上 下
471 / 1,129

四百五十話 この世界でも需要があるブランド

しおりを挟む
(珍しいモンスター、ですか。ザハークが喜びそうな対象ですね)

女学生達と別れた後、ミレアナはお願いされた護衛依頼の内容について考えていた。

(ルージュバード自体はそこまで珍しいモンスターでは無い。おそらく数日の間に見つけられる筈。素材に関しても難無く手に入るでしょう)

三人の実力を考えればCランクのモンスターなど容易に倒せる。
なのでミレアナとしては女学生達の依頼を受けても良いのではと考えている。

(ザハークとしてはその珍しいモンスターは気になるでしょうし……でも、最終的に決めるのはソウスケさんですからね)

そう、最終的にパーティーの進路を決めるのはソウスケ。
だから女学生達の護衛依頼を受けるのはソウスケの意思次第。

護衛依頼のことを考えながらもミレアナは街中のアクセサリー店を見て回り、夕食時には宿に戻ってソウスケ達と合流する。
そしてソウスケ達に今日起こった出来事を話す。

「……とりあえずそいつら阿呆だな」

「そうですね。とりあえず阿呆かと」

ミレアナの話を聞いてソウスケは一先ず、女学生達をナンパした冒険者達はアホだと断言した。

(そもそも冒険者が貴族をナンパするって時点で馬鹿だなよな。最悪その場で攻撃されるかもしれないのに……いや、逆ギレすればそれは冒険者も一緒か)

どちらも沸点が振り切ってしまったら手が出てしまうのは確実。
ただ、男のソウスケからすれば阿呆だとは思うが、男達の気持ちが解からない訳ではない。

(まぁ、女学生にナンパしてしまうのはしょうがない、のか? やっぱりこの世界でも学生ってのはブランドなのかもな。でも、学生ってのは大半が貴族な訳だから普通は警戒するもんだと思うんだが……自身の性には逆らえないってところか)

「……うんうんと頷かれてますが、どうしたんですか?」

「いや、なんでもない。やっぱり馬鹿だなと思っただけだ。女学生の方も少しは警戒した方が良いと思ったけどな」

「私もそう思ったので一応忠告しておきました。ナンパしていた三人の冒険者はそれなりに動ける者達だったので」

「そうか、それならいくら貴族の令嬢とはいっても後れを取る可能性大だな」

戦闘のエリート教育を受ける貴族の子息と令嬢、そして冒険者の違いなにか。
それは命を賭けた実戦の経験数。
模擬戦の数であれば子息や令嬢達の方が多いかもしれない。

ただ、本当に命を賭けた戦いに関しては圧倒的に少ない。
それは何故なのか? 簡単に言えばそれだけ大切扱われているからだ。
その差は実戦で大きく発揮され、大抵はその差に驚く貴族は多い。

一部の子息や令嬢は自ら実践に出て死線を超えようとする者もいるが、それはそこそこ例外だ。
そして今日ミレアナがであった三人の女学生はその例外には当てはまらない。

「そんで、その女学生達を助けた後に護衛依頼を出されたって訳か」

「そうです。学園からの依頼らしいですよ。成功すれば成績が上がるらしいです」

「……ま、あるあるな依頼という課題というか。にしても珍しいモンスター、ねぇ……ミレアナは本当にそのモンスターがいると思うか?」

ソウスケは別に女学生達の依頼を受けても構わないと思っていた。
ただ、依頼を受けるならばやはりその珍しいモンスターに会ってみたいというのが本音だ。

護衛依頼で貰える金より珍しいモンスター。そちらの方が断然気になる。

(火山付近に生息するモンスターで珍しい……いったいどんなモンスターなんだろうな。あんまり想像出来ない)

初めて遭遇するかもしれないモンスターに少々ワクワクするソウスケ。
だが、まだ完全に遭遇すると決まった訳では無い。

「そうですねぇ……もしかしたら、いるのではと思っています」

「その根拠は?」

ミレアナらしからぬ曖昧な答えにソウスケは首を傾げる。

「街中で歩いている冒険者の方が多かったのです。なのでもしかしたらその珍しいモンスターの存在を聞きつけ、この街にやって来たのではと」

「なるほどねぇ……納得できなくはない理由だな」

確かにソウスケも少々冒険者の数が多いなとは思っていた。

(一般的な地域では遭遇しないモンスターの素材が手に入るからかと思っていたが、もしかしたらそういった理由があって数が多いのかもな……受けてみても良いかもな)
しおりを挟む
感想 251

あなたにおすすめの小説

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二 その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。 侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。 裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。 そこで先天性スキル、糸を手に入れた。 だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。 「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」 少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

男装の皇族姫

shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。 領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。 しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。 だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。 そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。 なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。

異世界転移でのちに大陸最強の1人となった魔剣士 ~歌姫の剣と呼ばれし男~

ひぃ~ろ
ファンタジー
とある過疎化の進んだ地区で地方公務員として働いていた 橘 星那 《たちばな せな》高卒30歳独身、彼女無しが近くに住んでいた祖父の家に呼ばれ 蔵の整理をしたところ大きく古びた櫃のようなものを開けるとその中に吸い込まれてしまい きづいた時には見慣れぬ景色の世界、異世界へと飛ばされていた そこで数々の人々と出会い 運命の人に出会い のちにナンバーズと呼ばれる 大陸最強の13人の一人として名をはせる男のお話・・・・です ※ おかげさまで気づけばお気に入り6、000を超えておりました。読んでいただいてる方々には心から感謝申し上げます。  作者思いつきでダラダラ書いておりますので、設定の甘さもありますし、更新日時も不定、誤字脱字並びにつじつまの合わないことなど多々ある作品です。  ですので、そのような駄作は気に入らない、または目について気になってしょうがないという方は、読まなかったことにしていただき、このような駄作とそれを書いている作者のことはお忘れください。  また、それでも気にせず楽しんで読んでいただける方がおられれば幸いとおもっております。  今後も自分が楽しく更新していけて少しでも読んで下さった方が楽しんでいただければと思います。

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

処理中です...