7 / 26
白い子猫と騎士の話
7 子猫
しおりを挟む「突き飛ばすなんてひどいですぅ」
その言葉に、もしかして踵を返そうとしたシーラとぶつかったのかとシーラを見た。
だけど、シーラは困ったように首を横に振る。
みんなの隙間から、なんとか声の主を見ると、金髪を両サイドでツインテールにした橙色の瞳の少女が廊下に座り込んでいた。
あー。
多分、多分だけど、ヒロインだ・・・
しかも、転生者っぽい。
隙間から覗く私が見えたのか、その橙色の瞳をウルウルとさせて(でも涙は出てないけど)ヒロインは顔を両手で覆った。
「私が男爵家の娘だからって・・・どうしてこんな酷いことをするんですかぁ」
「・・・」
私やシーラだけでなく、護衛の人たちもどうしたものかと戸惑った。
シーラ自身もぶつかっていないというし、護衛の人たちも困り顔ということは、ぶつかっていないのだろう。
ということは、彼女は一人で転んで、こちらに文句を言って来た、ということである。
当たり屋か。
それにヒロインは理解していないみたいだけど、本当にぶつかっていたとしても、相手が王族である時点で、ぶつかった自分が悪いと言われるんだけど。
周囲には、生徒や訪れている父兄の姿もある。
ここは手早く撤収するべきだろう。
ハンカチは残念だけど、エルム兄様が戻ってきたら一応忘れ物がなかったか聞いてみよう。
「お父様、お母様。帰りましょう?シーラ、ハンカチは兄様にお願いするからいいわ」
「ああ、そうだな」
「護衛の方。彼女を起こして差し上げて」
お母様の指示で、護衛の方がヒロインの手を取って立ち上がらせる。
「どこのご令嬢かは知りませんけど、廊下は走るものでなくてよ?ご自分もそれから相手も怪我をしてしまうわ」
「わっ、私は突き飛ば・・・」
「王妃殿下の許可なく口を開くな!大体、我々は君が我々の後ろから駆けてきて、手前で転んだのを見ている。王族に嘘偽りを述べることが罪だと理解しているか?」
「グズッ。酷いですぅ。権力を笠に着て、身分の低い相手を断罪しようとするなんて。ぐすん・・・」
護衛の方は睨みつけてヒロインを叱責するけど、逆にヒロインは泣き真似をして周囲の同情を誘おうとしている。
何がしたいんだろうか。
私を悪役に仕立てたいのかもしれないけど、発言しているのはお母様だ。
それに、攻略対象がいない場所で、誰に同情してもらうつもりなんだろう。
この学園は貴族だけが通う学園、それはつまり成人した後に貴族として生きていくことを学ぶための場所、ということだ。
学園では身分なんて関係ない、なんてところも他国にはあるらしいが、ここは違う。
それを本当にヒロインは理解していないの?
その言葉に、もしかして踵を返そうとしたシーラとぶつかったのかとシーラを見た。
だけど、シーラは困ったように首を横に振る。
みんなの隙間から、なんとか声の主を見ると、金髪を両サイドでツインテールにした橙色の瞳の少女が廊下に座り込んでいた。
あー。
多分、多分だけど、ヒロインだ・・・
しかも、転生者っぽい。
隙間から覗く私が見えたのか、その橙色の瞳をウルウルとさせて(でも涙は出てないけど)ヒロインは顔を両手で覆った。
「私が男爵家の娘だからって・・・どうしてこんな酷いことをするんですかぁ」
「・・・」
私やシーラだけでなく、護衛の人たちもどうしたものかと戸惑った。
シーラ自身もぶつかっていないというし、護衛の人たちも困り顔ということは、ぶつかっていないのだろう。
ということは、彼女は一人で転んで、こちらに文句を言って来た、ということである。
当たり屋か。
それにヒロインは理解していないみたいだけど、本当にぶつかっていたとしても、相手が王族である時点で、ぶつかった自分が悪いと言われるんだけど。
周囲には、生徒や訪れている父兄の姿もある。
ここは手早く撤収するべきだろう。
ハンカチは残念だけど、エルム兄様が戻ってきたら一応忘れ物がなかったか聞いてみよう。
「お父様、お母様。帰りましょう?シーラ、ハンカチは兄様にお願いするからいいわ」
「ああ、そうだな」
「護衛の方。彼女を起こして差し上げて」
お母様の指示で、護衛の方がヒロインの手を取って立ち上がらせる。
「どこのご令嬢かは知りませんけど、廊下は走るものでなくてよ?ご自分もそれから相手も怪我をしてしまうわ」
「わっ、私は突き飛ば・・・」
「王妃殿下の許可なく口を開くな!大体、我々は君が我々の後ろから駆けてきて、手前で転んだのを見ている。王族に嘘偽りを述べることが罪だと理解しているか?」
「グズッ。酷いですぅ。権力を笠に着て、身分の低い相手を断罪しようとするなんて。ぐすん・・・」
護衛の方は睨みつけてヒロインを叱責するけど、逆にヒロインは泣き真似をして周囲の同情を誘おうとしている。
何がしたいんだろうか。
私を悪役に仕立てたいのかもしれないけど、発言しているのはお母様だ。
それに、攻略対象がいない場所で、誰に同情してもらうつもりなんだろう。
この学園は貴族だけが通う学園、それはつまり成人した後に貴族として生きていくことを学ぶための場所、ということだ。
学園では身分なんて関係ない、なんてところも他国にはあるらしいが、ここは違う。
それを本当にヒロインは理解していないの?
1
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
捨て猫はエリート騎士に溺愛される
135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。
目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。
お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。
京也は総受け。
非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします
muku
BL
聖なる山に住む聖獣のもとへ守護騎士として送られた、伯爵令息イリス。
非力で成人しているのに子供にしか見えないイリスは、前世の記憶と山の幻想的な食材を使い、食事を拒む聖獣セフィドリーフに料理を作ることに。
両親に疎まれて居場所がないながらも、健気に生きるイリスにセフィドリーフは心動かされ始めていた。
そして人間嫌いのセフィドリーフには隠された過去があることに、イリスは気づいていく。
非力な青年×人間嫌いの人外の、料理と癒しの物語。
※全年齢向け作品です。
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる