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憧れの人
女子会というやつ
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小顔で美人、揺れるピアスに長い茶髪。モデルのような出立で、私の前に座ったのは麗香さんだった。
朝比奈麗香さん、若くて美人だけど、この業界でも有名な凄腕除霊師だ。仕事で以前お世話になり、連絡先も交換していた。時々プライベートで意味のわからない連絡を取ることもあったが、(麗香さんが送ってくる)二人で食事なんて初めてのことだった。普段多忙な人なので、今回捕まったのは運がよかったと言える。
そして彼女は、九条さんの元カノ、という肩書付き。
来てすぐに、慣れた仕草で注文を終えると、呼び出した私に用件を聞いた。正直に九条さんに振られたことを言うと、麗香さんは驚くこともなく話を聞いてくれたのだ。
言葉を噛みながら、躓きながらなんとか告白について話す。麗香さんは時々相槌を打ちながら、でも口を挟むことなく静かに耳を傾けてくれていた。ようやく全部説明し終えると、私は一度大きくため息をついた。
「想定内でしたけど、やっぱりショックはあって……」
「ふうん。今日ひどい顔してるものね」
「目パンパンです」
「でもそれ、私もまだナオに未練あるって知ってるくせにわざわざ言うの?」
「だって私友達いないんですよ! 失恋話愚痴る相手もいない!」
「大声で何悲しいこと言ってんのこの子は」
呆れたようにいう麗香さんの元へ、頼んだ料理が運ばれてくる。綺麗にネイルされた指でフォークをとり、パスタをくるくると巻き始めた。
私の分も運ばれてきたけど、どうも食べる気が起きない。緩慢な動きでフォークを取った。
「麗香さんはすごいですね、九条さんと付き合えて……」
「一ヶ月で振られた私へのイヤミ?」
「でも一ヶ月付き合えたんですよ!」
「あっちが困り果てるくらい押してやったからよ」
(一体どんな押し方を……)
「言っとくけど思い出もクソもない一ヶ月だったわ。あいつ連絡も返すの遅いし、こっちが声かけなきゃ食事すら誘ってこないし、何あれ? なかなかの不良物件よ、振られて正解よ」
不満げにいう麗香さんに、少しだけ笑ってしまった。なんかすごい言われようだ九条さん、でも安易に想像つくからまたおかしい。
麗香さんはもぐもぐと食べつつ不満を続けていう。
「寝てばっかりだしポッキーばっか食べてるし? 何考えてるかわかんないのよ、幽霊の方がわかりやすいわよ」
「表情も出にくいですしね……」
「出不精だしめんどくさがりだし」
「天然ですしマイペースですしね」
「顔だけ良いから周り騙されてやたら最初だけモテるけど」
「九条さん自身は女に興味あるのかって感じですよね!」
鼻息荒くしてそう言った時、二人の視線が合った。同時に、小さく吹き出してしまう。
二人で笑った。誰かと好きな人について話せるなんて、初めての経験だった。共感しつつ愚痴もあり。それがなんだかとても楽しくて、同時に心が楽になる気がした。
ようやく目の前のパスタを食べてみる。麗香さんが知ってるお店なだけあって、味は美味しかった。一人では食べれなかっただろうなと思う。
麗香さんはふうと息を吐いて言った。
「まあ、変なやつだけど芯はしっかりしてるっていうかね。仕事は真面目だし、意外と思いやりはあるから、ずるいのよね」
「それですね。私もなんだかんだ、この一年たくさん助けられたから……好きになるのはしょうがないだろって思ってます。
でもやっぱり、報われない思いをずっと持ってても辛いだけだから、言ってよかったなとは思います」
「あなた結構強いのよね。それでいいと思う、時間は有限だしね。そりゃ立ち直るのも時間はかかるだろうけど、前を見なきゃね」
「麗香さんも時間かかったんですか?」
「んー私の場合悔しさが大きかったかな。今も好きっていうより、全然相手にされなかったから悔しいんだと思う。未練はあるって言ったけど、一途なわけじゃないわよ、他の男とも遊ぶし」
「わお」
なんだか麗香さんらしいと思ってまた笑ってしまった。まあ、麗香さんは美人だし仕事もできるし、絶対モテるだろうから相手に困らなそう。
朝比奈麗香さん、若くて美人だけど、この業界でも有名な凄腕除霊師だ。仕事で以前お世話になり、連絡先も交換していた。時々プライベートで意味のわからない連絡を取ることもあったが、(麗香さんが送ってくる)二人で食事なんて初めてのことだった。普段多忙な人なので、今回捕まったのは運がよかったと言える。
そして彼女は、九条さんの元カノ、という肩書付き。
来てすぐに、慣れた仕草で注文を終えると、呼び出した私に用件を聞いた。正直に九条さんに振られたことを言うと、麗香さんは驚くこともなく話を聞いてくれたのだ。
言葉を噛みながら、躓きながらなんとか告白について話す。麗香さんは時々相槌を打ちながら、でも口を挟むことなく静かに耳を傾けてくれていた。ようやく全部説明し終えると、私は一度大きくため息をついた。
「想定内でしたけど、やっぱりショックはあって……」
「ふうん。今日ひどい顔してるものね」
「目パンパンです」
「でもそれ、私もまだナオに未練あるって知ってるくせにわざわざ言うの?」
「だって私友達いないんですよ! 失恋話愚痴る相手もいない!」
「大声で何悲しいこと言ってんのこの子は」
呆れたようにいう麗香さんの元へ、頼んだ料理が運ばれてくる。綺麗にネイルされた指でフォークをとり、パスタをくるくると巻き始めた。
私の分も運ばれてきたけど、どうも食べる気が起きない。緩慢な動きでフォークを取った。
「麗香さんはすごいですね、九条さんと付き合えて……」
「一ヶ月で振られた私へのイヤミ?」
「でも一ヶ月付き合えたんですよ!」
「あっちが困り果てるくらい押してやったからよ」
(一体どんな押し方を……)
「言っとくけど思い出もクソもない一ヶ月だったわ。あいつ連絡も返すの遅いし、こっちが声かけなきゃ食事すら誘ってこないし、何あれ? なかなかの不良物件よ、振られて正解よ」
不満げにいう麗香さんに、少しだけ笑ってしまった。なんかすごい言われようだ九条さん、でも安易に想像つくからまたおかしい。
麗香さんはもぐもぐと食べつつ不満を続けていう。
「寝てばっかりだしポッキーばっか食べてるし? 何考えてるかわかんないのよ、幽霊の方がわかりやすいわよ」
「表情も出にくいですしね……」
「出不精だしめんどくさがりだし」
「天然ですしマイペースですしね」
「顔だけ良いから周り騙されてやたら最初だけモテるけど」
「九条さん自身は女に興味あるのかって感じですよね!」
鼻息荒くしてそう言った時、二人の視線が合った。同時に、小さく吹き出してしまう。
二人で笑った。誰かと好きな人について話せるなんて、初めての経験だった。共感しつつ愚痴もあり。それがなんだかとても楽しくて、同時に心が楽になる気がした。
ようやく目の前のパスタを食べてみる。麗香さんが知ってるお店なだけあって、味は美味しかった。一人では食べれなかっただろうなと思う。
麗香さんはふうと息を吐いて言った。
「まあ、変なやつだけど芯はしっかりしてるっていうかね。仕事は真面目だし、意外と思いやりはあるから、ずるいのよね」
「それですね。私もなんだかんだ、この一年たくさん助けられたから……好きになるのはしょうがないだろって思ってます。
でもやっぱり、報われない思いをずっと持ってても辛いだけだから、言ってよかったなとは思います」
「あなた結構強いのよね。それでいいと思う、時間は有限だしね。そりゃ立ち直るのも時間はかかるだろうけど、前を見なきゃね」
「麗香さんも時間かかったんですか?」
「んー私の場合悔しさが大きかったかな。今も好きっていうより、全然相手にされなかったから悔しいんだと思う。未練はあるって言ったけど、一途なわけじゃないわよ、他の男とも遊ぶし」
「わお」
なんだか麗香さんらしいと思ってまた笑ってしまった。まあ、麗香さんは美人だし仕事もできるし、絶対モテるだろうから相手に困らなそう。
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