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六百七十九話 死にたくても死ねない

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「ソウスケ、仕事が終わったぞ」

「ただいま~~~」

「二人ともおかえり」

急激に力を付けた盗賊を討伐しにいく前日の夜、契約している二人の悪魔がソウスケの元に帰ってきた。

「それで……俺たちを狙おうとした学者さんはどう料理したんだ?」

「そうね~~~……さんざん虐めてから、殺さずに生き地獄を味合わせて上げることにしたの」

「うむ、そんな感じだな。普通なら死にたくなり、自殺するかもしれないが……そうは出来ない呪いをかけている」

「へ、へぇ~~~~~…………お前ら、本当にえげつないな」

自分たちを狙った相手なので、ちょっと痛めつけてハイ終わり、で終わって欲しいとは思っていない。
だが、自殺したくても出来ない状況というのは……想像するだけで体が震えてしまった。

「契約者であるソウスケを狙おうとしたのよ。これぐらい当然じゃない」

「しっかり報酬も貰っていることだしな」

「そうか……今回は色々と助かったよ。またこういった機会があれば頼むよ」

仕事を終えた二人は普段生活している魔界へと帰還。

(自殺したくても出来ない呪い、か……恐ろしい呪いだな、でも、そんな状況になったら気が狂い過ぎて、自我崩壊? 的な感じで死ぬんじゃないか??)

そんな的外れでもない考えが浮かんだが、首を横に振ってその可能性を消した。

(二人がそんな爪の甘いことするとは思えないから……もしかして、精神が崩壊しない呪い? みたいな感じの呪いも追加でぶっこんでるかもな……二人の力を考えるとあり得ない話ではないか)

本当に頼もしい悪魔と契約したと、心の底から思う。

「ソウスケさんを狙おうとした愚か者は、どうやら地獄を味わっている様ですね」

「あいつらが嘘を付くとは思えないしな。まぁ……確認する必要はないだろ」

学術都市にいれば、いずれ噂が耳に入るかもしれないので、特に事実を確認しようとは思わない。

(でも……呪いなら、いずれそういった気配に敏感な人が気付くか? 学者なんだし、色んな人と接するだろうから気付く人がいそうだけど……いや、仮に気付いたとしても解呪出来るかどうかは、また話が別か)

「そういえばソウスケさん、例の盗賊の力の件に関して二人に尋ねなくても良かったのですか?」

「……しまった、完全に忘れてた」

ここ最近で急激に戦力を高めた盗賊団。
その戦力増加の理由が、もしかしたら悪魔の力によるものではないか……と考えたソウスケは、レグルスとレーラに話を聞こうと思っていた。

だが、ソウスケは二人に尋ねるのをうっかり忘れてしまい、レグルスとレーラはもう魔界に帰ってしまった。

「まぁ、でも二人を呼び出すのは止めておこう。そんなに大きな話って訳でもない」

「それはそうかもしれませんね。仮に二人に近い実力を持つ悪魔が盗賊に力を貸していれば、もっと自体は大事になっているでしょう」

「だよな。とりあえず、明日もいつも通り盗賊はサクッと殺すだけだ」

ダンジョンは地上に生息するモンスターと戦う時……強敵であれば、ソウスケもそれなりに戦いを楽しむ。

だが、盗賊の様な犯罪者がいくら強くとも、そいつらとの戦いを楽しもう……なんて気は起きない。
戦いが始まれば、速攻で殺す。
ただそれだけで良い。

自分たちを狙っていた学者が地獄を味わう日々が続くと知った夜、ソウスケはいつもより良い睡眠が取れ……翌日、ミレアナに起こしてもらうことなく目覚めた。

「……おはよう、ミレアナ」

「あはようございます、ソウスケさん。珍しいですね……もう少し寝ても大丈夫ですが……二度寝しますか?」

「いや、もう起きるよ。なんだかスッキリ目が覚めたんだ」

いつより体の調子が良く感じる。

(昨日、良い報告を聞けたからか? 何はともあれ、有難い目覚めだな)

下に降りて朝食を食べ終えた二人はザハークと合流し、待ち合わせである門の前へと向かった。
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