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七百二十三話 今更思っても仕方ない

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(おいおい、それはちょっと勘弁してくれよ!!)

主にダンテたちのサポートを行うソウスケ。

そんな中、放たれた溶岩竜の攻撃を見て……冷や汗が流れた。
先程放たれた一撃は、他のモンスターも行うことがある攻撃。

地面を踏みしめ、その力を伝わせて……相手の地面から噴出する。

(あれを食らったら、絶対にリタイアするだろ)

そして溶岩竜のそれは、扱う火の性質もあってか、騎士たちを一撃で沈める怖さがある。

勿論、騎士や魔法使いたちも上級者向けダンジョンに潜るために、火属性の攻撃を耐えるためのマジックアイテムを身に着けている。
しかし溶岩竜の火はその耐性をも貫く攻撃力を持っており、死なずとも……その一撃を食らえば、この戦いから即座に戦線離脱してしまうのは間違いない。

「ザハーク」

「あぁ、分かっている」

同じくダンテたちをサポートするザハークに声を掛けるが、既にソウスケが何を言いたいのか察していた。

(ソウスケさんが心配するのも解る。あれは危険だ)

ザハークも溶岩竜の攻撃が騎士、魔法使いたちにとっては致命傷になる一撃だと気付き、溶岩竜の動きを更に注視。

離れた相手の炎柱をぶつける攻撃は、強い踏み込みが必要になる。
その為、溶岩竜の動きに注目していれば、そのタイミングが分からなくもない。

分からなくもないが……メインで戦っているダンテたちにはそれを見極める余裕がない。
なので、サポートを行っているソウスケやザハークがそのタイミングを邪魔しなければ……この戦いで、死者が複数出てもおかしくなかった。

(動きがそんなに早くない分、あの踏み込みは分かりやすい。まっ、その動きばかりに集中してられないけどな)

溶岩竜の攻撃はそれだけではない。
動きはAランクの中で遅い方であっても、接近戦で攻撃してくることは珍しくなく、尾で全体攻撃を行うこともある。

そうなった場合、ザハークが前に出て止めることが多い。

(さすがAランク、重いな!!!!)

ザハークはこの戦い、全力でサポートに集中している。
なので、ダンテたちが対処出来ない攻撃には必ず間に入り、その攻撃を受け止め、受け流しているが……それでもダメージがゼロという訳ではない。

以前、同じAランクのアシュラコングと戦ったが、パワーに関しては明らかに溶岩竜の方が上。
体に纏う熱量も溶岩竜が勝っており、尾や爪を受け止めても……何メートルと押し込まれてしまう。

決して今回はタイマンでAランクモンスターと戦っている訳ではなく、更にメインの行動はダンテたちのサポート。
戦闘大好きなザハークからすれば、不満がある一戦かもしれないが……それでもザハークの血は滾っていた。

(相変わらずザハークは楽しそうだな~。俺としては、一撃で騎士たちが死なないか超心配だってのに)

溶岩竜との激闘が始まり、既に五分以上が経っていた。
数と高い戦力を有し、戦況はダンテたちが有利な状態。

だとしても、溶岩竜の攻撃力が下がった訳ではない。
ダンテたちの中に相手のステータスを下げる魔法やスキルを持つ者はおらず、ソウスケたちもそういった方法は持っていない。

魔力だけは確実に消費しているが、それでもまだ体に火を纏い、ブレスを吐く余裕はある。

(当然、ブレスの使い分けは出来るし……なんなら、拡散弾みたいなブレスも使ってくる。見た目より器用なんだよな……正直、ダンテさんだけ戦ってる方が、俺たちもサポートしやすいかもな)

思っても口には出さない。
ただ、数が増えればソウスケたち守らなければならない存在が増えるのは当然であり、全員がAランククラスの力を持っている訳ではない。

超強敵とも言えるAランクモンスターに挑む勇気は素晴らしいが、そう思ってしまうのがソウスケの結論だった。

(溶岩竜の特徴があっての考えってのもあるけど……いや、今これ以上考えても仕方ない。誰一人死なせない事だけに集中しろ)

戦いを有利に進められてはいるが、まだ勝利に近づいてはいない。
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