上 下
285 / 1,135

二百八十四話多く見て来た者

しおりを挟む
訓練場へやって来たソウスケと男は訓練場で摸擬戦や素振り、魔法や弓を使った的当てをしている冒険者達を眺める。

(・・・・・・基本的には若い冒険者が殆どだな。それ以外の人もある程度歳がいってる冒険者。その冒険者も自分の為に訓練をしてるんじゃなく若い奴らの為に指導をしているって感じだ)

訓練している冒険者、指導している冒険者を見る限り特別強い冒険者はいないとソウスケは感じた。

「君も混ざらないか」

「遠慮します。眺めているだけで十分です」

どのレベルの冒険者がどういった技量を持つのか、それが分れば儲け物。
そう思うソウスケだが、自身の訓練をこの場で行わないのは少し前に宿で自分達をダンジョンへ一緒に行かないかと誘って来たパーティーメンバーがいたからだった。

(ジーラスさんがいたからあの時は何事も無く済んだ。でも向こうは俺達に良い感情は持っていない。それは絶対だ。リーダーの奴が俺に阿呆みたいな挑発をしてくるようなDQNみたいな性格をしているとは思えないが・・・・・・あまり顔を合わせたくないのは事実だ)

しかもメンバー全員がこの訓練場に揃っている。前回ぱっと見て仲間も面倒な性格をしているとソウスケは感じなかったが、それでも少し面倒事な予感がしない訳では無い。

「・・・・・・ふふ。目の前の訓練光景を見ていてもやはり退屈かい?」

「なんでそう思うんですか?」

質問を質問で返すのは良くないと思いつつも即答で返す。
ソウスケとしてはこの会話も唯の暇つぶしでしかない。

「一見敬語を使えて後輩として接しているように見えるけど、冒険者歴が無い僕よりおそらくまだ冒険者になってそこまで月日が経っていない君の態度は余りにも堂々としている。理由が僕より圧倒的な人物、又はモンスターと対峙した事があるから。そしての線を超えて今に至る」

「・・・・・・俺の態度ってそんな解りやすいですか?」

「そんな事は無いと思うよ。大概の冒険者は君の礼儀正しい態度に対して気分を良くするだろう。冒険者になる多くの者は言葉遣いなんて学ばないからね。でも目ざとい・・・・・・というよりは多くの人種を見て来た者にとっては少し解りやすい態度かもしれないね。正確な実力は解らなくても、並みのルーキーでは無いなと経験から感じてしまうよ」

経験と才能が物を言う世界。
その経験も侮れないなと率直に感じたソウスケは目の前の冒険者に多少の交換を持てた。

「あなたはそこら辺の冒険者と違うんですね。ダンジョンの中で多少の冒険者は見てきましたけど、中にはゴミ屑も少々いた。それとは違います」

目の前の男は単純に自分に興味を持って話しかけて来た存在。
勿論そうでない可能性もあるかもしれないが、その時はその時で対処すれば良い話。

ソウスケから多少の好感を得ていた冒険者は後輩の言葉の中に聞き逃してはいけない内容があると理解し、直ぐにそれを確認する。

「ゴミ屑と言うのは・・・・・・そういう者のことなのか?」

「多分想像通りだと思います。他人の才能や努力に来るって道を踏み外れた屑共でした。でも安心してください、しっかりと処分しておいたので。被害も最終的にはゼロです」

「・・・・・・そうか、同僚が迷惑を掛けたみたいだね。そのゴミ共に変わって謝罪させて貰おう」

冒険者とは信頼関係で成り立っている。いくらランクが高くても揉め事を上手く隠蔽している屑もいる。
逆にランクは低くてもしっかりとした人格者もいる。

なので要らないと言われても男はソウスケに謝罪したいと思っている。
その思いとは別に、男はソウスケに既に人殺しの経験があることに内心驚いていた。

「受け取っておきます。それで・・・・・・こちらに向かって来ている奴らはこちらに用があるんですかね」

「あぁ、あの子達か。確か冒険者になって二年目ぐらいだけどルーキーの中では中々優秀な面子だと僕は思ってるよ。運良く冒険者の戦力として必要な能力が各々揃っているしね。そんな彼彼女たちだけど・・・・・・どうやら目線からして君に用があるんじゃないのかな」

予想通り面倒な事が起こりそうなので今すぐ逃げ出したかったが、面倒事は後に回すとよくない。
そんな日本で生活していた時の教訓を無駄にしない為、溜息を吐きながら逃げずにその場に留まった。
しおりを挟む
感想 252

あなたにおすすめの小説

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

処理中です...