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憧れの人

疑問

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 全国に踏切は、3万カ所以上存在するらしかった。私があげた特徴に当てはまるものを九条さんや伊藤さん、影山さんが見て挙げてくれる。それを私が見て判別するという形だった。

 狭い道幅、古い踏切、近くにアパートがあるくらい。そんな寂れた踏切を探しだすのにどれほどの時間を要するかわからなかったけれど、今縋りつけるのはその情報だけだった。川村莉子のことは一旦置いて、私たちは踏切の情報に必死になった。

 だが3万カ所だなんてところからたった一つを探し出すのは容易ではない。なかなか見たあの踏切を探し出すことができないまま、夜が更けていった。

 四人で長く無言が続く。画面の見過ぎで目が疲れてきた私は、少し目頭を抑えてチェックを続ける。

「あ、夕飯をとってないですよ」

 伊藤さんが思い出したように声に出す。時計を見てみるともう二十時だった。それぞれが一旦視線を上げる。

 伊藤さんは伸びをしながら立ち上がる。

「食事も大事ですよ。冷食やインスタントばかりもあれですから、出前とかとりませんか? なんなら僕買いに走ってもいいですし」

 九条さんが同意した。

「そうですね、食べたいものを食べましょう。光さん選んでください」

「え! 私ですか!」

「あなたが一番大事ですから」

「え、ええ……じゃ、じゃあ、中華とか?」

 迷いながら言ってみる。伊藤さんがすぐに笑顔を見せた。

「オッケ、食べたいものメニュー見ようか! あ、光ちゃんスマホ壊れてたね。貸すね、えーとこの辺だと……」

 テキパキと進めていく伊藤さんに流されながら、全員注文を決めた。伊藤さんはそれを店に注文してくれる。九条さんと影山さんはその間もパソコンをじっと見つめていた。

 私も再びパソコンの画面に目を落とした時、注文し終えた伊藤さんが九条さんに尋ねた。

「何か考えてるんですか?」

 見てみると、九条さんはパソコンを睨みつつ、眉間に皺を寄せていた。彼は少し唸った後、ポツリと言う。

「色々考えていました。光さんが言っていた疑問ですが、なぜ相手は顔を隠しているのか」

 反応したのは影山さんだ。椅子を引いて九条さんの方を向いた。

「そうだ、言われてみれば確かに」

「影山さん、あなたの除霊は相手の顔を知ることが重要ですか?」

「ええ。相手の全体をとらえることが重要なのです。上手く説明できませんが、簡単に言えば電話で知らない人と話すより、顔を見て話す方がずっと上手く話せるでしょう? 私の場合はそうなんです」

「先ほども話していたんです。今日の男はあえて顔を隠しているようだった。それはなぜ?」

 影山さんが何度か小さく頷く。

「尤もな疑問です、考えられるなら、私が顔を見えないと除霊しにくいと知っていた相手? ううん、ここ最近亡くなった知り合いもいない……以前除霊したことがある? あんな相手なら忘れないはず」


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