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五百九十八話 仮に進化すれば

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「とりあえず、私は今の生活に十分満足しています。たとえ、面倒な輩が絡んできたとしてもなんとかできる術がありますしね」

勘違いしたイキり野郎に関しては、その場でボコボコにすれば終了。
権力を持つ面倒な奴はレグルスとレーラに頼めば、自分の手を汚さずに始末できる。

自身の生活は、とても満ち足りている。
ミレアナは自信をもってそう断言出来る。

「そ、そうっすか……すいません、余計なことを聞いて」

「いえ、別に構いませんよ。他の人から見れば少々不自由に思うかもしれませんしね」

誰かに付き従って行動する。
それは自由という言葉の名のもとに活動する冒険者たちの考えからは、少々ズレているかもしれない。

それはミレアナも分かっているので、バータを責めることはなかった。

夕食は適当な時間でお開きになり、宿に戻ったミレアナは自力で風呂を制作して今日一日の疲れを癒す。

「ふぅ~~~~~……やはりお風呂は良いですね」

暖かいお湯に浸かる。
単純なことだが、そうするだけで体が癒されていると感じる。

(……自分では不自由、ソウスケさんの考えや行動に縛られているとは思っていませんが、やはり他の冒険者からすれば自分の意志を持って行動していない。そう思われるようですね)

よくよく思い返せば、確かにそうかもしれないと思ってしまう。
だが、正直なところ……本当に生活していて息苦しいと思ったことはなかった。

寧ろ幸せだと感じていた。
人によってはソウスケに対して、妄信的になっていると思われるかもしれない。
しかし仮にそう思われたところで「だからなんなのだ?」と返してしまうのが本音。

誰かに何を言われようと、ソウスケの寿命が尽きるまで傍にいる。
とりあえずそれだけは変わらない誓い。

(ソウスケさんは特殊な方とはいえ、いずれ寿命がくるでしょう。そうなれば……どうしましょうか)

人族であるソウスケは、転移者ではあるが寿命は人族とさしてかわらない。
戦闘に明け暮れた者の寿命は転移する前の世界と比べて変化するが、それでもよっぽど珍しいスキルやマジックアイテムを使わない限り、二百歳を超えることはまずない。

それに比べて、エルフの上位に該当する種族であるハイ・エルフは余裕で千年は生きる。
ミレアナはまだ百歳も生きておらず、ハイ・エルフの中でも若造も若造。

年齢的にはザ・小娘。
なので、ソウスケが寿命を迎えて亡くなった後も、まだまだ生きる。

(今のところは冒険に明け暮れていますが、いずれはソウスケさんも結婚するでしょうから……生まれてくる子供の世話係……もしくは子供がソウスケさんと同じく冒険者になるのであれば、保護者として同行するのも面白そうですね)

ソウスケが死んだら自由に生きる……という考えはなく、自分がソウスケと結ばれるという考えもなかった。
どこまでもソウスケの為に……ソウスケと共に生きる。

それしか考えていないが、そこでふと一つ思い付いた。

(そういえば、ソウスケさんの蛇腹剣はモンスターを喰らうことで、スキルを喰らうことが出来るのでしたよね。その能力が進化すれば……どうなるのでしょうか?)

持ち主が戦闘を経験することで、進化する。
そんな武器はごく少数であるが、確かに存在する。

なによりも、ソウスケが持っている蛇腹剣は正真正銘、神がソウスケの為に与えた武器。
体験した経験により、進化する可能性は大いに秘めている。

(いずれ……もしかしたら、食らった相手の寿命も自分の物にすることができるのでしょうか?)

なんて自分にとって都合が良いことを考えてしまった。
可能性としては……全くゼロとは言えない。

ただ、何年も何年も生きていれば、いずれ飽きが来るかもしれない。
この世界は暇をつぶすという意味では、転移する前の世界と比べて圧倒的に娯楽が少ない。

その辺りを考えると寧ろ長生きし続けるというのは、逆に苦痛と感じる場合もある。
だが……実際に長く生きて見なければ、分からないというもの……かもしれない。
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