上 下
794 / 1,129

七百六十四話 それは諦めよう

しおりを挟む
「……やるか」

レヴァルグが埋まっている台座に到着し、昂る心を落ち着かせたソウスケは……両手で炎槍を掴み、引き抜こうとした。

「っ!? マジか!」

あまり力を入れたら、勢い余って後ろに転んでしまう。
そう思って、強化系のスキルは使用していない。

それでも……ソウスケが素の状態で力を全開すれば、相当な腕力になるのだが……それでも抜けない。

ならばと思い、身体強化のスキルを使って、もう一度引き抜く。

(……ど、どうなってるんだ!?)

身体強化を使っても抜けない。
ただ、ここで諦めるわけがなく、ソウスケは腕力強化系のスキルを使用。

本気のマッスルモードで引き抜こうとするが……それでも抜けなかった。

「……ザハーク、ちょっとやってみてくれるか」

「あぁ、分かった」

主人に託され、やる気が満ち溢れるザハーク。
ソウスケが強化系のスキルを使った状態で試したのは解っているので、自分も全力で引き抜こうとする。

「ぬぅおおおおぉぉおおおおおおおおっ!!!!!!」

雄叫びを上げながら引き抜こうとするが、それでも抜けないレヴァルグ。

だが、ここでミレアナが異変に気付いた。

「はぁ、はぁ、はぁ……どうなっている」

「ザハークでも抜けないか……」

自分の腕力で抜けないことに、若干ショックを受けている二人。

「いえ、確かに抜けませんでしたが、台座は悲鳴を上げています」

「……マジ?」

「マジです」

こんな時にミレアナが嘘を言うとは思えない。
信用しているからこそ、あの手この手を使って絶対に引き抜く。

とりあえず、ソウスケは開けるだけ開けて、使っていなかった……宝箱に入っていたマジックアイテムを取り出す。

「これだな」

取り出した指輪は、ランク五の腕力を強化する指輪。

加えて、ソウスケは蛇腹剣の強化系スキルを発動。

「これで抜けなかったら……いや、まだ手段はあるか」

普通はやらないであろう手段を思い付いたが、今は全力で強化した状態で、再度ひきぬきに挑戦。

「よっしゃ!!!」

準備万端となり、もう一度レヴァルグを両手で掴み……全力で引き抜く。

すると、徐々に台座がひび割れていき……勢い良くすっぽ抜けた。

「おわっ!? ってぇ!!!!」

見事レヴァルグを引き抜くことに成功したソウスケだが、先程懸念していたことが起こり……床に勢い良く後頭部をぶつけることになった。

「そ、ソウスケさん! 大丈夫ですか!?」

「あ、あぁ。大丈夫だ」

身体強化を使ってみたこともあり、幸いにも骨は砕けておらず、皮膚も裂けていない。
ただ、少々鈍い痛みが残っているだけ。

それでも……ようやく、超名槍を引き抜くことが出来た。

因みに、この台座は普通の台座ではなく、マジックアイテム。
腕力で無理矢理抜かずとも、この遺跡を造った人物の血族……シラブルの街を治める領主や、その者と血の繋がりがある者の血を垂らせば、強力な力など必要な悪、あっさりと抜ける。

「いや~~……やっぱ、立派と言うか美しいというか、神々しいというか……とにかく凄い一品だな」

「あぁ、惚れ惚れする名槍だ」

「金には代えられない品ですね」

三人ともレヴァルグの存在に見惚れる中……誰が使うかはさておき、一先ずソウスケの亜空間にしまった。

「さて……あれはどうしようか」

視線を向ける先には……巨大な魔石……ではなく、ダンジョンのコアが壁に飾られていた。

「……触らない方が、よろしいかと」

「その理由は?」

ザハークの問いに、ミレアナは即座に答えた。

「あれを取り除けば、遺跡が崩壊するかもしれません。どうなれば、誰かが私たちに辿り着く可能性は低くないかと」

ダンジョンのコアが、遺跡をダンジョンに性能を寄せている……という考えは正しい。
そして、目の前のダンジョンコアを引き抜けば、面倒事が自分たちに降りかかるかも……そんな予想も正解だった。

「あり得そうだな……仕方ない、あれは諦めよう」

コアの大きさから、本当は是が非でも欲しい物だが……それでも今後の事を考えれば、諦めるのが得策だった。
しおりを挟む
感想 251

あなたにおすすめの小説

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二 その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。 侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。 裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。 そこで先天性スキル、糸を手に入れた。 だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。 「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」 少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」  パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。  彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。  彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。  あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。  元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。  孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。 「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」  アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。  しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。  誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。  そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。  モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。  拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。  ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。  どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。  彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。 ※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。 ※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。 ※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。

4層世界の最下層、魔物の森で生き残る~生存率0.1%未満の試練~

TOYA
ファンタジー
~完結済み~ 「この世界のルールはとても残酷だ。10歳の洗礼の試練は避ける事が出来ないんだ」 この世界で大人になるには、10歳で必ず発生する洗礼の試練で生き残らなければならない。 その試練はこの世界の最下層、魔物の巣窟にたった一人で放り出される残酷な内容だった。 生存率は1%未満。大勢の子供たちは成す術も無く魔物に食い殺されて行く中、 生き延び、帰還する為の魔法を覚えなければならない。 だが……魔法には帰還する為の魔法の更に先が存在した。 それに気がついた主人公、ロフルはその先の魔法を習得すべく 帰還せず魔物の巣窟に残り、奮闘する。 いずれ同じこの地獄へと落ちてくる、妹弟を救うために。 ※あらすじは第一章の内容です。 ――― 本作品は小説家になろう様 カクヨム様でも連載しております。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界転移でのちに大陸最強の1人となった魔剣士 ~歌姫の剣と呼ばれし男~

ひぃ~ろ
ファンタジー
とある過疎化の進んだ地区で地方公務員として働いていた 橘 星那 《たちばな せな》高卒30歳独身、彼女無しが近くに住んでいた祖父の家に呼ばれ 蔵の整理をしたところ大きく古びた櫃のようなものを開けるとその中に吸い込まれてしまい きづいた時には見慣れぬ景色の世界、異世界へと飛ばされていた そこで数々の人々と出会い 運命の人に出会い のちにナンバーズと呼ばれる 大陸最強の13人の一人として名をはせる男のお話・・・・です ※ おかげさまで気づけばお気に入り6、000を超えておりました。読んでいただいてる方々には心から感謝申し上げます。  作者思いつきでダラダラ書いておりますので、設定の甘さもありますし、更新日時も不定、誤字脱字並びにつじつまの合わないことなど多々ある作品です。  ですので、そのような駄作は気に入らない、または目について気になってしょうがないという方は、読まなかったことにしていただき、このような駄作とそれを書いている作者のことはお忘れください。  また、それでも気にせず楽しんで読んでいただける方がおられれば幸いとおもっております。  今後も自分が楽しく更新していけて少しでも読んで下さった方が楽しんでいただければと思います。

処理中です...