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五百四十三話 思春期の最高潮

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「ここが今日、ソウスケ君たちの教え子になる生徒たちがいるSクラスだ」

「Sクラス……実力もSランクってことか?」

「学生にしては、って話だよ。三人に比べればケツに殻が付いたひよっこと変わらないよ」

「まぁ……俺らと比べるのは酷だろうな」

「さっ、とりあえず入ってくれ」

ダイアスが勢い良く扉を開け、ソウスケたちは後ろに続いて教室の中に入る。

教室の席は段々になっており、主に大学内にある教室に似ている。
そして様々なタイプの生徒がダイアスの後ろから入ってきた三人を見て軽く驚く。

(自信に満ち溢れた奴、一般的な雰囲気の生徒、ちょっと弱気な生徒……当たり前だけど、色んな種類の生徒がいるな)

見た目が違ければ、雰囲気も違う。
だが、多くの生徒たちには共通点があった。

ミレアナの美しさに見惚れ、ザハークの厳つさに後退り……ソウスケの見た目を侮る。

(まっ、俺に対する第一印象なんてそんなもんだよな)

その印象が数十分も経てば変わるので、特に雰囲気を変えずに全体を見渡す。

「おはよう、皆。今日は先日言っていた通り、外部の講師を呼んだ。何人かは既に知っている者もいるけどな」

その知っている何人かの内、数名の表情が苦くなる。

(おいおい、まだ俺に恨み……というか、嫉妬的な感情でも抱いてるのか?)

正解。

ソウスケとしては、手に入れた力はかなり特殊な流れで得たものなので、そういう対象にはカウントしてほしくないと思っているが、事情を知らない彼らにとっては関係無い。

「それじゃ、バトンタッチだ」

(えっ、早くない?)

心の中でツッコミを入れつつも、バトンを受け取る。

「えぇ……どうも、ソウスケです。今日から君たちの臨時教師になる者だ」

生徒たちはソウスケと比べてだいたい三つ歳上だが、教師と生徒という立場なので一応タメ口で話す。

「ミレアナです。見ての通りエルフです、よろしくお願いします」

「ザハーク。鬼人族に見えるかもしれないが、これでもオーガだ。お前らにとっては珍しい存在だと思うが、よろしく」

ザハークの説明を聞き、生徒たちがどよめきだす。
だが、そのざわめきを掻き消すように一人の生徒が手を上げた。

「どうぞ」

「失礼ですが、あなたのランクはいくつですか? 見たところ……私たちよりも年齢が下のように思えますが」

あなたに教わることなど特にない。
そう言いたいという思いが目に現れていた。

(オブラートに包んでいるつもりだろうけど、目にはお前みたいな子供が私たちの教師役が務まる訳ないだろって意志がハッキリと宿ってるよ)

女子生徒からの質問に対し、誤魔化すことがなければ嘘を付くことなく答えた。

「ランクはEだ。年齢はお前たちが想っている通り、歳下だ」

ソウスケの言葉を聞いた瞬間、大勢の生徒たちがブーイングを浴びせようとしたタイミングで言葉を被せる。

「因みに!!! ミレアナもランクEだ。そのミレアナからの授業も……お前らは断るつもりなのか?」

生徒たちは一気に言葉を喉に詰まらせた。

「それと、ザハークはミレアナの従魔じゃなくて俺の従魔だ。な、ザハーク」

「あぁ、その通りだ。俺はソウスケさんの従魔だ」

突き付けられた事実に対し、生徒たちは全く反論出来なくなってしまった。

モンスターを従魔にするには、親和性や個人の才能……それか実力によってテイムが成功するか否かが決まる。
目の前の人の言葉を喋り、知性を持つオーガがソウスケのテイマーとしての才能によって従魔になったとは考え辛い。

「まだお前らが俺みたいな歳下が教師になることにたいし怒りや不満を抱いているのは、表情を見れば丸分かりだ。だから……今日はお前たちの間違った視方とプライドを粉々にへし折ってやろうと思う」

生徒たちから一斉に怒気が溢れた。
中には殺気をも撒き散らしている者もいた。

(おうおう、流石思春期の最高潮なタイミング。軽い挑発であっさりと沸点がマックスまで上がったみたいだな)

ただ、ソウスケに嘗めた態度を取れば……心の底から信頼しているミレアナとザハークからの厳しい視線が飛んで来る。

「「「「「「ッ!!!!」」」」」

今まで感じたことがない冷酷な視線に全員が気圧された。
その事実に唇をかみしめる生徒もいたが、その辺は無視して声を掛ける。

「お前らの為にダイアスが訓練場の使用許可を取っている。直ぐに移動するぞ」

「よし、お前ら! これから楽しい楽しい模擬戦の時間だ。速足で付いて来いよ」

一人でテンションが高いダイアスが教室から出て行き、ソウスケもその後に付いて行った。
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