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六百四話 そろそろ飽きてきた

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「……さすがに飽きてきましたね」

三体のフォレストタイガーを倒し終え、二十一階層に戻って地上に転移……ではなく、予定通りそのまま三十層のボス部屋に向かってトレントとエルダートレントを討伐。

ボス部屋前に並ぶ冒険者たちの中にはミレアナの存在をまだ知らない者もおり、声を掛けようとする愚か者がいた。
しかしミレアナが一人で三十層のボスを倒せることを知っている者もいたので、必死に犠牲者が出ないように止めた。

下心ありで近づこうとした者がいたが、そんな者でも下心以外に単純に一人でボス部屋に挑むのは危ないと思う気持ちを持っていた。

それでも過去にミレアナが一人でボス部屋に挑むところを見た者がおり、酒場で他の冒険者と話していると、自分が見た時以外にも一人でボス部屋に挑む姿を見た者がいるとしる。

(下心を持ってしまう気持ちは解るが、下手に絡んで良い相手ではない)

美しいバラには棘がある。
その名の通りだと、とある冒険者は事前に知っていたので、とにかくボス戦前に怪我を負うなんて馬鹿なことが起こらないように努めた。

ミレアナは相変わらず自身の番になるまでポーション造りに励んでいた。
ダンジョンの中には地上に生えている薬草よりも質が高い物があるので、良質なポーションを造ろうという向上心が高まる。

そんなミレアナの姿を変な目で見る者もいたが、大半の男はそんなミレアナの姿も絵になると思い、見惚れる。
中には同じパーティーの女性に頬や腹を抓られる者がいた。

ただ、女性の冒険者たちはミレアナに対して不快感を持つことはなかった。
ミレアナが持つ美しさや、冒険者としての強さに嫉妬することはあれど、ビッチやあざといという言葉が相応しい者ではない。

世の中には自身の武器を活かして男に貢がせ、パーティーの関係を壊すパーティークラッシャーと呼ばれる女性冒険者が存在する。
そんな女性は勿論、同性の冒険者からは嫌われる。

しかしミレアナは他の男に媚びることはなく、噂では自分よりも年下の冒険者と一緒に行動している。
他のパーティーから一緒にボスに挑まないかと言われでも、バッサリと断る。

そういった一連の情報から、今のところミレアナを嫌う女性冒険者はいない。

そして時間は進み、遂にミレアナの番になる。
いつもとは違い、ダンジョンの宝箱から手に入れた細剣と最小限の風魔法のみを使って勝負に挑んだ。

これまでとは少々違う方法で戦ったが、トレントとエルダートレントの動きは頭の中に入っている。
遠距離攻撃を最小限に抑えて戦ったとしても、ミレアナの勝利という結果は変わらない。

戦い方を変えれば少しは刺激になるかと思ったが、そんなことはない。
さすがのミレアナも中級者向けダンジョンのラスボスと戦うのは飽きてきた。

(杖の素材としては高品質で、扱いやすいのですが……これ以上は楽しめる要素はないですね)

エルダートレントがAランクのモンスターであれば、流石にミレアナは余裕をぶっこく隙は無い。
パラデットスコーピオンの上位種やザハークが戦ったアシュラコングが相手であれば、非常に肌がヒリヒリする戦いとなる。

ザハークやソウスケほど熱い戦いを求めてはいないが、つまらな過ぎるのも退屈に感じてしまう。

一般的には複数のトレントとエルダートレントの戦力は十分に脅威なのだが、ミレアナの速さと鋭さに掛かればちょちょいのちょいといった感じて終わってしまう。

(今回の依頼でそれなりにお金が入ってきますし、これらの素材以外を売れば更に入ってくる……明日、明後日は錬金術に力を入れても良さそうですね)

フォレストタイガーの毛皮一頭分の依頼を成功させたことにより、金貨七十枚が入ってくる。
それ以外にもグリーンキャタピラーやスピアレオンにシャドウスネークやサイクロプス。
女性の敵であるオークの上位種、フォレストオークなどフォレストタイガーを発見するまでに多くのモンスターと遭遇し、キッチリと倒している。

それらの素材などを売れば、金貨七十枚以上の金が入ってくるのは間違いない。
ミレアナとしてはちょっとした長い仕事程度の感覚ではあるが、その仕事一回で白金貨以上の収入を得ることになった。
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