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ペン
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某テーマパークで購入した可愛らしいデザインのものだ。見慣れたそのキャラクターたちに、何か得体のしれない力を感じる。私はじっとそれを色々な角度から眺めてみた。
なぜだか凄く気になる。私の脳の奥底で、何かがこれだと知らせている。
そう、そういえば。あの時、このペンを持ち帰っていた。先生と待ち合わせていることで舞い上がっていたせいでそうしたんだ、と思っていたけれど、思えばこの一本だけ持ち帰るのは不自然だった。持って帰るなら、今日みたいに数本まとめてポケットに入れっぱなしにしているはず。
そして先生と車で会う直前、私は山中さんに会っていた……。
じっと見つめたのち、なんとなく接続部を回して外してみる。インクが半分になった芯の部分がするりと手のひらに零れてきた。と同時に、折りたたまれた小さな紙が出てきたのだ。
「え?」
ぎょっとして目を丸くする。もちろんこんな中にメモ用紙を入れた記憶はない。白い紙を手にし、ゆっくりとそれを開いてみる。
中は簡素なものだった。図形が書いてあるだけだったのだ。私は首を傾げる。
中央には横長の長方形がある。その右上に、今度は小さめの正方形が記されている。その正方形には、赤いインクで小さな丸がある。たったそれだけの図だった。言葉は何一つ書かれていない。
「なにこれ……どういうこと?」
状況から考えて、このメモ用紙は山中さんが入れたと考えるのが普通だろう。しかし、こんな簡単すぎる図が一体何を示しているのかまるで分からない。もっとこう、分かりやすく表示できないものなのか。
ふと、周りの空気感が変わったことに気が付いた。顔を上げて見渡す。
一度立ち上がり、そろそろと再度ドアスコープを覗きこんでみる。なんとなく予想していたことだが、そこにはもう誰もいなかった。静かな廊下が映し出されるだけで、山中さんは忽然と姿を消していた。
だがそれが何よりの答えだと思った。やはり、彼はこれを見つけてほしかったのだ。私が見つけた後はすぐにいなくなってしまった。
とはいえども。
「何なの、これ……一体何を表しているのか全然分からない」
疑問は多すぎる。これは一体何なのか、何を示しているのか。なぜ私に伝えようとしてるのか。ボールペンに仕込むなんて、まどろっこしいやり方をしたのか。
考えても、どれも一つも答えは分からない。
紙をひっくり返してみたり見方を変えてみるけれども、やはりあるのは四角が二つだけ。しばらくその場で考え込んでみるも、まるで何も浮かばない。
「全然だめだ。誰か分かりそうな人とかいないかな」
そう考えたとき、思い浮かぶのはたった一人しかいない。なぜなら、誰かにこれを見るときに状況を説明しないと駄目だろう。『亡くなった患者さんに導かれて手に入れたメモ』だなんて、言えるはずがない。何も情報なしでこの図を見せても、みんな首を傾げるだけだろうから。
大きくため息をついた。
「いやいや……先生に言えるわけないよなあ」
あれだけ霊に関わるな、と言われたのに結局こんなもの見つけちゃったし。そもそも、あの先生に相談できるタイミングなんてあるわけない。連絡先だって知らないし、仕事中はいつでも同僚が見てる。
眉を垂らし、メモをじっと見つめた。
でも、ここまでして私に託してくれたもの……どうにかして意図をくみ取ってあげたい。
そう、強く思った。
なぜだか凄く気になる。私の脳の奥底で、何かがこれだと知らせている。
そう、そういえば。あの時、このペンを持ち帰っていた。先生と待ち合わせていることで舞い上がっていたせいでそうしたんだ、と思っていたけれど、思えばこの一本だけ持ち帰るのは不自然だった。持って帰るなら、今日みたいに数本まとめてポケットに入れっぱなしにしているはず。
そして先生と車で会う直前、私は山中さんに会っていた……。
じっと見つめたのち、なんとなく接続部を回して外してみる。インクが半分になった芯の部分がするりと手のひらに零れてきた。と同時に、折りたたまれた小さな紙が出てきたのだ。
「え?」
ぎょっとして目を丸くする。もちろんこんな中にメモ用紙を入れた記憶はない。白い紙を手にし、ゆっくりとそれを開いてみる。
中は簡素なものだった。図形が書いてあるだけだったのだ。私は首を傾げる。
中央には横長の長方形がある。その右上に、今度は小さめの正方形が記されている。その正方形には、赤いインクで小さな丸がある。たったそれだけの図だった。言葉は何一つ書かれていない。
「なにこれ……どういうこと?」
状況から考えて、このメモ用紙は山中さんが入れたと考えるのが普通だろう。しかし、こんな簡単すぎる図が一体何を示しているのかまるで分からない。もっとこう、分かりやすく表示できないものなのか。
ふと、周りの空気感が変わったことに気が付いた。顔を上げて見渡す。
一度立ち上がり、そろそろと再度ドアスコープを覗きこんでみる。なんとなく予想していたことだが、そこにはもう誰もいなかった。静かな廊下が映し出されるだけで、山中さんは忽然と姿を消していた。
だがそれが何よりの答えだと思った。やはり、彼はこれを見つけてほしかったのだ。私が見つけた後はすぐにいなくなってしまった。
とはいえども。
「何なの、これ……一体何を表しているのか全然分からない」
疑問は多すぎる。これは一体何なのか、何を示しているのか。なぜ私に伝えようとしてるのか。ボールペンに仕込むなんて、まどろっこしいやり方をしたのか。
考えても、どれも一つも答えは分からない。
紙をひっくり返してみたり見方を変えてみるけれども、やはりあるのは四角が二つだけ。しばらくその場で考え込んでみるも、まるで何も浮かばない。
「全然だめだ。誰か分かりそうな人とかいないかな」
そう考えたとき、思い浮かぶのはたった一人しかいない。なぜなら、誰かにこれを見るときに状況を説明しないと駄目だろう。『亡くなった患者さんに導かれて手に入れたメモ』だなんて、言えるはずがない。何も情報なしでこの図を見せても、みんな首を傾げるだけだろうから。
大きくため息をついた。
「いやいや……先生に言えるわけないよなあ」
あれだけ霊に関わるな、と言われたのに結局こんなもの見つけちゃったし。そもそも、あの先生に相談できるタイミングなんてあるわけない。連絡先だって知らないし、仕事中はいつでも同僚が見てる。
眉を垂らし、メモをじっと見つめた。
でも、ここまでして私に託してくれたもの……どうにかして意図をくみ取ってあげたい。
そう、強く思った。
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