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第二章

第58話 強欲の大聖女

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 見事に神託に従ってみせた私へ女神様は褒美として一つ願いを聞き入れてくれると言ってくれた。
 無論、使徒である私の望みは人間になる事だ。

 こうして私は女神からの恩恵を受け、念願の人間になった。
 そして、私は魔術を広めながら名声を高め、やがて私は大聖女と呼ばれるようになった。

 憧れだった人間界での成り上がっていく様は実に愉快で、私に優越感と満足感を与え、無上の快感が私の心を震わせた。

 しかしその快感も慣れてくると物足りなくなった。

 もっと欲しい……

 もっと、もっと、もっと人間界で私は称賛されたい。
 その為に私は人間界にとっての『悪』を作り出した。私にとっての踏み台だ。

 私はシャルナにその役割を充てがった。

 まず、私がやった国滅ぼしの所為をシャルナ、即ち『破滅の魔女』の所為だという事にし、その容姿的特徴としては左右異なる瞳色――『異色瞳オッドアイ』を挙げた。それが魔女の証だと。

 でも、実際にはそれも嘘。
 『異色瞳オッドアイ』は本来は女神の使徒だという証。
 即ち、元は私もシャルナと同じように『異色瞳オッドアイ』を持っていたという事だ。

 さて、そんな嘘で固められた私の言葉だったが、そこは聡明なる大聖女様のお言葉と、瞬く間に『破滅の魔女』の噂は世界中を駆け巡った。

 だが、私の言う事に確証は無く。半信半疑の者も多かった。
 そこで私は自ら作り上げた悪――『破滅の魔女』即ちシャルナの討伐へと赴いた。物証を得て世界に私の言葉が本当だったのだと、証明する為に。
 とはいえ対峙する相手もまた女神様の使徒。端的に言ってシャルナは強い。私とて、それなりの覚悟を決めて挑んだ。

 結果、予想通り私とシャルナの魔法戦は熾烈を極めたが、見事勝利は私の手の元へ納まった。
 
 そして私は『破滅の魔女』討伐の証としてシャルナの首を持ち帰り、人々の前でそれを晒し、実際に『異色瞳オッドアイ』を見せつけ、私の言葉に嘘が無かった事を証明した。まぁ、実際には嘘だらけだけど。

 こうして私は世界を救った英雄として『大聖女イリアス』の名は今尚色褪せる事なく語り継がれている。
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