612 / 1,135
五百九十一話 足が震える恐怖は感じないが
しおりを挟む
「おめでとうございます。どうですか、一人で挑んだ感想は」
「その……夢中であんまり覚えてない、です」
慣れた方が良いことであっても、一人で立ち向かうには勇気がいる相手だった。
「そうですか。しかしクレアラは今、一人の力でゴブリンを倒しました。つまり、魔法を使わずともモンスターに勝ったのです」
魔法をメインで戦う者たちが思いがちなのだが、長所を伸ばすのは悪いことではない。
だが、短所を放っておけばいつか後悔する。
冒険者はいつか死ぬかもしれないと元から分かっていても、実際にその時が訪れるまで実感が湧かない。
魔法メインで戦う者が体を鍛えるのが苦手な様に、武器をメインで戦う者も頭を鍛えるのは苦手な傾向にある。
しかしそれは放っておいて良い理由にはならない。
「ただ、まだ少し慣れていない部分がありますので、手頃な相手が見つかればもう一度一人で倒してみましょう」
「は、はい!!」
クレアラの目には先程までの怯えはなく、今度も絶対に勝つという強い意志を秘めていた。
なるべくモンスターと遭遇するように気配感知を絶やさず動き、ミレアナはアドバイスをしながら後ろで静観。
数が多くなければバータたちだけで倒せるモンスターが多いので、ミレアナの出番は殆どない。
ただ、偶に三人だけでは処理できないモンスターの群れが現れる。
「あれはちょっと数が多いですね」
先程クレアラが倒しゴブリン。
数は十体と、バータたちだけで相手をするには数が多い。
ただ、実戦相手には丁度良い敵なので、七体程ウィンドアローを使って瞬殺。
いきなり多くの仲間を殺されたことにオロオロし始めるが、その隙にバータが果敢に攻める。
しかし三体の内、一体がフィーネとクレアラに狙いを定めた。
ゴブリンの手には短剣が握られており、ただの短剣だが二人にとっては刺さりどころが悪ければ致命傷になる。
「ふっ!!」
一撃で倒すのではなく、動きを鈍らせるための一撃を放つ。
放たれた矢はわき腹に命中し、地面に膝を付く。
「やっ!!!」
手に幾つもの石を握り、なるべく当たる様に全力投球。
クレアラが放った石で殺すことは不可能だが、ゴブリンにガードさせるという動きを行わせることに成功。
頭をガードしていた腕が降りた瞬間を狙ってもう一度矢を放ち、ヘッドショット成功。
「おら!!!!」
バータの方も二体を仕留めることに成功し、魔石を回収する。
「数体ぐらいであれば慣れてきましたね」
「そ、そうっすね」
敵の強さは気を抜けばやられてしまう可能性はあるが、心底恐ろしいと感じるモンスターとは戦っていない。
しかしミレアナが気配感知を使って直ぐにモンスターを発見するので、普通の探索と比べて一日の戦闘回数が圧倒的に多い。
勿論休息をしっかり挟んでいるが、それでも徐々に体力が切れてきた。
「……丁度良い時間ですし、そろそろ夕食にしましょうか」
一階層で倒したモンスターの中には肉が食べられるものあり、夕食の分として取ってある。
枝などを拾って火をつけ、料理開始。
とはいっても、本日は三人の教育がメインなので、ミレアナの収納袋に入っている食材は使わない。
(まぁ、こんなものですよね)
普段は野営時であっても、もっと豪華な食事を食べている。
しかしルーキーで野営中の食事の為に調味料を買う者はいない。
今日はミレアナが多くのモンスターを発見したという事もあり、ギルドで買い取ってもらえる素材や魔石を多くゲットできた。
少し懐が温かくなった三人だが、油断して贅沢は出来ない。
低ラックのモンスターが相手であっても、油断すればやられてしまう可能性がある。
つまり、まだ安定して稼げるとは言えないのだ。
「……ミレアナさん。俺たち、もう少し討伐系以外の依頼を受けて準備を整えてからダンジョンに潜った方が良いっすかね」
学術都市手にはモンスターの討伐や素材集め、薬草などの採集依頼以外にも街中で行う依頼が多い。
そのため、命を危険に晒すことなくお金を稼ぐことができる。
ただし……報酬金は決して高くない。
「お金を貯めて装備を充実させたいのであれば、そうした方が良いかもしれませんね。ただ、実戦の感覚を忘れるのは良くないので、三日か四日のうち、一日はダンジョンに潜るか森の外でモンスターと戦った方が良いと思います」
装備をもう少し整える。
それは確かに重要だが、いざ装備を整えて実戦に挑むとなった時に感覚を忘れてしまっていては話にならない。
「その……夢中であんまり覚えてない、です」
慣れた方が良いことであっても、一人で立ち向かうには勇気がいる相手だった。
「そうですか。しかしクレアラは今、一人の力でゴブリンを倒しました。つまり、魔法を使わずともモンスターに勝ったのです」
魔法をメインで戦う者たちが思いがちなのだが、長所を伸ばすのは悪いことではない。
だが、短所を放っておけばいつか後悔する。
冒険者はいつか死ぬかもしれないと元から分かっていても、実際にその時が訪れるまで実感が湧かない。
魔法メインで戦う者が体を鍛えるのが苦手な様に、武器をメインで戦う者も頭を鍛えるのは苦手な傾向にある。
しかしそれは放っておいて良い理由にはならない。
「ただ、まだ少し慣れていない部分がありますので、手頃な相手が見つかればもう一度一人で倒してみましょう」
「は、はい!!」
クレアラの目には先程までの怯えはなく、今度も絶対に勝つという強い意志を秘めていた。
なるべくモンスターと遭遇するように気配感知を絶やさず動き、ミレアナはアドバイスをしながら後ろで静観。
数が多くなければバータたちだけで倒せるモンスターが多いので、ミレアナの出番は殆どない。
ただ、偶に三人だけでは処理できないモンスターの群れが現れる。
「あれはちょっと数が多いですね」
先程クレアラが倒しゴブリン。
数は十体と、バータたちだけで相手をするには数が多い。
ただ、実戦相手には丁度良い敵なので、七体程ウィンドアローを使って瞬殺。
いきなり多くの仲間を殺されたことにオロオロし始めるが、その隙にバータが果敢に攻める。
しかし三体の内、一体がフィーネとクレアラに狙いを定めた。
ゴブリンの手には短剣が握られており、ただの短剣だが二人にとっては刺さりどころが悪ければ致命傷になる。
「ふっ!!」
一撃で倒すのではなく、動きを鈍らせるための一撃を放つ。
放たれた矢はわき腹に命中し、地面に膝を付く。
「やっ!!!」
手に幾つもの石を握り、なるべく当たる様に全力投球。
クレアラが放った石で殺すことは不可能だが、ゴブリンにガードさせるという動きを行わせることに成功。
頭をガードしていた腕が降りた瞬間を狙ってもう一度矢を放ち、ヘッドショット成功。
「おら!!!!」
バータの方も二体を仕留めることに成功し、魔石を回収する。
「数体ぐらいであれば慣れてきましたね」
「そ、そうっすね」
敵の強さは気を抜けばやられてしまう可能性はあるが、心底恐ろしいと感じるモンスターとは戦っていない。
しかしミレアナが気配感知を使って直ぐにモンスターを発見するので、普通の探索と比べて一日の戦闘回数が圧倒的に多い。
勿論休息をしっかり挟んでいるが、それでも徐々に体力が切れてきた。
「……丁度良い時間ですし、そろそろ夕食にしましょうか」
一階層で倒したモンスターの中には肉が食べられるものあり、夕食の分として取ってある。
枝などを拾って火をつけ、料理開始。
とはいっても、本日は三人の教育がメインなので、ミレアナの収納袋に入っている食材は使わない。
(まぁ、こんなものですよね)
普段は野営時であっても、もっと豪華な食事を食べている。
しかしルーキーで野営中の食事の為に調味料を買う者はいない。
今日はミレアナが多くのモンスターを発見したという事もあり、ギルドで買い取ってもらえる素材や魔石を多くゲットできた。
少し懐が温かくなった三人だが、油断して贅沢は出来ない。
低ラックのモンスターが相手であっても、油断すればやられてしまう可能性がある。
つまり、まだ安定して稼げるとは言えないのだ。
「……ミレアナさん。俺たち、もう少し討伐系以外の依頼を受けて準備を整えてからダンジョンに潜った方が良いっすかね」
学術都市手にはモンスターの討伐や素材集め、薬草などの採集依頼以外にも街中で行う依頼が多い。
そのため、命を危険に晒すことなくお金を稼ぐことができる。
ただし……報酬金は決して高くない。
「お金を貯めて装備を充実させたいのであれば、そうした方が良いかもしれませんね。ただ、実戦の感覚を忘れるのは良くないので、三日か四日のうち、一日はダンジョンに潜るか森の外でモンスターと戦った方が良いと思います」
装備をもう少し整える。
それは確かに重要だが、いざ装備を整えて実戦に挑むとなった時に感覚を忘れてしまっていては話にならない。
79
お気に入りに追加
4,752
あなたにおすすめの小説
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
どこかで見たような異世界物語
PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。
飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。
互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。
これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる