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六百三十五話 本能的に無理

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「なんだ……この感覚は」

今までに味わったことがない感覚がソウスケの体を走った。

(これは恐怖? ……ではない。多分、違う。でも、確かに今体に寒感が体に走った)

「ソウスケさん、全て倒し終えたぞ」

「あ、あぁ。今回収する」

ささっとザハークが倒し終えたBランクのアントたちを回収。

(Bランクのモンスターなのに、かなり綺麗に倒しているなら……こりゃ技術面に関しては並ばれたか?)

そんな事を考えるも、やはり先程感じた寒感が気になる。

「ん? ミレアナ、お前も何かを感じたか」

「は、はい。何と言いますか……物凄く嫌な感覚が体を走ったと言いますか……不快感が凄かったです」

「ミレアナも似た様な感覚を感じたか……ザハーク、お前ももしかして何か嫌な感覚が体を襲ったりしたか」

「そうだな……二人ほど嫌な何かを感じたというわけではないが……こう、拒否したくなる何かを感じた気がする」

この場にいる三人が殆ど同じ感想を抱いた。
ソウスケはもう何もトラップが仕掛けられていない宝箱を回収しながらも、直ぐにこの場から離れるべきか考えていた。

(そもそも三十階層以降を目指してたんだから、直ぐにこの場から離れて下に続く階層に向かっても特に問題はない。でも……もしさっきみたいな状況がまた起こったら)

圧倒的な勢いでソウスケたちがソルジャーアントやその上位種を殲滅させたからこそ、他の冒険者たちに被害が及ぶことはなかった。

だが、また似た様なダンジョンイレギュラーやトラップが起きてしまった場合、ソウスケたちがこの場を離れれば現在フロアを探索している冒険者たちが全滅する可能性がある。

「はぁ~~~~~……仕方ない、このモヤモヤ感を解消してから降りるか」

ソウスケの決定にミレアナとザハークも意義はない。
三人とも速攻で魔力の回復を済ませると………部屋の奥から大量の虫が現れた。

(こ、これが原因か!!!!!)

何故恐怖の類ではない寒感が体を走り抜けたのか、こちらにやって来るモンスターの姿を見て直ぐに納得した。

「ぶっ飛べ!!!!!!」

「はっ!!!!!!」

「ふん!!!!!!」

大量に現れたモンスターはCランクのグローチ。

そう、簡単に言ってしまえば………巨大なゴキブリのモンスター。
ソウスケだけではなく、ミレアナも生理的に無理なモンスターだ。

ザハークも姿を見た瞬間、一気に鳥肌が立ち、無意識に攻撃魔法を連発していた。

「素材はどうでも良い、とにかく全滅させろ!!!」

「「了解!!!!!」」

絶対に近づきたくないと言わんばかりに、三人は攻撃魔法だけでグローチを責め続ける。
スタートダッシュが非常に早いグローチだが、三人が放つ攻撃魔法の速度も負けていない。

そしてソウスケとミレアナは正確に魔法を操作し、的確にグローチの命を奪っていく。
ただ、的確に命を奪っているが、槍や矢に玉の大きさが普段と比べて大きく盛大にグローチの体を抉っていく。

ソウスケにしては珍しく魔石も遠慮なしに破壊してグローチを殺していく。

(あぁ~~~~~、駄目だ。本当に駄目というか無理だ。もう、これは俺というか人というか生物に? 刻まれた本能みたいなものだな)

その外見、カサカサと音を立てながら地面を走り回る動き。
そのどれもがソウスケにとって不快感を与える。

だが、幸いにもいきなり現れたグローチにはソルジャーアントの様に上位種は混ざっておらず、遠距離戦だけでも十分に倒すことに成功。

しかしそれなりに数が多かったこともあり、三人はまとも魔力の量が少々危なかった。

「はぁ、はぁ、はぁ…………全部、倒した……よな」

「えぇ、そうですね……全て、倒し終えたかと」

ソウスケとミレアナはソルジャーアントと戦った時よりも顔に疲れが現れていた。
魔力は底を尽きた訳ではないが、精神的な疲労度合いが全く違った。

「はぁ~~~~~~、疲れた!!!! もう………マジで最悪だ」

「ど、同感ですね」

二人は地面にどかっと腰を下ろし、弱音を吐いた。
ザハークは二人の様にへたり込まなかったが、それでも精神的に疲れており、ソルジャーアントと戦ってる時の様な楽しさは微塵もなかった。
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