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家族の一員
なぜ
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「光さんから見てどうですか。何か見えるとかありますか?」
「ええ、ううん……」
私は一旦手を止めて、人形の元へ近づいてみる。しゃがみ込み、じっとその顔を覗き込んだ。こうしてみると、ただの質の良い人形にしか見えない。ちょっと不気味さはあるけど。
例えば髪の毛が伸びるとか瞳が動くとか、そういうわかりやすいことがあればいいのに、この子はそういうものはない。
「嫌な感じはするけどぱっと見は普通の人形です。もちろん声も、朝聞いて以降は聞こえませんし」
「そうですか……やはり我々のレベルでは厳しいのかもしれませんね。除霊できそうな相手を探すのが一番ですが、困りました」
「妨害されてるのかって思うほど見つかりませんもんね」
私は立ち上がって再びキッチンへ戻る。ちょうど温めが終わったようで、レンジから食事を取り出した。良い香りが一気に広まる。私は料理たちを手に持ち、九条さんが座っているソファへと近づいた。彼の前にお皿を置く。
「結局レトルトですが。フライパンの一つぐらい買ってくださいよ九条さん」
「使わないので」
「もう、最初から諦めてるんだから。はい、適当に温めちゃいました」
「ありがとうございます」
「あ、お箸お箸」
私は戻って適当に戸棚を開き、割り箸を見つけてとりだした。残っていたもう一つのお皿も手に持ち、再び九条さんの元へと戻る。
並んだ料理に箸もおき、ようやく自分も腰を下ろした。
「こんなときですがお腹すきました、食べましょう!」
「はい、いただき」
九条さんが挨拶をしようとした時だ。彼はその言葉を止めた。
私も手を合わせていたところだったので、不思議に思い隣の彼を見た。
「どうしましたか?」
九条さんがゆっくりこちらをみる。それはなんだか焦ったような、厳しい目線に思えた。私は体を強張らせて止まる。何やら不穏な空気を感じとったからだ。
「光さん」
「え、え?」
「なぜ三人分用意したのですか」
目の前のテーブルに、三人分の料理と箸が置かれているのに気がついた。
一気に血の気がひく。自分が何をしたのか理解できなかった。
何も考えずに三人分用意した。適当に親子丼と中華丼のレトルトを選んで、それからもう一つ牛丼も選んでいた。
箸だって丁寧に一膳ずつ置いてある。
絶句してテーブルの上を見つめた。身に覚えのない行動に、自分で恐ろしさを感じる。
「……あれ、私……? い、いつも伊藤さんもいるから、癖で間違えちゃったのかも……?」
渇いた笑いを浮かべながらそういった。そうであってほしいという願いだった。九条さんは固く口を閉じたままじっと私を見つめている。
そしてテーブルの端には、こちらを見て微笑む日本人形が立っていた。彼女に監視されているような気がして、慌てて視界に入らないように視線を逸らす。
違う、そうじゃない。そんなわけないんだから。
「き、きっとそうですね! 伊藤さんの分までやっちゃいました、今日あんまり寝てなかったから。やだなーもう」
「……疲れてるせいですかね」
「多分そうです! きっとそう! 今日は早く寝ようかな、体力ないのもいけないですよね。二人で分けましょうこれ!」
私は引き攣った笑顔でそう言った。九条さんは何かいいたそうにしていたが、それ以上何も言わなかった。私の精神面を考えてそうしてくれたのかもしれない。二人で温かい食事を口に運び食べた。正直なところ、美味しさなんてちっとも感じなかった。お腹を満たすためにひたすら咀嚼を繰り返す。
何も考えずに、あの人形を一人としてカウントしていたとしたら。
私はもう手遅れかもしれない。
「ええ、ううん……」
私は一旦手を止めて、人形の元へ近づいてみる。しゃがみ込み、じっとその顔を覗き込んだ。こうしてみると、ただの質の良い人形にしか見えない。ちょっと不気味さはあるけど。
例えば髪の毛が伸びるとか瞳が動くとか、そういうわかりやすいことがあればいいのに、この子はそういうものはない。
「嫌な感じはするけどぱっと見は普通の人形です。もちろん声も、朝聞いて以降は聞こえませんし」
「そうですか……やはり我々のレベルでは厳しいのかもしれませんね。除霊できそうな相手を探すのが一番ですが、困りました」
「妨害されてるのかって思うほど見つかりませんもんね」
私は立ち上がって再びキッチンへ戻る。ちょうど温めが終わったようで、レンジから食事を取り出した。良い香りが一気に広まる。私は料理たちを手に持ち、九条さんが座っているソファへと近づいた。彼の前にお皿を置く。
「結局レトルトですが。フライパンの一つぐらい買ってくださいよ九条さん」
「使わないので」
「もう、最初から諦めてるんだから。はい、適当に温めちゃいました」
「ありがとうございます」
「あ、お箸お箸」
私は戻って適当に戸棚を開き、割り箸を見つけてとりだした。残っていたもう一つのお皿も手に持ち、再び九条さんの元へと戻る。
並んだ料理に箸もおき、ようやく自分も腰を下ろした。
「こんなときですがお腹すきました、食べましょう!」
「はい、いただき」
九条さんが挨拶をしようとした時だ。彼はその言葉を止めた。
私も手を合わせていたところだったので、不思議に思い隣の彼を見た。
「どうしましたか?」
九条さんがゆっくりこちらをみる。それはなんだか焦ったような、厳しい目線に思えた。私は体を強張らせて止まる。何やら不穏な空気を感じとったからだ。
「光さん」
「え、え?」
「なぜ三人分用意したのですか」
目の前のテーブルに、三人分の料理と箸が置かれているのに気がついた。
一気に血の気がひく。自分が何をしたのか理解できなかった。
何も考えずに三人分用意した。適当に親子丼と中華丼のレトルトを選んで、それからもう一つ牛丼も選んでいた。
箸だって丁寧に一膳ずつ置いてある。
絶句してテーブルの上を見つめた。身に覚えのない行動に、自分で恐ろしさを感じる。
「……あれ、私……? い、いつも伊藤さんもいるから、癖で間違えちゃったのかも……?」
渇いた笑いを浮かべながらそういった。そうであってほしいという願いだった。九条さんは固く口を閉じたままじっと私を見つめている。
そしてテーブルの端には、こちらを見て微笑む日本人形が立っていた。彼女に監視されているような気がして、慌てて視界に入らないように視線を逸らす。
違う、そうじゃない。そんなわけないんだから。
「き、きっとそうですね! 伊藤さんの分までやっちゃいました、今日あんまり寝てなかったから。やだなーもう」
「……疲れてるせいですかね」
「多分そうです! きっとそう! 今日は早く寝ようかな、体力ないのもいけないですよね。二人で分けましょうこれ!」
私は引き攣った笑顔でそう言った。九条さんは何かいいたそうにしていたが、それ以上何も言わなかった。私の精神面を考えてそうしてくれたのかもしれない。二人で温かい食事を口に運び食べた。正直なところ、美味しさなんてちっとも感じなかった。お腹を満たすためにひたすら咀嚼を繰り返す。
何も考えずに、あの人形を一人としてカウントしていたとしたら。
私はもう手遅れかもしれない。
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