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三百四十四話 売らない魔道具

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「ところで、あんた達は何が目的でダンジョンに潜ってるんだい? やっぱり最下層のボスのパラデットスコーピオンか?」

「はい。一応少し前に挑んだんですけど中にいたのはパラデットスコーピオンの上位種だったんですよ。なので」

「なに!!?? もしかしてあの上位種を三人で倒したっていのうかい!!!???」

「そ、そうですね。三人で全力を出して倒す事が出来ましたよ。殆ど息つく暇も無かったといった感じでしたけど」

少し前に挑んだですけど。この言葉の後に続く言葉は「倒す事が出来ずに一旦地上に戻った」だとマムは思っていた。
ソウスケ達は個の力は確かに飛び抜けている。三人で戦っているところを見た訳では無いから連携に関しては何とも言えないが、ボロボロだとは思えなかった。

だが通常のパラデットスコーピオンでさえ、この街の冒険者や騎士達は三人で挑もうなど命知らずな事はしない。
戦い慣れている上位数パーセントの冒険者なら四人から五人で戦えない事も無いが、それでもしっかりと準備をしての話だ。

そして相手がパラデットスコーピオンの上位種だと話が更に変わる。

(息つく暇が無い、そりゃそうだろうね。私も本当に若い頃に何度か戦った事はあるけど、ありゃ上位種自体が何もせずとも市のイメージをばら撒いている様なもんさ。あれを初見で感じて更に誰も死なずに倒すとは・・・・・・本当にぶっ飛んだ子達だね)

パラデットスコーピオンの上位種との戦いでマムの戦友と呼べる仲間たちのうち、何人かはあの世に行ってしまった。
マムは偶に自分の事情を知る冒険者と潜る事はある。ボス戦ともなれば報酬を払うから一緒に戦って欲しいと依頼される事も多々あるが、その際には必ず一瞬で地上に戻れる帰還石を用意している。

そしてそれは同行する冒険者にも各自一つは絶対に持っているのかを確認する。

それ程までに慎重になって相手をしなければならない程にパラデットスコーピオンは厄介なモンスター。それがマムの認識だった。

「ただ、最下層に着くまでに結構良い魔道具を手に入れたんですよ。そのお陰で倒しやすくなったってのもあると思います」

「ほほぅ、なるほどねぇ。パラデットスコーピオンの討伐に役立つ魔道具と言えばインセクトキラーの効果が付いた武器だね。そりゃ確かに役立つよ。私が使っているこの短剣にもその効果が付与されているからね」

昆虫系のモンスターが多く生息するダンジョンな為、宝箱で手に入れた魔道具を売る事が多い冒険者だが、インセクトキラーの効果が付与されている魔道具はあまり売ろうとはしない。

「さて、私は解体を始めるとするよ。パラデットスコーピオンの上位種を倒したんならそいつ以上に強いモンスターはいないだろうけど、気を付けて進むんだよ」

「はい!! マムさんもお一人なんですからうっかり奇襲を受けないように気を付けてくださいよ」

「はっはっは、そうさね。一応気を付けておくよ」

マムを別れて探索を続けるソウスケは一つの疑問が浮かんだ。

「なぁ、俺達が戦ったパラデットスコーピオンの上位種と上層の山奥で出会ったブロッサムドラゴンとどっちが強いと思う」

ソウスケからの突然の問いに二人は十秒程じっくりと考えて答えを出す。

「ブロッサムドラゴンがどれほどの戦闘力を持っているのかは分かりません。ただやはり竜種は食物連鎖のトップに立つ種族なので、死合となった場合には最終的にブロッサムドラゴンの勝利に終わるのではないでしょうか?」

「ミレアナの言う事も一理ある。ただ俺はパラデットスコーピオンの上位種の方が手数が多く、その攻撃には殆ど状態異常が含まれている。いくら竜種とはいえ、侮れる有害物質では無い。それにブロッサムドラゴンに実力があったとしても、あの山奥に籠っていたら実戦の経験が皆無に等しい筈だ」

ザハークの見解にそれは確かにそうだと二人はウンウンと頷く。

「それは生まれたばかりのパラデットスコーピオンの上位種の方も同じかもしれないが、それでも獰猛さ等も含めれば結果パラデットスコーピオンの勝ちだと俺は思う」

「なるほどな。確かにあの山奥に生息しているブロッサムドラゴンに関してだけ言えば、実戦経験は殆ど無いのは確かか」

ただ、やはり追い詰められた竜種がどういった反応は見せるのか、それが読めないと思ったソウスケは結局自身の結論は出なかった。
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