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五百十一話 それだけを使って降りる

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「……ここも人が多いな」

「中級用ダンジョンの前だからか、初心者用のダンジョン前と比べると人や店も多いな」

「初級者用、中級者用、上級者用って比べると比較的人口が多い中級者向けのダンジョンに人が集まるのかもな」

ソウスケの考える通り、ある程度の素材や魔石に財宝を手に入れるとなると、中級者向けのダンジョンが割に合う。
上級者向けのダンジョンの前にもある程度の人が集まっているが、中級者向けのダンジョン前と比べると少々少ない。

「とりあえずザハーク、いつも通り頼む」

「任された」

徐々にダンジョンの前へと近づいていくソウスケ達。
そして当然の様に一目で強いと解らせる実力を持つミレアナとザハークと、一時的にパーティーを組みたいと考える同業者達が寄ってくる。

勿論というか悲しいというか、そういった者達の目にはソウスケは入っていない。
おまけか荷物持ち程度にしか考えていない。

そういった連中に心底苛立ちを感じているミレアナとザハーク。
他の同業者達と一時的にとはいえパーティーを組む気は全くないので、ザハークが周囲に向かって戦意を撒き散らす。

「ッ!!!」

「ま、また今度にした方が良さそうだな」

「なんか機嫌が悪いな……あのチビがなにかやらかしたのか?」

一人の冒険者が余計ない一言を呟いたせいで、ザハークから戦意だけではなく敵意までもが少々漏れてしまった。

既に違う方向に向いていた男だが、ザハークの敵意を感じて背筋が凍る錯覚を得た。

「ザハーク、戦意を漏らすのは良いけど敵意はあんまり漏らすなよ」

「……見当外れな発言をしていた奴がいたから苛立ってな。次からは気を付けるとしよう。抑えられるかどうかは分からないけど」

「はっはっは、あんまり同業者をビビらせるなよ。それミレアナ……さっきみたいな鋭い氷みたいな敵意もやめてやれって」

「申し訳ありませんが、ザハークと同じ考えです」

ミレアナは敵意を出して周囲を威嚇していなかったが、ソウスケを侮辱するような言葉が聞こえた瞬間に氷矢のような殺気を特定の人物に向かって放っていた。

(ザハークの敵意が太く棘が付いている破城槌だとすれば、ミレアナの敵意は刺されば対象を凍てつかせる氷矢……うん、やっぱり二人はエグイよな)

いつも通り同業者に対して少々切れ気味な二人をなだめるソウスケだが、実際なところ本人もキレた時の敵意や殺気の濃度は半端では無い。

弱く、実戦経験が少ない相手では失禁して戦いにならない。
意識的にやってそれが起こる可能性が高いのだ……本能的に全快の殺意や敵が溢れ出した場合、中堅どころの戦闘職でも足が竦んでしまうかもしれない。

そして結局三人に声を掛けようとする冒険者達はいなくなり、スムーズに中へと入ることが出来た。

「う~~~ん……この感じ、やっぱり初心者向けのダンジョンと比べてちょっと緊張感が違うね」

「ここではまだまだ満足出来なさそうだが、降りれば楽しめそうな敵に出会える予感がする」

「ニ十階層辺りに降りればそれなりのモンスターに遭遇出来るかもしれませんね」

一階層から十階層は平凡な草原……だが、初心者向けのダンジョンと比べればソウスケの言葉通り、僅かに緊張感が違う。

この十階層の間で油断して調子に乗り、痛手を負ってしまう者が偶にいる。
それはDランクになりたてのルーキーによく当てはまるのだが……三人は正直いって、この間の階層では遊んでいた。

「うし、良い感じに命中したな」

「むぅ……流石のコントロールだな。俺はその辺りが少々大雑把になってしまう。ミレアナも良くあんなに綺麗に投げられるな」

「その辺りが私の長所なので。ただ、パワー足りないので長距離の投擲で威力を保つには二人の方が有利ですよ」

三人は主に落ちている石ころ、もしくは土魔法で生み出した塊を使ってぶん投げ、遠く離れた位置にいるモンスターを倒していた。

勿論、襲い掛かってくるモンスターたち相手にも投擲だけで相手をしていた。

偶にすれ違う冒険者たちは何をしているんだと呆れた目で見る者もいたが、その威力を見た途端に驚き過ぎて目が飛び出しそうになる。

そして三人はなんと投擲という武器だけを使用して一階層から十階層までのモンスターを倒し、ボス部屋の前まで降りてしまった。
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