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三百六十九話 見た目に差は無いが
しおりを挟む「ここら辺が殆ど武器や防具、アクセサリーを売っている一帯か」
アインドの街中では至る所に武器や防具を売る店が存在するが、その中でも同じ職の人間や高ランクの冒険者から認められた職人しか店を出せない一帯がある。
「大通りと比べてそれほど活気があるって訳じゃ無いけど、それでもある程度の賑やかさがあるな」
そして何より道を歩く者の実力が高い。
(特に鑑定しなくても雑魚じゃないってのは解る。あっ、でも実力違いの阿呆はいるみたいだな)
おそらく貴族の子息であろう子供が護衛と共に歩いており、その子供が持っている武器は明らかに不釣り合いな得物。
(しっかりと鑑定を使わないと実力は解らんが、それでも現時点で特別な才能がある様には見えない)
鑑定を使って調べれば疑問が解けるかもしれない。
しかしそんな事をしたとバレ、面倒な因縁を付けられるのは勘弁。
なのでソウスケは気にせず素通りして興味を引いた店へと入った。
(・・・・・・武器のレベルに差があるな。弟子が作った武器も売ってるって事か?)
同じ者が造ったとは思えない程にその差はあるが、見た目にそこまでの差は無い。
(外見より中身を重視した人なのかもしれないな)
「お兄さん、何かお探しですか?」
「いや、ちょっと興味を惹かれたんで入っただけだよ」
十歳ほどの少女に話しかけられ、ソウスケは特に隠すことなく伝える。
(随分と小さい店員さんだな。もしかしてこの店の店長の娘さんかな?)
親の仕事を子が手伝うのはなんら不思議な事では無い。
「そうですか。お兄さんは冒険者になられたばかりですか?」
「あぁ、そうだよ。冒険者になってまだ一年も経ってないルーキーだ」
「へっ? それは・・・・・・流石に嘘ですよね?」
確かに冒険者になったばかりのルーキーに見えた。
しかしそれでも娘の目からは数年は冒険者として経験を積んでいる様にも見えていた。
娘はまだ成人していないが、それでも店内で接客業をしているので今まで多くの冒険者を見てきたのだが、ソウスケの纏う雰囲気は明らかにベテランかそれ以上のもの。
(このお兄さん、何者なんだろう? 貴族の子息って見た目じゃないし・・・・・・もしかして両親が高ランクの冒険者とかかな?)
ソウスケの素性が気になる娘の目に一本の剣が映った。
「お兄さん、もしよ良かったらなんですが、その剣を見せて貰っても良いですか?」
「こいつか? 別に良いけど、怪我しないようにな」
目の前の少女が盗人の様には見えないのでソウスケは娘にグラディウスを渡す。
そしてソウスケが店内を見回っている間、娘はグラディウスをじっくりと眺めていた。
(このグラディウス、いったいどんな素材を使って造られたんだろう。絶対にCランク以上のモンスターの牙や爪を使って造られと思うんだけど・・・・・・もしかしてあのお兄さん、無茶苦茶強いのかな?)
纏っている雰囲気から貴族には見えないが、それでも確かな実力を持っている様に視える。
「あの、これに使われた素材って教えて貰ったりできますか!!」
「えっ? いや、まぁ・・・・・・いいか。こいつには、コボルトキングの素材が使われてるんだ。偶々見つけることが出来て倒せたんだよ」
「ッ!!!!!」
予想以上のビックネームが出たことで、大声で驚きそうになった娘は咄嗟に口を手で覆った。
客の情報を他者にバラすような真似をしてはならない。
鍛冶師である父親から教わった事を守るために娘は驚いて声を思わず口に出そうになったら手で覆う。
その行動が染みついていた故に、ソウスケの秘密を他者にバラしてしまわずに済んだ。
(この人・・・・・・本当に何者なの?)
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