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七百四十一話 貴重な使い捨て道具

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本日の買取で、ソウスケは再び多くの大金を手に入れた。

ギルドの金庫から大量の金が飛んでいく……のは一瞬であり、ソウスケたちがギルドに売った素材は基本的に、どれも状態が良い。

なのでギルドが店に素材を売る時、いつもより高い金額で売りつけることが出来る。

(大金が手に入ったけど……今のところ、何かに使う予定はないんだよな)

定期的に料理に使う調味料は購入しているは、他に定期購入している物は砥石などしかない。
あまり買い物をしない……大金を使う時といえば、高級料理店で食事をする。
もしくは、ソウスケ限定だが娼館に通う時ぐらい。

今でもエアーホッケーの製作は行っており、予約が止まる気配はない。

「ソウスケさん、悩ましい顔をしていますね。何かお困りですか?」

「……今回の買取で、またお金が増えただろ」

「そうですね。周囲の冒険者たちが今にも涎を垂らしそうな顔をして、羨ましがっていました」

ソウスケが受付嬢がモンスターの素材買取金額を渡す光景を見ていた冒険者の中には、その金額の多さに驚くあまり、心臓が止まるかと思った……そんな者もいた。

ミレアナの言葉通り今にも涎を垂らしそうな者や、目玉が飛び出そうなほど驚いている者もいたが、決して三人の後を付け回し、裏路地でこっそり叩きのめして奪おうと考える者など、一人もいなかった。

「そ、そうか。んで、そのお金を何に使おうか悩んでるんだ」

有り余るお金を何に使おうか……とんでもなく贅沢な考えだが、ソウスケにとっては大真面目な考え。
そんなリーダーの悩みを解決すべく、ミレアナは真剣に考える。

「っ……中々思い浮かびませんね」

一瞬、土地を手に入れて発展させる……もしくはソウスケが自由に使える部隊をつくる。
それらの事がぱっと頭に浮かんだが、一つ目はソウスケにとって足枷になるだけであり、二つ目は国に睨まれる可能性がある。

ソウスケたちは現在活動している国に忠誠を誓っている訳ではないが、それでも国と敵対しても構わないとは思っていない。

「武器や錬金術の素材を買い漁るのはどうだ?」

「……悪くはないけど、鉱石とかならダンジョンの宝箱からも手に入る。それに、モンスターの素材はダンジョンでいくらでも手に入れられるからな……まぁ、学術都市では中々手に入らないダンジョンというなら話は別だけど」

とはいえ、今のところザハークが提案した内容に金を消費するのが三人にとってベスト。
再び奴隷を購入して、戦力を増加させる?

それはソウスケとミレアナも一瞬だけ考えたが、既に戦力は冒険者の中でも最上位に位置する。
前衛はザハーク、中衛はソウスケ、後衛はミレアナと非常にバランスが取れている。

冒険者のパーティー的にはもう一人いるのがベストだが、身体能力や感知力、高品質の武器や魔法など全てが揃っている。
これ以上仲間を増やす必要がない。

「さて、空けていくか」

宿に戻ったソウスケは今回の探索で手に入れた宝箱を取り出し、一つずつ解錠していく。

「……やっぱり、ミスリルとか入ってるよな」

宝箱の中身に落胆したわけではない。
しかし、予想通り宝箱の中には中々手に入らない鉱石も入っており、あまり鉱石の購入に金を使う機会は少ないかもしれないと思いながらも解錠を続ける。

偶に何故こんな物がダンジョン最下層にある宝箱の中に? と頭を捻る物もあったが、概ねどれも高級な物ばかり。

「…………ソウスケさん、それらは私が貰ってもよろしいでしょうか」

「おぅ、勿論良いぞ。存分に使ってくれ」

ある宝箱の中に入っていた物は、Aランクのドラゴンの牙が使われた矢。
その矢を使った攻撃だけで、必殺の攻撃になる。

「いえ、要所となるタイミングのみ使わせていただきます」

「……まっ、隙に使ってくれ」

基本的に使い捨ての武器ではあるので、ミレアナとしてはそう簡単にほいほい使えない貴重な道具だった。
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