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罠師、追放される
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「親父、おかわり!」
そう言って、俺はジュースのおかわりを要求した。
酒が飲めたらいいのだが残念な事に下戸なので飲めない。
だから、ヤケ酒ならぬやけジュースで、ついさっき俺の身に起こった出来事に対するいら立ちを晴らすしかなかったのだ。
「ディオンド、どうした? いつもなら節制しているのに。」
「その必要が無くなったんだよ。ギルドを追放されたんだからなっ!」
「マジかッ!?」
この店の店主が驚いたような顔をしていた。
「パーティー追放ならともかく、ギルドだぞ。ずっと頑張って来たのにどうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだよ……。」
本当に泣きたい気分だ。
田舎の村から一攫千金をめざして冒険者になる為に王都にやってきて、その中でも一番評判の高いギルド『レクサス』に所属した。
その時に鑑定を受けて俺のスキルは『罠師』だ、と言う事が分かった。
俺と一緒に田舎からやって来た幼馴染たちは『剣士』、『魔法使い』、『武闘家』と言ったスキルを持っていた。
最初の内、ダンジョン攻略で俺のスキルは役に立っていた。
『罠師』はダンジョンに仕掛けられた罠を解除出来る、罠の場所が分かる、解除出来た罠を自分の物に出来る、等の能力があった。
しかし、モンスターとの戦いでは役に立たず、戦闘力も無い、魔法も使えない、という本当に『罠』に特化されたスキルだったのだ。
そんな訳で俺と幼馴染達との間にはだんだんと溝が出来て行った。
最初の頃は俺の事を励ましてくれたりしていたのだが、だんだんと声もかけられなくなり視線も冷たい物になっていた。
そして、今日である。
俺は仲間達から三行半をつけられ、おまけに勝手にギルドからも追い出された。
正直、その時のやり取りは思い出したくないし即効忘れたいぐらいだ。
とにかく、俺は飛び出して現在に至る。
「自分なりに頑張って来たんだよ、それを頭ごなしに否定されたんだ……。完全に心が折れたよ。」
「そりゃあ辛いよなぁ、俺も似たような経験しているからな。気持ちはわかるよ。」
そう言って店主は慰めてくれた。
「それで、これからどうするんだ? 別のギルドに所属するのか?」
「いや、ぶっちゃけもうこの街にはいたくないし、あいつらとはもう関わりたくないから明日にはこの街を出るよ。多分、二度と来る事は無い、と思う。田舎に帰ってのんびり暮らす事にするよ。」
完全に心が折れた俺は早くこの王都から出て行きたかった。
「そうか……、わかった。今日は俺のおごりだ。嫌な事は忘れてさっさと忘れろっ!!」
「本当にありがとう、あんただけだよ、俺の気持ちが分かってくれるのは……。」
この日の夜は俺は一生忘れないと思う。
こうして、俺『ディオンド・イグサル』は全てを失ってしまった。
そう言って、俺はジュースのおかわりを要求した。
酒が飲めたらいいのだが残念な事に下戸なので飲めない。
だから、ヤケ酒ならぬやけジュースで、ついさっき俺の身に起こった出来事に対するいら立ちを晴らすしかなかったのだ。
「ディオンド、どうした? いつもなら節制しているのに。」
「その必要が無くなったんだよ。ギルドを追放されたんだからなっ!」
「マジかッ!?」
この店の店主が驚いたような顔をしていた。
「パーティー追放ならともかく、ギルドだぞ。ずっと頑張って来たのにどうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだよ……。」
本当に泣きたい気分だ。
田舎の村から一攫千金をめざして冒険者になる為に王都にやってきて、その中でも一番評判の高いギルド『レクサス』に所属した。
その時に鑑定を受けて俺のスキルは『罠師』だ、と言う事が分かった。
俺と一緒に田舎からやって来た幼馴染たちは『剣士』、『魔法使い』、『武闘家』と言ったスキルを持っていた。
最初の内、ダンジョン攻略で俺のスキルは役に立っていた。
『罠師』はダンジョンに仕掛けられた罠を解除出来る、罠の場所が分かる、解除出来た罠を自分の物に出来る、等の能力があった。
しかし、モンスターとの戦いでは役に立たず、戦闘力も無い、魔法も使えない、という本当に『罠』に特化されたスキルだったのだ。
そんな訳で俺と幼馴染達との間にはだんだんと溝が出来て行った。
最初の頃は俺の事を励ましてくれたりしていたのだが、だんだんと声もかけられなくなり視線も冷たい物になっていた。
そして、今日である。
俺は仲間達から三行半をつけられ、おまけに勝手にギルドからも追い出された。
正直、その時のやり取りは思い出したくないし即効忘れたいぐらいだ。
とにかく、俺は飛び出して現在に至る。
「自分なりに頑張って来たんだよ、それを頭ごなしに否定されたんだ……。完全に心が折れたよ。」
「そりゃあ辛いよなぁ、俺も似たような経験しているからな。気持ちはわかるよ。」
そう言って店主は慰めてくれた。
「それで、これからどうするんだ? 別のギルドに所属するのか?」
「いや、ぶっちゃけもうこの街にはいたくないし、あいつらとはもう関わりたくないから明日にはこの街を出るよ。多分、二度と来る事は無い、と思う。田舎に帰ってのんびり暮らす事にするよ。」
完全に心が折れた俺は早くこの王都から出て行きたかった。
「そうか……、わかった。今日は俺のおごりだ。嫌な事は忘れてさっさと忘れろっ!!」
「本当にありがとう、あんただけだよ、俺の気持ちが分かってくれるのは……。」
この日の夜は俺は一生忘れないと思う。
こうして、俺『ディオンド・イグサル』は全てを失ってしまった。
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