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目覚めない少女たち
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「あの、どうしてこんなことに? 私ちっともわからないんですが……」
「正直言いますと私も初めてのパターンです。しかし同時に対応にも悩みますね。少し同業者に相談でもしてみましょうか……」
考えるように九条さんが言った。私は少し首を傾げる。
「同業者、ですか?」
「こういった仕事をしていると、同じ職種の人間と繋がりができるようになりまして」
そういえば以前、マスコミにも知り合いがいると言っていたし、同じように視える知り合いもいると言っていたっけ……。
今までたった一人であらゆる事件を解決してきた九条さんだけれど、やっぱり全て一人でというわけではないのか。
私はまだ経験も浅いし知識も不足しているから、こういう時役に立てないのが非常に悔しいと思った。いつか二人で相談しながら仕事をこなすようになってみたい。
九条さんは決めたように一つ頷くと、私を見る。
「一旦退きましょう。知人に電話してみます」
「あ、はい」
「これ以上ここにいてまた入られては大変です。何とか脱出できましたが次もうまくいくとは限りませんからね」
「す、すみません……」
私が小さくなって謝ると、九条さんはきょとんとして言った。
「謝る必要はありませんよ。ちゃんと自力で戻って来れたのですし、何よりその経験のおかげで解決へ進みそうです。あなたの目撃証言がなくては間違いなくこんなにすぐに真相に辿り着けませんでした」
「あ……」
「さて服も濡れていますしとりあえず車に移動しましょう。立ち上がれますか? それとも」
「た、立てます!」
反射的に返事をした。先ほど抱っこされてたのは嬉しくもあったけれど最高に恥ずかしかった。これほどもう少しダイエットをしておけばよかったと後悔した日はない。意識がしっかりしているときにあんな体制、耐えられる自信がない。
私は急いで立ち上がる。しかし同時に、ゆらりと体が揺れてしまう。
「光さん」
すっと、九条さんが肩をささえてくれた。ただそれだけのことなのに、肩に伝わる彼の体温に顔が熱くなってしまう。
夢で見た甘い九条さん、偽物だったけど、やっぱり嬉しかったし今思えば恥ずかしい……! 私どんな夢見ちゃってたのよ……!
赤くなった顔を隠すように俯く。そんな私に気がついていないのか、九条さんは普段のトーンで言った。
「まだふらつきますね。つかまってください」
「あ、は、はい……」
おずおずと九条さんの肩に手を伸ばしつかまる。自分よりはるかに高い位置に戸惑いながら、倒れ込まないように必死に足に力を入れた。
たったこれだけ触れただけで真っ赤になってしまう。夢にまで見てしまう。
ああ、嫌だな。こんなはずじゃなかったのに。
車に戻った九条さんは、エンジンをかけ暖房を入れ、私が助手席に座ったのを確認すると、自分は車外ですぐに携帯を取り出して電話をかけ出した。思えばかなり遅い時間帯だというのに、彼はお構いなしに電話して悪びれる様子もなく話し出した。
相手の方ごめんなさい、と代わりに謝っておきながら、ガラス越しにその横顔を見る。
……やっぱり携帯、買おうかなあ。
恐らくほとんど鳴ることがない時計と化してしまうだろうけど、それでも仕事をしてる上で九条さんに電話したり、メッセージを送ったりできるかもしれない。それに普通に考えて、体調崩したりして伊藤さんに休みの連絡したい時とか困るじゃないか。
まだまだ生活に十分な余裕があるとはいえないんだけれど……古い型にして、一番安いプランならそこまで負担にはならないかも。
この調査が終わったら携帯ショップに行ってみよう。私はそう心に決めた。
しばらく話し続けた九条さんは、ようやく通話を終えたらしい。携帯をポケットにしまい、運転席へと戻ってくる。中に入り車のドアを閉めると、ふうと息をつく。
「どうでした?」
彼に尋ねると、腕を組んでどこかを眺めながら言う。
「やはり非常に珍しいパターンだとは言われました。とりあえず私たちにできそうな事を試してみます」
「何をすんですか?」
恐る恐る彼に尋ねる。九条さんはキッパリと言った。
「自殺を阻止します」
「正直言いますと私も初めてのパターンです。しかし同時に対応にも悩みますね。少し同業者に相談でもしてみましょうか……」
考えるように九条さんが言った。私は少し首を傾げる。
「同業者、ですか?」
「こういった仕事をしていると、同じ職種の人間と繋がりができるようになりまして」
そういえば以前、マスコミにも知り合いがいると言っていたし、同じように視える知り合いもいると言っていたっけ……。
今までたった一人であらゆる事件を解決してきた九条さんだけれど、やっぱり全て一人でというわけではないのか。
私はまだ経験も浅いし知識も不足しているから、こういう時役に立てないのが非常に悔しいと思った。いつか二人で相談しながら仕事をこなすようになってみたい。
九条さんは決めたように一つ頷くと、私を見る。
「一旦退きましょう。知人に電話してみます」
「あ、はい」
「これ以上ここにいてまた入られては大変です。何とか脱出できましたが次もうまくいくとは限りませんからね」
「す、すみません……」
私が小さくなって謝ると、九条さんはきょとんとして言った。
「謝る必要はありませんよ。ちゃんと自力で戻って来れたのですし、何よりその経験のおかげで解決へ進みそうです。あなたの目撃証言がなくては間違いなくこんなにすぐに真相に辿り着けませんでした」
「あ……」
「さて服も濡れていますしとりあえず車に移動しましょう。立ち上がれますか? それとも」
「た、立てます!」
反射的に返事をした。先ほど抱っこされてたのは嬉しくもあったけれど最高に恥ずかしかった。これほどもう少しダイエットをしておけばよかったと後悔した日はない。意識がしっかりしているときにあんな体制、耐えられる自信がない。
私は急いで立ち上がる。しかし同時に、ゆらりと体が揺れてしまう。
「光さん」
すっと、九条さんが肩をささえてくれた。ただそれだけのことなのに、肩に伝わる彼の体温に顔が熱くなってしまう。
夢で見た甘い九条さん、偽物だったけど、やっぱり嬉しかったし今思えば恥ずかしい……! 私どんな夢見ちゃってたのよ……!
赤くなった顔を隠すように俯く。そんな私に気がついていないのか、九条さんは普段のトーンで言った。
「まだふらつきますね。つかまってください」
「あ、は、はい……」
おずおずと九条さんの肩に手を伸ばしつかまる。自分よりはるかに高い位置に戸惑いながら、倒れ込まないように必死に足に力を入れた。
たったこれだけ触れただけで真っ赤になってしまう。夢にまで見てしまう。
ああ、嫌だな。こんなはずじゃなかったのに。
車に戻った九条さんは、エンジンをかけ暖房を入れ、私が助手席に座ったのを確認すると、自分は車外ですぐに携帯を取り出して電話をかけ出した。思えばかなり遅い時間帯だというのに、彼はお構いなしに電話して悪びれる様子もなく話し出した。
相手の方ごめんなさい、と代わりに謝っておきながら、ガラス越しにその横顔を見る。
……やっぱり携帯、買おうかなあ。
恐らくほとんど鳴ることがない時計と化してしまうだろうけど、それでも仕事をしてる上で九条さんに電話したり、メッセージを送ったりできるかもしれない。それに普通に考えて、体調崩したりして伊藤さんに休みの連絡したい時とか困るじゃないか。
まだまだ生活に十分な余裕があるとはいえないんだけれど……古い型にして、一番安いプランならそこまで負担にはならないかも。
この調査が終わったら携帯ショップに行ってみよう。私はそう心に決めた。
しばらく話し続けた九条さんは、ようやく通話を終えたらしい。携帯をポケットにしまい、運転席へと戻ってくる。中に入り車のドアを閉めると、ふうと息をつく。
「どうでした?」
彼に尋ねると、腕を組んでどこかを眺めながら言う。
「やはり非常に珍しいパターンだとは言われました。とりあえず私たちにできそうな事を試してみます」
「何をすんですか?」
恐る恐る彼に尋ねる。九条さんはキッパリと言った。
「自殺を阻止します」
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