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三百二十一話 ちょっとズルをして

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ルーレットを始めたソウスケ。
ディーラーはソウスケが初心者ということもあって丁寧にチップを置く場所や会った場合に得られる倍数を教える。

ある程度ルールを覚えたソウスケは早速ルーレットを始める。
始めは赤か黒か、奇数か偶数か、一から十八と十九から三十六のどちらか。まずは勝った場合に二倍のチップが返って来る場所を選んで軽く遊ぶ。

隣にいるザハークは席に座った時は他の客が椅子から転げ落ちる程驚いていたが、ディーラーが何事も無く接しているのを見て安心し、ソウスケ達と楽しんでいる。

ザハークもルーレットの仕組みを理解し、ソウスケと全て同じタイミングではないが、勝てると思った時に賭けている。

そうしてルーレットで遊ぶ事十回。
ソウスケのチップは最初の量から三分の二ほど増え、ザハークは二倍近くに増えていた。

因みにソウスケの元々持っていたチップは現金に換算すると金貨一枚。
日本円にして百万程。

それが一時間もしない内に六十万弱、ザハークは九十万弱ほど増えていた。
途中から参戦していたジーラスとバルスも結果的には増えている。

(まだ十分も遊んでいないのに六十万・・・・・・俺が調子に乗っていないからってのもあるだろうけど、ここまで簡単に稼げるとはな。確かにギャンブル中毒になる奴が出ても可笑しくない、か)

自分は大量に金を持っているからそうはならない。なんて考えは捨てた方が良いとソウスケは決めた。

「あんまりドバっと一気に賭けないんだな」

「つい十分程前に初めてスーパーど素人ですからね。金に余裕があるとは言っても、最初にチップに変えた分だけしか使うつもりはありませんよ」

「良い作戦だな。そういうルールを決めておけば必要以上に金を失う事は無いからな。まっ、それを出来ずに懐をスッカラカンにする奴はしょっちゅういるけどな」

バルスの話を聞いた同じテーブルに座っている客たちはその通りだと言わんばかりに頷く者や、過去に同じ内容をやらかし、苦笑いしている者もいる。

「というか、ザハークはソウスケよりチップの量が増えているな」

「俺と置く場所は一緒だけど、回数は違うんだよな」

「・・・・・・ただ単に直感で決めています」

その直感は中々侮れず、勝率はソウスケより高い。

「どうする? もう少しルーレットを楽しむか?」

「はい。もうちょっと冒険してみます」

ベットする金額を増やし、チップを置く場所を縦一列や横四列かのどこかに置く。

「さて、ドキドキさせて貰おうか」

短時間で金が増える嬉しさというのは解る。
ただ、この結果が出るまでのドキドキ感が楽しいという感覚も解らなくはない。

(さて、ちょっと楽しくなって来た。賭ける額と場所を変えたいが、大きく減ってしまったら他のゲームが出来なくなってしまうからな)

ここでゼルートは少しズルを行った。
しかしそのズルもギャンブルの中では完全なチートと言う訳では無い。

それでもソウスケの所持チップは確実に増えていき・・・・・・結果、元々持っていたチップの三倍弱まで膨れ上がった。

勿論全戦全勝では無い。しかしソウスケがここぞとばかり大金を賭けた時は殆どが勝利していた。
一見ズルをしているようにも見えず、大金を賭けた時に全て勝っている訳では無いのでディーラーもソウスケがあるスキルを発動しているとは思っていない。

(スキル、幸運。レベルは決して高くない。基本的には常時発動スキルだが、意識的にオンとオフが出来る。初めてオンにして使ってみたが、今の俺には丁度良いレベル幸運だな)

決して疑われない程度に舞い降りる幸運。
しかもオンとオフが出来る為、怪しまれそうな状況になれば直ぐのオフにして自身の運と実力だけの状態に戻る。

一先ず軍資金を増やせたところでソウスケは次のゲームへと移る。
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