息苦しい世界

ねぎ塩

文字の大きさ
上 下
22 / 24

出場決定

しおりを挟む
「理解できた?」

話し終えて、紅茶をすする俺に顔色の悪い二人がこくこくと頷く。
少し脅しすぎたかな。

「…ちなみにふたりは何かやってたの?ずいぶん体ができてるみたいだけど」

二人はきょとんとした顔で顔を見合わせると、何もいうことなくそろってうなずき合う。そして最初に口を開いたのははじめだった。

「俺は、騎士をめざしていたので、剣が得意です」

ああ。管理人もそんなこといってたっけ。

「じゃあ、大会では剣で戦うのがいいかな」

「はい」

そうだよね。「武器あり」は本物の武器を使う。つまり、剣の場合は刃などつぶれていないと言うこと。
命を落とす危険は高くなる。
けどまあ、自分の得意なことで勝負したほうがいいかもしれない。はじめの実力によっては、余裕だなんてこともあるかもしれない。


「リオは?」

「俺は特に何もやってませんでした」

「え?ほんとに?」


それにしては鍛えられすぎている気がする。体中にほどよい筋肉が付いているなんて、なにもしない状態で維持できるようなものじゃないはず。

「俺、ここに来る前は工場の奴隷だったんです。それが結構重労働で、筋肉はそれなりだと思いますよ。奴隷が集団で雇われていたせいで主人に会わなかったんで態度とかそうは見えないかもしれないっすけど」

「へぇ、そうなんだ」

なるほど。奴隷になって日が浅いわけではなく、奴隷として振る舞った経験が少ないのか。

「じゃあ、出場部門はどうする?」

「ご主人様が決めてくださいっす!」

リオが勢い込んで拳をにぎる。目がきらきらと輝いているのをみるとどうやら期待しているらしい。なににだろうか。
それより種目。武器を使う種目は、命を落とす危険が段違いだ。となると、痛い上に苦しいが・・・

「武器なし、かなぁ」

「武器なしですね!わかったす」

「・・・理由も何も聞かなくていいの?」

「ご主人様に決めてくれって言ったの俺ですから!」

潔い。すごく気持ちがいい。前の主人のところでも可愛がられたんじゃないだろうか。交流がある人には、だけど。

「大会まで、多くの時間があるわけじゃないし、その恵まれた体を生かすなら素手がいいかなって」

一応理由を説明してみるが「へぇ、そうなんすか」と、気のない返事をするだけだった。

その横ではじめは「なるほど」と興味深そうに頷いている。
はじめは騎士を目指していただけあって戦いとかには興味があるのだろうか。大会が終わったら兵士の道を示してあげるのがいいかもしれない。

「よし、二人ともそれぞれ武器あり、武器なしへの出場でいいね?」

「「はい」」

「じゃあ明日からさっそく準備に取りかかるかるよ」

声をそろえて二度目の返事をした彼らに微笑んで、俺はふと彼らをどこに寝かせようか、という疑問を持った。

圭は一人目だったから自室に入れた。けれど寝室にベッドが四台となると、すこし手狭かもしれないし、ふたりだけ別の部屋というのも奴隷を差別しているきがしてあまり気が進まない。となると全員別室になる。たしか隣の部屋が空いていたはずである。少し寂しい気はするがそれが最善だろう。

自分を納得させて、俺は二人をつれ、自室へ向かった。






騎士=国仕え
兵士=個人仕え
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

表情筋が死んでいる

白鳩 唯斗
BL
無表情な主人公

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

処理中です...