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憧れの人
発見
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「どうですか」
「まだ見つかっていません……似たようなやつもたくさんあって、時間がかかってる状態です」
「数も膨大なので仕方がないことです」
隣にいる影山さんが唸りながら言う。
「もし見つけたとして、安直に考えればその踏切で亡くなった人間だとか? そうなら割れやすいかもしれませんが、単に思い入れのある場所だったりしたら、ここから辿り着くのは困難かもしれませんよ」
尤もだ。いつも踏切の音が聞こえてくるので、霊と深い関係があるのは間違いないだろうが、そこから本人まで判明するのかは分からない。
九条さんはそれでも言った。
「ですが今は、これしか進める道がないんです。細かなことでも調べていかないと」
やや重い空気が流れる。そんな事務所内の雰囲気を変えるかのように、伊藤さんの明るい声が響いた。あえてそんな声を出したのかもしれない。
「はーい! 腹が減ってはなんとやら、ですよ! 腹ごしらえしましょう。前パン屋さんで買ったパン冷凍しといたんで、それ焼きました。美味しいですよー!」
彼は人数分の食事が乗ったお盆を手に持ち颯爽と現れる。一人一人にパンとコーヒーを手渡し、最後に私の隣に椅子を持って移動する。
「はい光ちゃんは口開けてね。そっち見ながらでいいから。火傷したら大変だから、君だけはアイスコーヒー」
「ど、どうも……」
やっぱり伊藤さんの手からパンをいただくことに。仕方ないのでそのまま齧らせてもらう。バターがよく効いたクロワッサンだった。層がしっかりしていてパリパリ感がとても美味しい。
離れたところで、九条さんがコーヒーを啜って凄い顔をしているのが見えてしまい、つい笑ってしまう。彼は無言で、冷蔵庫から牛乳とスティックシュガーを持ってきてたっぷり入れていた。多分、子供向けコーヒー牛乳の味になっているとみた。
私はクロワッサンをもぐもぐと咀嚼しながら、画面に視線を戻す。
実際のところ、踏切だけの写真では判別が難しい。少し引きの撮影でないと。あのアパートとか、道幅とか、そういうのが写っていないと、見逃してしまいそうだ。
(うーんこれは違う、あ、似てる……でも新しいかな?)
しかも、写真が明るい時に撮られたものか暗い時に撮られたものかでも、結構イメージ変わるんだよなあ。これ見つかるのかな……昨日の夜から頑張ってるけど。
心の中で独り言を言いながら画像を送っていく。アイスコーヒーを少し啜り、伊藤さんに貰ったパンを頬張った時だ。
表示された一枚の画像に、咀嚼も止まった。
撮られているのは昼間のようで晴れた青空が上部に見える。遮断機は上がった状態のままだった。かなり年季が入ったもののようだ。地面は舗装がしっかりされていないようで、凸凹しているのがわかる。踏切の向こうには、築年数もそこそこ経っていそうなアパートが見えた。
「あ…………!」
一瞬で昨日見た映像がフラッシュバックする。
これだ、間違いない。
私が見たのはこの踏切だ!
私の反応を見て、すぐに三人が駆け寄ってきた。一斉にパソコンを覗き込み、まず九条さんが口を開く。
「光さん、ここですか?」
「こ、ここです。この遮断機も、見えたアパートも、そのまま。間違いないです」
「やったあ! よし、じゃあここが一体どこなのか検索して……」
伊藤さんが笑顔でそう動こうとした時だ。画面をじっと見ていた影山さんの様子がおかしいことに気がつく。目がこぼれ落ちそうなほど見開き、驚愕の表情で踏切を見ていたのだ。
「まだ見つかっていません……似たようなやつもたくさんあって、時間がかかってる状態です」
「数も膨大なので仕方がないことです」
隣にいる影山さんが唸りながら言う。
「もし見つけたとして、安直に考えればその踏切で亡くなった人間だとか? そうなら割れやすいかもしれませんが、単に思い入れのある場所だったりしたら、ここから辿り着くのは困難かもしれませんよ」
尤もだ。いつも踏切の音が聞こえてくるので、霊と深い関係があるのは間違いないだろうが、そこから本人まで判明するのかは分からない。
九条さんはそれでも言った。
「ですが今は、これしか進める道がないんです。細かなことでも調べていかないと」
やや重い空気が流れる。そんな事務所内の雰囲気を変えるかのように、伊藤さんの明るい声が響いた。あえてそんな声を出したのかもしれない。
「はーい! 腹が減ってはなんとやら、ですよ! 腹ごしらえしましょう。前パン屋さんで買ったパン冷凍しといたんで、それ焼きました。美味しいですよー!」
彼は人数分の食事が乗ったお盆を手に持ち颯爽と現れる。一人一人にパンとコーヒーを手渡し、最後に私の隣に椅子を持って移動する。
「はい光ちゃんは口開けてね。そっち見ながらでいいから。火傷したら大変だから、君だけはアイスコーヒー」
「ど、どうも……」
やっぱり伊藤さんの手からパンをいただくことに。仕方ないのでそのまま齧らせてもらう。バターがよく効いたクロワッサンだった。層がしっかりしていてパリパリ感がとても美味しい。
離れたところで、九条さんがコーヒーを啜って凄い顔をしているのが見えてしまい、つい笑ってしまう。彼は無言で、冷蔵庫から牛乳とスティックシュガーを持ってきてたっぷり入れていた。多分、子供向けコーヒー牛乳の味になっているとみた。
私はクロワッサンをもぐもぐと咀嚼しながら、画面に視線を戻す。
実際のところ、踏切だけの写真では判別が難しい。少し引きの撮影でないと。あのアパートとか、道幅とか、そういうのが写っていないと、見逃してしまいそうだ。
(うーんこれは違う、あ、似てる……でも新しいかな?)
しかも、写真が明るい時に撮られたものか暗い時に撮られたものかでも、結構イメージ変わるんだよなあ。これ見つかるのかな……昨日の夜から頑張ってるけど。
心の中で独り言を言いながら画像を送っていく。アイスコーヒーを少し啜り、伊藤さんに貰ったパンを頬張った時だ。
表示された一枚の画像に、咀嚼も止まった。
撮られているのは昼間のようで晴れた青空が上部に見える。遮断機は上がった状態のままだった。かなり年季が入ったもののようだ。地面は舗装がしっかりされていないようで、凸凹しているのがわかる。踏切の向こうには、築年数もそこそこ経っていそうなアパートが見えた。
「あ…………!」
一瞬で昨日見た映像がフラッシュバックする。
これだ、間違いない。
私が見たのはこの踏切だ!
私の反応を見て、すぐに三人が駆け寄ってきた。一斉にパソコンを覗き込み、まず九条さんが口を開く。
「光さん、ここですか?」
「こ、ここです。この遮断機も、見えたアパートも、そのまま。間違いないです」
「やったあ! よし、じゃあここが一体どこなのか検索して……」
伊藤さんが笑顔でそう動こうとした時だ。画面をじっと見ていた影山さんの様子がおかしいことに気がつく。目がこぼれ落ちそうなほど見開き、驚愕の表情で踏切を見ていたのだ。
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