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六百七十八話 戦う相手には困らない

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作戦会議が終わると、全員部屋から出ていく中で……波紋のメンバーだけがソウスケに声を掛けた。

「ん? なんか用か」

「いや、えっとだな……」

中々喉から言葉が出てこないジープに対し、パーティー内で唯一Cランクであるオーザストが背中をバシッと叩いた。

「いッ!!??」

「ほれ、さっさと言ってしまわんかい。変に時間を掛ける必要もないじゃろ」

「わ、分かったっての。その……わ、悪かった!!! お、俺たちの態度が間違ってた」

「申し訳ありませんでした。私たちがまだまだ未熟でした」

ソウスケに対して敵意に近い感情を持っていたジープとレイガが同時に頭を下げ、謝罪を行った。

「あぁ、別にそんな気にしなくて良いよ。そういった態度を取られるのは慣れてるか」

素直に謝罪を行ってくれたことに対しては嬉しいと感じ、ソウスケの中で二人の評価が変わった。
ただ、自身の見た目や体格のお陰で、上から見下ろすように見られたり、府の感情を向けられることに対しては慣れている。

そういった目や感情を向けられるのは確かに嫌だが、直ぐ謝ってくれたのであれば水に流す。
それがソウスケの思いだった。

「いや~~、すまんな。二人には君はとても飛び抜けた実力を持つ者であり、ジープやレイガが二人がかりで襲っても倒せないと説明しておいたんじゃがな」

オーザストは遠目ではあるが、ソウスケを軽く集中して視たことがある。
そして前日の露店にも訪れ、武器こそ買わなかったがその出来に驚かされた。

「は、はは。それはどうも。ですが、そう言われてしまうと余計に相手を敵視してしまうかもしれませんよ」

「うむ、そうじゃな。今回の件で思い知らされたわい。普段はもう少し儂の言うことを聞いてくれるんじゃがの」

「「うっ!」」

「はぁ~~~~、二人ともしっかりしてよ。いつもまでもオーザストさんにおんぶだっこじゃ駄目なんだからさ」

パーティーの中で紅一点であるクリアナは元々ソウスケのことを敵視したり嫉妬しておらず、自分たちと歳がそこまで違わないのにとても強くて、ドワーフであるオーザストが認めるほどの鍛冶技術も持っているなんて、とんでもない人。

単純にそう思っており、感覚としては歳が近くとも侯爵家や公爵家の令息ぐらい、色々と違う物なのだと認識していた。

「わ、分かってる。今回は本当に俺たちが傲慢だったっていうか、まだまだ観察眼が甘いというか……とにかく、ソウスケさんみたいな実力者に失礼な態度を取ったのは理解してる」

明らかにソウスケの方が歳下なのに対し、さん付けで呼んだジープをソウスケ第一に行動するミレアナとザハークは少しだけ評価を上げた。

「それで……その、少し聞きたいんだけど……なんでソウスケさんは、そんなに強いんだ?」

「……」

なんで、年齢が二十すら越えていないのに圧倒的な強さを持っているのか。
この質問に対して、ソウスケは簡単に細かい内容を他者には伝えられない。

ただ、一応ジープの問いには答えてやりたいと思い、この世界に来てからの今までを思い返す。

「とりあえず、モンスターと戦い続ける……それしかないかな。レベルが上がれば身体能力や魔力の総量が上がる。実戦を積めば、体に敵と戦う時に行った動きが蓄積される。その蓄積が、ギリギリの戦いの中で考えずとも咄嗟に体に出る。そうなるまで……死なない程度に、戦い続ける日々を送ればいんじゃないかな。幸いにも、この街には三つもダンジョンがあるんだから、戦う相手には困らないと思う」

考えずとも、勝手に体が動くようになる。
その経験はソウスケ自身、本当に体験したことがあり……それを体験するまで、多くのモンスターや盗賊と戦い続けてきた。

「はっはっは!!! ソウスケの言う通りじゃな。つまり、まだまだお前らには実戦と日々の訓練が足らんということじゃ」

「そ、そうか……そうなんだな」

明確で解りやすい答えというわけではないので、ジープは完全にソウスケの言葉を飲み込めたわけではないが、それでも自分に実戦と訓練が足りないということだけは納得した。
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