上 下
54 / 1,129

五十三話値段やルール

しおりを挟む
ソウスケがピンク色の妄想を膨らませていると、ぎこちない笑みを浮かべた店員がソウスケの所に戻って来た。

(下手くそな笑顔をするくらいなら、普段の顔で接客しろよ。もの凄く変だぞ)

ソウスケは心の中で、慣れていないのか下手な笑顔を作っている店員に対して、一言ツッコミたかったが人が多い今いる場所でそれを言うのは、流石に可哀想だと思い言葉には出さなかった。

「お、お待たせしました。こちらへどうぞ」

「ああ」

店員に受付まで案内されたソウスケは受付の女性の表情を見て、自分の事をどのように説明したのかもの凄く疑問に思った。

今ソウスケの目の前にいる女性の顔は、営業用の笑顔ではあるがどこか強張った笑顔であり、時間帯が夜という事もあって大して暑くない娼館の中だというのに、顔には男の店員同様に汗がびっしょりと噴出していた。

(・・・・・・もいいや、無視しよ。この店員がなんて言ったか知らないけど、気にしたら負けだ)

「そ、それでは、私はこれで失礼します」

それだけ告げると男の店員は、逃げる様にその場から去って行った。
普通の速度ではなかったので、ソウスケはまさか身体強化のスキルを使ったのかと、普通はあり得ない事を考えた。

そして男の店員が女の受付にソウスケの間違っ情報を伝えた事と、この場から離脱した速度のせいで、女の受付とソウスケの間に気まずい雰囲気が漂っていた。
二人共話を切り出すタイミングが分からないでいた。

(はぁ~~~~、なんでこんな気まずい雰囲気になったんだ? やっぱりあの男のせいか? もしそうなら一発殴っておけば良かったな。いや、それよりこの気まずい雰囲気をどうにかしないとな・・・・・・いや、俺が躊躇う必要は無いか。俺は客としてここに来たんだしな)

自分が遠慮する必要は無いと思い、ソウスケは話を切り出した。

「この娼館での料金や時間ルールについて知りたいんだけど」

「か、かかかかしこまりました!!」

受付の女はソウスケに話しかけられビクッ肩を震わせた後、ワタワタしながらマニュアルが載っているプレートは出した。

「こ、こちらが当店での使用金額、ルールです。ま、まずお客様が相手にされる娼婦についてDからSまでのランクがございます。Dランクが銀貨五枚。Cランクが銀貨二十枚。Bランクが銀貨五十枚。Aランクが銀貨七十枚。Sランクが金貨一枚となっています。この値段は一応の基準なので、選ばれた娼婦によって多少の変動があります」

「娼婦にもランクがあるのか・・・・・・」

娼婦にも冒険者同様にランクがあることを知り、ソウスケは娼婦も競争の世界にいて大変そうだなと思った。

(というか、マジで金額がバカ高いな。まだ時間の事とか聞いてないけど、日本円でDランクが五万円。Cランクが二十万円。Bランクが五十万円。Aランクが七十万円。Sランクが百万円。日本だったらぼったくりもいいところだ。ただ、この世界の冒険者や商人の稼ぎからしたらこれぐらいの値段が妥当なのかもな。いや、冒険者や商人だって大金を得るためにはそれ相応の準備が必要なはずだ。そう考えると・・・・・・やっぱりぼったくりな気がするな)

ソウスケにとってはぼったくりに感じるが、この娼館を利用している客は貴族やそこそこ有名な商人が多く、娼館に来ている冒険者達も基本的にはDランクか、Cランクの娼婦しか抱かないのでソウスケ程ぼったくりと感じてはいない。

「そ、してこの金額は二時間以内を想定した金額になります。二時間以内でご使用する場合でも料金は変わりません。そ、それから延長時間を一時間増やすと、二時間の料金と同じ値段が掛かります。当店のルールとしては過激な行為は禁止しています。も、もし娼婦を傷つけた場合は直ぐに拘束させてもらい衛兵に引き渡します」

娼婦を傷つけた場合、直ぐに逮捕されるという事に対しソウスケはかなり徹底しているなと思い、感心していた。

(バカな客に対しての対応はしっかりと考えているみたいだけど、それが権力を持っている商人や貴族にも該当するのは怪しく感じるけどな)

日本で生活している時にテレビで見た、アホな政治家たちを思い出しながらこの世界の理不尽な力にソウスケは嫌悪を感じたが、今はさして問題ではないので頭の中から切り捨てた。

「内容は分かった。この店で一番良い女を三時間で頼む」

そう言うと、ソウスケはポケットから金貨四枚を取り出し、カウンターに置いた。
しおりを挟む
感想 251

あなたにおすすめの小説

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二 その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。 侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。 裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。 そこで先天性スキル、糸を手に入れた。 だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。 「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」 少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界転移でのちに大陸最強の1人となった魔剣士 ~歌姫の剣と呼ばれし男~

ひぃ~ろ
ファンタジー
とある過疎化の進んだ地区で地方公務員として働いていた 橘 星那 《たちばな せな》高卒30歳独身、彼女無しが近くに住んでいた祖父の家に呼ばれ 蔵の整理をしたところ大きく古びた櫃のようなものを開けるとその中に吸い込まれてしまい きづいた時には見慣れぬ景色の世界、異世界へと飛ばされていた そこで数々の人々と出会い 運命の人に出会い のちにナンバーズと呼ばれる 大陸最強の13人の一人として名をはせる男のお話・・・・です ※ おかげさまで気づけばお気に入り6、000を超えておりました。読んでいただいてる方々には心から感謝申し上げます。  作者思いつきでダラダラ書いておりますので、設定の甘さもありますし、更新日時も不定、誤字脱字並びにつじつまの合わないことなど多々ある作品です。  ですので、そのような駄作は気に入らない、または目について気になってしょうがないという方は、読まなかったことにしていただき、このような駄作とそれを書いている作者のことはお忘れください。  また、それでも気にせず楽しんで読んでいただける方がおられれば幸いとおもっております。  今後も自分が楽しく更新していけて少しでも読んで下さった方が楽しんでいただければと思います。

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
 作家志望くずれの孫請けゲームプログラマ喪女26歳。デスマーチ明けの昼下がり、道路に飛び出した子供をかばってトラックに轢かれ、異世界転生することになった。  課せられた使命は魔王討伐!? 女神様から与えられたチートは、赤ちゃんから何度でもやり直せる「強くてニューゲーム!?」  強敵・災害・謀略・謀殺なんのその! 勝つまでレベリングすれば必ず勝つ!  やり直し系女勇者の長い永い戦いが、今始まる!!  本作の数千年後のお話、『アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~』を連載中です!!  何卒御覧下さいませ!!

処理中です...