体に熱さを感じた。
一体何が起こったのか……冷静に考えれば解るが、勝ったと思った状況から一変した。
直ぐに男たちが、自分たちの身に何が起きたのか理解できないのも仕方ない。
結果的に言えば、分身ソウスケは水龍の蒼剣から水の斬撃を放った。
そして、男たちの体は、綺麗に切断された。
熱さは体が切断されたからこそ、感じた痛みの一つ。
ただ……直ぐにその痛みは消えていく。
何故なら、男たちの命はもう助からない。
男たちの中には、防御系のマジックアイテムを装備している者もいた。
自身の防御力を上げる、装備者の任意で強固な盾を生み出す。
それらは、全て無意味だった。
究極に近い剣から放たれた斬撃は、それらの盾を全て切断し、その命を刈り取った。
「……どうやら、固まってたみたいだな」
そこまで高低差がなかったこともあり、一つの斬撃だけで一つの部隊を消す結果に至った。
「よし、もういないみたいだな」
また奇襲を仕掛けられるのでは?
そう思って周囲の気配を探るが、モンスターすらいないことが確認出来た。
ささっと使えそうな物を回収。
死体は蛇腹剣に食べさせ、休憩。
「まさか、たった一振りで全滅させられるとはな」
矢を放った狩人は確実に殺せる。
狩人を攻撃から守るタンクも同時に殺せるとは思っていた。
しかし、部隊の者たち全員が一か所に集まっているとは予想しておらず、棚から牡丹餅といった結果となった。
因みに、その部隊の後始末を終えたソウスケは、即座に場所を変えて休息を取っていた。
水の斬撃を消すタイミングが遅れ、十数本の木を切断。
激しい戦闘が起これば、決して珍しい出来事ではないが、その後に戦闘音がなければ……怪しまれる可能性は高い。
(後十分ぐらい休んだら、また動くか)
日が沈む始めるまで、まだまだ時間はある。
乱戦は、これからが本番だった。
圧倒的な身体能力と魔剣の二刀流。
攻撃魔法の腕や、同時発動出来る技術力に、人か? と疑いたくなるような攻撃方法で一つの部隊を、一人で全滅させた。
(なんだ、あの仮面の冒険者……冒険者か? おそらく、冒険者だろう)
その姿から、兵士や騎士には見えない。
しかし、冒険者……には少し見えない。
そもそも冒険者の中で、仮面を付けて行動する者などいない。
だからこそ、余計に一人で一つの部隊を全滅させる勢いで戦う者が、いったい誰なのか……男たちは、どれ一人として思い付かなかった。
ただ……あの者は、ここで絶対に殺すべき。
全員が同じ気持ちであり、異論はない。
男たちがそう思ってしまうのも、無理はないほど仮面の者……分身ソウスケは暴れに暴れ、最終的に誰の手も借りず、一つの部隊を全滅させた。
そして一瞬……ほんの一瞬ではあるが、確かに気を抜いた。
次の瞬間、弓の名手である男は弓タイプのマジックアイテムに、ドラゴンの歯を矢じりに使った矢を装填。
魔法使いによって風と雷の魔力が付与され……渾身の一矢が放たれた。
男たちは、全員その一矢であれば、ドラゴンや防御に特化したゴーレムをも貫けると確信した。
ここまでの流れで、男たちは二つのミスを犯していた。
一つが、分身ソウスケという一人で一つの部隊を滅ぼす怪物について、本陣に戻って大将に伝えなかったこと。
仮面の男について本陣の作戦を考えるのが仕事の者たちに伝えていれば、今後の説教を変えられたかもしれない。
二つ目が……放たれた轟魔弓が、確実に分身ソウスケに当たると思ってしまったこと。
放たれた矢の速度や攻撃力を考えれば、確かにそう思ってしまうのも無理はない。
だが、世の中に絶対はない。
どれだけ自信がある攻撃を放てたとしても、それが防がれる。もしくは躱される可能性はゼロではない。
「なっ!?」
分身ソウスケは反応速度を遺憾なく発揮し、ギリギリで回避に成功。
そして次の瞬間、収納袋から取り出した一振りの剣を……その場で振った。
(っ、熱い!!!???)
突如、体に熱さを感じた。
一体何が起こったのか……冷静に考えれば解るが、勝ったと思った状況から一変した。
直ぐに男たちが、自分たちの身に何が起きたのか理解できないのも仕方ない。
結果的に言えば、分身ソウスケは水龍の蒼剣から水の斬撃を放った。
そして、男たちの体は、綺麗に切断された。
熱さは体が切断されたからこそ、感じた痛みの一つ。
ただ……直ぐにその痛みは消えていく。
何故なら、男たちの命はもう助からない。
男たちの中には、防御系のマジックアイテムを装備している者もいた。
自身の防御力を上げる、装備者の任意で強固な盾を生み出す。
それらは、全て無意味だった。
究極に近い剣から放たれた斬撃は、それらの盾を全て切断し、その命を刈り取った。
「……どうやら、固まってたみたいだな」
そこまで高低差がなかったこともあり、一つの斬撃だけで一つの部隊を消す結果に至った。
「よし、もういないみたいだな」
また奇襲を仕掛けられるのでは?
そう思って周囲の気配を探るが、モンスターすらいないことが確認出来た。
ささっと使えそうな物を回収。
死体は蛇腹剣に食べさせ、休憩。
「まさか、たった一振りで全滅させられるとはな」
矢を放った狩人は確実に殺せる。
狩人を攻撃から守るタンクも同時に殺せるとは思っていた。
しかし、部隊の者たち全員が一か所に集まっているとは予想しておらず、棚から牡丹餅といった結果となった。
因みに、その部隊の後始末を終えたソウスケは、即座に場所を変えて休息を取っていた。
水の斬撃を消すタイミングが遅れ、十数本の木を切断。
激しい戦闘が起これば、決して珍しい出来事ではないが、その後に戦闘音がなければ……怪しまれる可能性は高い。
(後十分ぐらい休んだら、また動くか)
日が沈む始めるまで、まだまだ時間はある。
乱戦は、これからが本番だった。
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