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番外編

ルクイユのおいしいごはんBL

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 小料理屋「だんや」では、料理を盛り付ける器も少しだけ拘りがある。店主である牧原貴俊が修行していた料亭で、良い器を日常的に目にしていたためかもしれない。

 骨董店を回って食器を物色するのが、ちょっとした趣味になっているようで、都合が合えば、たまに付き合わされる。
 今日は電車で三駅分離れた骨董店で、九谷焼の焼物皿を二十枚購入した。少しずつ柄も違っていて面白い。青葉が描かれたデザインは初夏にぴったりであった。

 時刻は丁度、昼時。重い紙袋を一つずつ持って、立ち寄ったのは、ひっそりとした佇まいの定食屋。初めて暖簾をくぐるというのに、何故か懐かしい。
 おばちゃんに座敷に通されて、貴俊は焼き魚定食を、俺はとんかつ定食を頼んだ。

 醤油と油の匂いが染み付いたノスタルジックな店内。客たちが我が家のように寛いでいる姿を眺めて、貴俊は口元を緩めた。
 定食屋「まきはら」の雰囲気に似ているのかもしれない。

「はい、とんかつ定食」

 目の前に置かれた定食は、ザ・定食屋という感じであった。薄く大きなとんかつは、衣が細かい。濃厚ソースがたっぷりかけられている。そびえ立つ千切りキャベツの山は瑞々しい。ご飯の量は、やや多めだろうか? 女性なら食べきれないかもしれない。わかめの味噌汁に、小鉢はほうれん草のごま和え。見た目もバランスがいい。

 連れの男に、お先にどうぞ、と促されて手を合わせた。
 まずは、少し柔らかく炊かれた白米を口にして、メインのとんかつを。うん、これこれ、ザクザクした衣に豚肉の甘い油。甘辛い濃厚ソースが食欲をそそる。

「真人って本当、うまそうに食べるよな」
「…………そうかな」

 男の声に顔をあげる。頬杖をついて、こちらを可笑しそうに眺めていることに気がついて、少し居心地が悪い。

「おまたせ、焼き魚定食ね」

 貴俊の前にも定食が。鰆の塩焼きと、ごはんと味噌汁に小鉢が二つ。

「ほら、肉じゃが」

 貴俊は、当然のように小鉢の片方を俺の盆に置いた。

「前から気になってたんだけど、貴俊って俺の好物は肉じゃがだと思ってない?」
「違うのか?」

 目を丸くする貴俊に溜め息が溢れた。何年連れ添っているのか。今更感が半端ない。

「うーん、好きだけど、『好物』ってほどじゃないよ」
「そうなのか?」
「うん、『貴俊の肉じゃが』が好物ってだけで、」

 小鉢の肉じゃがは、じゃがいもが小さく崩れている。口にすると甘辛いじゃがいもの味がした。

「…………ああ、そっか。『俺の作る肉じゃが』が好物なのか。ありがとな」

 顔をあげると、貴俊が目を細めて口元を緩ませていた。

「や、違うくて。貴俊の味付けとかが、俺の好みで…………ほら、じゃがいもが崩れてなくて、でもホクホクしてて、肉も柔らかくて、味付けも、だしが利いてて上品でさ、絶妙っていうか、」
「そんなに好きなら、また作るよ」

 貴俊のにやにやした口元に、ますます墓穴を掘っていることに気がついた。これ以上、言葉を重ねても、この男を無駄に喜ばせるだけである。

「あーうん、よろしく」

 頬が上気するのがわかって、目を伏せた。誤魔化すように、とんかつを口にする。

 うん、うまい。


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BLおいしいごはん祭

テーマは「ごはん」スイーツもOK
男子同士カップルが、ごはんを食べてほっこりする内容なら何でもOK
期間:4/29~5/9
小説/イラスト/漫画OK  
小説140字~・ツイノベOK
サイト投稿はリンク貼り付け
参加方法: ハッシュタグをつけツイートするだけ!

#ルクイユのおいしいごはんBL

ルクイユ・アート・フェスティバル@RecueilArtFest

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