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七百二十九話 卑怯では……ないよな?

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「……」

対峙している人間の集中力が高まるのを感じ……ガルムの戦意も同時に高まる。

(とりあえず……これはどうだ)

ソウスケが放った攻撃は水龍の蒼剣を何度も振り、多数の水の斬撃を飛ばす。
ただの水による斬撃ではなく、水龍の蒼剣から放たれた斬撃……一般的なものと同じな訳がない。

それが幾つも網の様に押し寄せる。

当然、ソウスケはガルムの後方に他の冒険者がいないことを確認している。

「グルルゥゥァアアアアッ!!!!」

「ッ!? やるな!!」

逃げ切れないと思えた斬撃に対し、ガルムは火のブレスで対抗。

ガルムのブレスもそんじょそこらのブレスとは訳が近い、圧倒的な高温で対象を溶かしてしまう。

「ッ!」

だが、数本の斬撃は逃してしまい、斬撃がガルムの体を襲った。

しかしガルムも百戦錬磨の超強者。
痛みをコントロールする術を習得しており、痛みによってパフォーマンスが低下することはない。

(なら、これはどうだ!!)

ガルムの後方、両側、上。
前面だけを残し、全てをウォータージャベリンで包囲した。

魔力操作で思いっきり回転しており、ガルムの体を貫かずとも、傷付ける威力は持っている。
そんな水激槍が周囲に百本以上。

(さぁ……どうする!!!)

そして前面には月の構えを取るソウスケ。
既に強化スキルは発動しており、その肉体から放たれる威力は例えミスリル並みの堅さを持っていようと、容易に貫く貫通力を秘めている。

「はっ!!!」

無数のウォータージャベリンと、神速の突きを同時に発動。

そんな完全に水の攻撃に包囲されているガルムが取った行動は……前進。
体を若干捻りながらも、かろうじてソウスケが放つ超一点集中の突きを躱し、ウォータージャベリンからの包囲網も抜けた。

事前に自分の周囲に何かが来るという予感がしており、前だけが空いていた。
その前からも十分に自分を殺しうる攻撃が飛んでくることは分かっていたが、絶対に生き残る方法は……なんとか体を捻りながら前に出て、無数の水激槍も神速の水による突貫を躱しかなかった。

「ッ!!!!! ガァアアアッ!!!」

ミスリルをも貫く一撃をギリギリで回避……とはいかず、少しだけ擦れてしまった。

超一点集中の突きとはいえ、掠っただけでもダメージを与えるだけの威力を持つ。
その突きはどんどん後方まで伸びていき、最終的にダンジョンの最奥の壁に激突し……なおも、壁を突き抜け続けた。

(あれをギリ避けるか!!)


ガルムは避けるだけで終わらず、ソウスケの側面から体を思いっきり回転させ、全体重を乗せた炎の爪撃を飛ばした。

「おらっ!!!!!」

逃げるのは間に合わないと判断し、ソウスケは水龍の蒼剣で炎の爪撃を防いだ。

だが、それはガルムの中で想定済みだった。
一瞬でソウスケから距離を取り、今度はお返しとばかり……一点集中型のブレスを吐き出した。

(ガードは、間に合わない!!!!)

ガルムが事前にブレスの準備を行っていたこともあり、ソウスケはガードするまでの余裕が一切なかった。

その為……とった行動は水龍の蒼剣に一刀両断。
もう全魔力を込めるつもりで最強の武器に魔力を注ぎ、ガルムの渾身のブレスに挑んだ。

その結果…………少しは慣れた場所からソウスケとガルムの戦いを見ていたザハークとミレアナからすれば、明らかなやり過ぎ。
超過剰攻撃と思えてしまった。

「あっ……うん……仕方ない、よな。命懸けの真剣勝負なんだし」

そう言いながらも、やっぱり水龍の蒼剣を今回の戦いに持ち出したのは良く無かったかなと……ほんの少しだけ思った。

「やべっ!!!」

ソウスケが放った渾身の斬撃は地面は勿論、ダンジョンの転移まで切り裂いていた。

そして当然……その斬撃の先にいるガルムは綺麗に一刀両断。
斬られたガルムは、自分が斬られたと気付くまで数秒かかった……それだけ、ソウスケが放った斬撃を速く真っすぐだったと言える。

そして戦いが終わり、速攻でガルムの素材を心配したソウスケは超ダッシュでガルムの元に走り、ひとまずアイテムボックスの中に回収した。
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