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三百六十一話 冒険者の中には中々いない

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「本当に鑑定スキルって役に立つな」

今回の採掘ではそこまで高価な鉱石を見つけることは出来なかったが、それでも上出来な結果と言えた。

ソウスケは採掘場所を探す時には必ず鑑定を使っていたため、無駄な採掘を行う事は無かった。
しかし採掘場所を探している途中に何度も他の冒険者や採掘専門の者が無駄な場所で採掘を行っているのを見たが、下手に声を掛ける事無くスルーした。

(鑑定のスキルは持っていても、別に採掘のプロって訳じゃ無いから下手に口を出せば面倒な事になりそうだよな。それに、逆に俺の言葉を信じた人がいれば、それはそれで面倒な噂が広まるかもしれない。鉱石は欲しいが、ずっとここに居たい訳じゃ無いからな)

冒険者や採掘専門の者の中にソウスケ程レベルが高い鑑定をスキルを持っている者はいない為、ソウスケと同じような鉱石の探し方は出来ない。

そこまで高い鑑定能力を持っていれば貴族に雇われているか、商人として稼いでいる。

「ソウスケさんほどオールマイティーな能力を持っていて、そこまでお金に興味が無く刺激を求める様な冒険者はいませんからね」

「いや、別に金に興味が無いって訳じゃ無いからな。お金が無かったら出来ない事なんて大量にあるんだし」

直ぐにパッと思い付いたのは美味い飯。
モンスターの肉は種族によっては癖があって美味しいと感じない肉もあるが、基本的にはランクが上がれば素の美味しさは上がる。

しかしそこに料理スキルを持つ料理人が他の食材と合わせて手を加えれば更に味のレベルが格段に上がる。
ソウスケはこの世界にはまだない調理方法を多少は知っているが、それでも料理を極めるつもりは無いのでランクの高い料理を食べたいのならば金を払って高級レストランの料理を食べるしかない。

「鉱石に関しても、金を払わなかったら得られない物だってあるかもしれないしな」

「そうですね。鉱石を採掘する人達ソウスケさんの様に自身で使う事はほぼ無いですからね。買わなければ量が得られない鉱石もあるでしょう」

「そういう事だ。んで、ザハークも一緒に鍛冶をやってみるんだよな」

「あぁ。ミレアナは錬金術を趣味にしている様だからな。俺も何か趣味があっても良いかと思い、目の前に丁度良い師がいるのだから鍛冶をやろうかと思った」

丁度良い師という言葉にソウスケはザハークが誰のことを言っているのか解らなかったが、ザハークの周囲には自分しか鍛冶スキルを持っている者はいないと確認したところで、高速で左手を左右に振る。

「いやいやいやいやいや、俺は鍛冶スキルを習得してるってだけで実戦経験は殆ど無いペーペーなんだからな。変に期待するなよ」

「だが、知識は完全に頭の中にあるのだろう。ならスキルレベルが五まで達するまでの経験もおそらく体に染み込んでいる筈だ」

そんな事無いだろツッコもうとしたソウスケだったが、神様から得たスキルを初めて使用した時の感覚を思い出す限り、ザハークの話が嘘には思えなかった。

(錬金術なんかザハークの言う通りいくら道具が要らずに造れるタイプだからって、あそこまで最初から失敗せずに造れるのは不自然だよな。って事を考えるとザハークの話は事実かもしれないな)

本来の経験はゼロでも、一般的なランクの武器や防具でも自分なら造れるかもしれない。
そう思ったソウスケは急に鍛冶を行いたい気分が湧き出て来た。

(いや、今はまだ採掘に時間を掛ける時だ。鍛冶をやり始めればあんな武器屋こんな武器を造ってみたいって欲求が出てくるはずだ。そうなった時に必要な鉱石を持っていなかったら萎えるし)

直ぐにでも鍛冶を始めたい気持ちを抑え、ソウスケは採掘依頼の鉄鉱石をギルド職員に渡し、初めて採掘記念日として少しお高いレストランへと向かった。
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