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14:沼に落ちたなら
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優花は三時間かけて完璧に身支度を整えて、大須に来ていた。
手に持っているのは、握手会の整理券である。
今日は青薔薇のインスト……インストアイベントのトーク&握手会があるのだ。
会場は、V系を専門に扱っているCDショップ。
「わー、結構いるー……」
集合場所には優花と同じように整理券を持った人、メンバーへの手紙やプレゼントを持った人が何人もいる。
そこかしこで「緊張する」「手汗やばい」などという声が聞こえ、心の中で激しく同意する。
なかには、「整理券終わりだって」と、残念そうに言う人もいた。
──昨日のうちに、CD買っておいてよかった。
このインストは、対象の店舗で今月発売したアルバムを買った人が参加できるイベントだ。
会場は、大阪、名古屋、東京の全部で三か所。
この全部に優花は参加する気満々だったのだが、大阪はすでに整理券の配布が終わっていて、参加できなかったのだ。
そんなことを想定していなかったので、驚いたし焦った。
そのため、昨日、名古屋に着くと真っ先に大須に向かい、整理券を手に入れたのだ。
──最近はインストに行くほど好きなバンドなかったから、忘れてたわ……。
前回の人生の時も、インストの整理券の入手は大変だった。
だいたい、CDショップなどで行われるインスト。
CDを一枚買うと、整理券が一枚もらえて参加できる。
青薔薇のインストは、トーク&握手会が定番だ。
整理券の配布は、CDショップごとにルールが違っている。
ちゃんと調べていないと、優花みたいに痛い目にあうのだ。
直接、買いに行かないといけない店がほとんどだが、なかには電話予約や振込みの先払いなどで、整理券を取り置きしてくれる店もある。
今回の大阪の会場は電話予約OKの店で、すでに予約分で整理券の配布は終了していた。
油断とリサーチ不足による、惨敗である。
会場である店内に入ると、入場順で前から順番に客席を埋めていく。スタッフがきちんと見張っているので、場所の移動はNGだ。
ライブとは違い、自分で場所を選べないので、好きなメンバーの前で見れるかは運である。
優花は後ろから二列目の上手側になった。
──あっ! これ、見えないやつだ。
インストあるあるなのだが……会場は普通のCD屋さんの店内だ。
CDが置いてあった棚などを移動して、店内にスペースを作る。
そこに仮設のステージを置いてのイベントとなる。
ライブハウスのように見やすさなんてものは計算されておらず、後ろの方は見えないのは、よくあることだ。
椅子が用意されている場合、メンバーが見えない確率はより高くなる。
今回も見えないパターンらしい。
優花の周りでは「見えない」などと言いながら、背伸びをしたり、飛んでみたりしている子がチラホラいる。
かくいう優花も背伸びをしてみたが、これは無理そうだと早々にあきらめた。
メンバーの頭の先っぽが見えればいいな、という感じである。
そんなわけで少しガッカリしながら待っていると、メンバーが登場した。
店にかかった、爆音のアルバムの一曲目。
前の方から上がる歓声と、少しだけ見えた頭頂部。
それで、メンバーが出てきたことがわかる。
「昨日、ライブ来た人?」
軽い自己紹介の後、事務所のスタッフの司会でトークに移った。
この璃桜様の問いかけに、会場の90%くらいの人が手を上げた。
「あっ! ほとんどだ。昨日、楽しかった人?」
ここでもすぐに一斉に手が上がり、メンバーはご機嫌だ。
昨夜のライブの話から、名古屋の話に移った。
地方のライブやイベントなどでは、その土地の話をするのはあるあるだ。
美味しかった食べ物や好きな食べ物。
行った場所。
覚えた方言。
過去に来た時の思い出。
その土地でしか聞けない貴重なエピソードなんかも聞けたりして、地元の人にとっても、遠征組にとっても嬉しい時間である。
青薔薇はメンバー全員で名古屋城に行ったらしく、シャチホコの話で大盛り上がりだ。
あとは、楽屋の弁当が味噌カツだったらしい。
「味噌カツ、でら、うみゃー」
などと、名古屋弁で太陽が言うと、会場では爆笑が起こる。
「でら、うみゃー」とは、名古屋弁で「どえらい=とても、美味い」という意味である。
優花も笑いながら、イベント後に名古屋城に寄って、味噌カツを食べようと心に決めるのだった。
トークイベントが終わり、握手会が始まった。
前から順番に握手が進んでいく。
握手が終わると店内から出るルールなので、前の方から少しずつ人が減っていき、遂にメンバーが見えた。
全員、軽くメイクはしているものの、髪もおろしていてナチュラルだ。
握手の順番は……一檎、太陽、紫苑、牡丹、璃桜。
最初はメンバーが見えて嬉しくなっていた優花も、自分の番が近づくにつれて、緊張が高まっていった。
そして、遂に優花の番がやってきた。
優花は前回もかなりの回数、握手会に参加したが……正直、メンバーとの接触イベントは苦手である。
何を話せばいいかわからないし、だいたいがうまく話せなくて落ち込む。
メンバーと大盛りあがりしているファンの人を見ては、羨ましく思ったものだ。
そんな優花だが、一檎の前に立ってしまった。
心臓はバクバクで、手は震えている。
「こんにちはー」
そう言いながら、手を出してくる一檎。
その手をアワアワと握った。
「昨日、ライブ楽しかったです」
「ありがとう! また来てね!」
──ふぁー。一檎、いい匂いした。
そんなことを思っていると、すぐに太陽の前があいた。
「あっ! 昨日、二階で頭振ってた子だ」
ふい打ちである。
優花は頭が真っ白になった。
「…………あっ! 頑張ってください!」
そんなちぐはぐな言葉を言った優花は、すっかり忘れていた。
……握手することを。
そのまま立ち去ろうとする優花を見て、太陽が慌てて声をかける。
「握手、握手」
「あっ! すみません!」
「ははは。またねー」
そう言った太陽は、握手した手を離すとヒラヒラと手を振った。
優花の心臓はうるさいくらいに跳ねていて、顔は真っ赤である。
「こんにちはー」
「き、昨日、ライブ楽しかったです」
「ありがとう!」
次の紫苑には、忘れずに手を出せた。
「来てくれて、ありがとう!」
「昨日、楽しかったです」
「楽しかったね! また来てね!」
続いての牡丹との握手も終わり、次は璃桜様だ。
自分の前の子と璃桜様が握手するのを見つめながら、優花の心臓は破裂しそうなほどの音を立てていた。
「こんにちはー」
璃桜様の少し掠れた声の色っぽさに当てられて、優花の頭は真っ白になった。
焦った優花は、何度目かの愛の告白をする。
「璃桜様、大好きです」
「ありがとう。昨日、二階の最前にいたよね? 笑顔が可愛かったから目立ってたよ」
優花の心臓に、バズーカが撃ち込まれた。
ズドーン、である。
「ふぁっ……」
頭の奥がしびれて何も言えなくなった優花に、璃桜様は少しだけ顔を寄せる。
そして、握手した手に左手を添えて、両手でギュッと手を握った。
「また会おうね!」
そう言って手を離した璃桜様の前から離れると、優花は放心状態でフラフラと出口へ向かった。
その姿は、もはや人間ではなく、ブリキの人形のようだった。
こうして優花は沼に落っこちた。見事に落っこちた。
それは、底のない、危険な危険な沼である。
♪ ♪ ♪
前回の人生。
優花の初めての握手会は、夏の東京だった。
会場は、新宿のV系CDショップ。
隣にいたのは、当時、まだ仲の良かった姫璃こと里美である。
その時の璃桜様も、今日と似たようなことを言っていた。
「最近、よく来てくれてるよね? いつも楽しそうに笑ってて、笑顔が可愛いから覚えてるよ」
「また来てね」
そう言って、最後に両手でギュッと手を握る璃桜様。
優花は前回も、そんな彼にやられて、沼落ちしたのである。
璃桜様は、とってもとっても悪い男なのだ。
……でも、そんな所も愛してる。
手に持っているのは、握手会の整理券である。
今日は青薔薇のインスト……インストアイベントのトーク&握手会があるのだ。
会場は、V系を専門に扱っているCDショップ。
「わー、結構いるー……」
集合場所には優花と同じように整理券を持った人、メンバーへの手紙やプレゼントを持った人が何人もいる。
そこかしこで「緊張する」「手汗やばい」などという声が聞こえ、心の中で激しく同意する。
なかには、「整理券終わりだって」と、残念そうに言う人もいた。
──昨日のうちに、CD買っておいてよかった。
このインストは、対象の店舗で今月発売したアルバムを買った人が参加できるイベントだ。
会場は、大阪、名古屋、東京の全部で三か所。
この全部に優花は参加する気満々だったのだが、大阪はすでに整理券の配布が終わっていて、参加できなかったのだ。
そんなことを想定していなかったので、驚いたし焦った。
そのため、昨日、名古屋に着くと真っ先に大須に向かい、整理券を手に入れたのだ。
──最近はインストに行くほど好きなバンドなかったから、忘れてたわ……。
前回の人生の時も、インストの整理券の入手は大変だった。
だいたい、CDショップなどで行われるインスト。
CDを一枚買うと、整理券が一枚もらえて参加できる。
青薔薇のインストは、トーク&握手会が定番だ。
整理券の配布は、CDショップごとにルールが違っている。
ちゃんと調べていないと、優花みたいに痛い目にあうのだ。
直接、買いに行かないといけない店がほとんどだが、なかには電話予約や振込みの先払いなどで、整理券を取り置きしてくれる店もある。
今回の大阪の会場は電話予約OKの店で、すでに予約分で整理券の配布は終了していた。
油断とリサーチ不足による、惨敗である。
会場である店内に入ると、入場順で前から順番に客席を埋めていく。スタッフがきちんと見張っているので、場所の移動はNGだ。
ライブとは違い、自分で場所を選べないので、好きなメンバーの前で見れるかは運である。
優花は後ろから二列目の上手側になった。
──あっ! これ、見えないやつだ。
インストあるあるなのだが……会場は普通のCD屋さんの店内だ。
CDが置いてあった棚などを移動して、店内にスペースを作る。
そこに仮設のステージを置いてのイベントとなる。
ライブハウスのように見やすさなんてものは計算されておらず、後ろの方は見えないのは、よくあることだ。
椅子が用意されている場合、メンバーが見えない確率はより高くなる。
今回も見えないパターンらしい。
優花の周りでは「見えない」などと言いながら、背伸びをしたり、飛んでみたりしている子がチラホラいる。
かくいう優花も背伸びをしてみたが、これは無理そうだと早々にあきらめた。
メンバーの頭の先っぽが見えればいいな、という感じである。
そんなわけで少しガッカリしながら待っていると、メンバーが登場した。
店にかかった、爆音のアルバムの一曲目。
前の方から上がる歓声と、少しだけ見えた頭頂部。
それで、メンバーが出てきたことがわかる。
「昨日、ライブ来た人?」
軽い自己紹介の後、事務所のスタッフの司会でトークに移った。
この璃桜様の問いかけに、会場の90%くらいの人が手を上げた。
「あっ! ほとんどだ。昨日、楽しかった人?」
ここでもすぐに一斉に手が上がり、メンバーはご機嫌だ。
昨夜のライブの話から、名古屋の話に移った。
地方のライブやイベントなどでは、その土地の話をするのはあるあるだ。
美味しかった食べ物や好きな食べ物。
行った場所。
覚えた方言。
過去に来た時の思い出。
その土地でしか聞けない貴重なエピソードなんかも聞けたりして、地元の人にとっても、遠征組にとっても嬉しい時間である。
青薔薇はメンバー全員で名古屋城に行ったらしく、シャチホコの話で大盛り上がりだ。
あとは、楽屋の弁当が味噌カツだったらしい。
「味噌カツ、でら、うみゃー」
などと、名古屋弁で太陽が言うと、会場では爆笑が起こる。
「でら、うみゃー」とは、名古屋弁で「どえらい=とても、美味い」という意味である。
優花も笑いながら、イベント後に名古屋城に寄って、味噌カツを食べようと心に決めるのだった。
トークイベントが終わり、握手会が始まった。
前から順番に握手が進んでいく。
握手が終わると店内から出るルールなので、前の方から少しずつ人が減っていき、遂にメンバーが見えた。
全員、軽くメイクはしているものの、髪もおろしていてナチュラルだ。
握手の順番は……一檎、太陽、紫苑、牡丹、璃桜。
最初はメンバーが見えて嬉しくなっていた優花も、自分の番が近づくにつれて、緊張が高まっていった。
そして、遂に優花の番がやってきた。
優花は前回もかなりの回数、握手会に参加したが……正直、メンバーとの接触イベントは苦手である。
何を話せばいいかわからないし、だいたいがうまく話せなくて落ち込む。
メンバーと大盛りあがりしているファンの人を見ては、羨ましく思ったものだ。
そんな優花だが、一檎の前に立ってしまった。
心臓はバクバクで、手は震えている。
「こんにちはー」
そう言いながら、手を出してくる一檎。
その手をアワアワと握った。
「昨日、ライブ楽しかったです」
「ありがとう! また来てね!」
──ふぁー。一檎、いい匂いした。
そんなことを思っていると、すぐに太陽の前があいた。
「あっ! 昨日、二階で頭振ってた子だ」
ふい打ちである。
優花は頭が真っ白になった。
「…………あっ! 頑張ってください!」
そんなちぐはぐな言葉を言った優花は、すっかり忘れていた。
……握手することを。
そのまま立ち去ろうとする優花を見て、太陽が慌てて声をかける。
「握手、握手」
「あっ! すみません!」
「ははは。またねー」
そう言った太陽は、握手した手を離すとヒラヒラと手を振った。
優花の心臓はうるさいくらいに跳ねていて、顔は真っ赤である。
「こんにちはー」
「き、昨日、ライブ楽しかったです」
「ありがとう!」
次の紫苑には、忘れずに手を出せた。
「来てくれて、ありがとう!」
「昨日、楽しかったです」
「楽しかったね! また来てね!」
続いての牡丹との握手も終わり、次は璃桜様だ。
自分の前の子と璃桜様が握手するのを見つめながら、優花の心臓は破裂しそうなほどの音を立てていた。
「こんにちはー」
璃桜様の少し掠れた声の色っぽさに当てられて、優花の頭は真っ白になった。
焦った優花は、何度目かの愛の告白をする。
「璃桜様、大好きです」
「ありがとう。昨日、二階の最前にいたよね? 笑顔が可愛かったから目立ってたよ」
優花の心臓に、バズーカが撃ち込まれた。
ズドーン、である。
「ふぁっ……」
頭の奥がしびれて何も言えなくなった優花に、璃桜様は少しだけ顔を寄せる。
そして、握手した手に左手を添えて、両手でギュッと手を握った。
「また会おうね!」
そう言って手を離した璃桜様の前から離れると、優花は放心状態でフラフラと出口へ向かった。
その姿は、もはや人間ではなく、ブリキの人形のようだった。
こうして優花は沼に落っこちた。見事に落っこちた。
それは、底のない、危険な危険な沼である。
♪ ♪ ♪
前回の人生。
優花の初めての握手会は、夏の東京だった。
会場は、新宿のV系CDショップ。
隣にいたのは、当時、まだ仲の良かった姫璃こと里美である。
その時の璃桜様も、今日と似たようなことを言っていた。
「最近、よく来てくれてるよね? いつも楽しそうに笑ってて、笑顔が可愛いから覚えてるよ」
「また来てね」
そう言って、最後に両手でギュッと手を握る璃桜様。
優花は前回も、そんな彼にやられて、沼落ちしたのである。
璃桜様は、とってもとっても悪い男なのだ。
……でも、そんな所も愛してる。
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