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一章
パーティー
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普通のオメガにはカラーなんか必要なかった。それもそのはず、引き取られて直ぐの発情期に主人と番になるからだ。その後の生活は、ご想像におまかせする。
王子が参加するパーティーなのだからある程度の規模であることは予想していた。オメガを物としか思わない人々が多数参加することも予想していた。この国の未来を担う王子とオメガが共に歩いていたらそんな人は一体どう思うのだろうか― 想像することはそう難しくなかった
人々は好奇の目を王子に向けた。いや、その視線には俺も含まれるのだろうけど。誰一人として近づこうとせず、それどころか避けて作られた道を一歩一歩確実に進んでいく。
カイル王子は一人の女性の前で足を止めた。俺も合わせて足をとめる。女性の周りにはお付きの人と思われる方が数人いた。豪華な装飾のドレスを着る女性はおそらく相当な身分の方だろう。
「ローラ嬢この度はお招き頂き、誠に光栄です」
王子が頭を下げるので俺もなんとなく頭を下げた。
「カイル王子、ご来場誠に感謝致します。その・・・隣の方は」
「この方は、ジョン・ルーシャです。俺の婚約者です」
カイル王子が俺の名前の嘘をついたのは本名を言うと調べられ俺がベータと偽ったことがバレるからだろう。あと、婚約した覚えはないぞ?番にいずれなるという約束はしたが、婚約はしていないはずだぞ?
「それは・・・・つまり私とは結婚してくださらないということでしょうか?」
「僕はジョンを慕っておりますので」
「ああ、いえ、すみません。聞き方を間違えてしまいました。パスカル家の血を引くアルファである私を差し置いて、何処の馬の骨かもわからない下賎なオメガを選ぶということでしょうか?」
ローラ嬢(と呼ばれていた人)がそう言った。会場はざわめきを増した。空気は依然ピリピリバチバチしている。
そもそも平民であった俺にとって下賎だとかはどうでもよかったが、沢山のアルファに囲まれて俺の心臓はバクバクだった。
「ええ、だからそう言ったはずですが・・・ローラ嬢には理解し難いものでしたか?」
カイル王子が嫌な程に清楚な笑顔で言うとローラ嬢(と呼ば以下略)の顔が次第に赤くなっていく。
「パーティーの主催者であるこの私の顔に泥を塗る気かしら?」
「女性が顔を赤くして憤怒されては恥をかくと思い、泥を塗って顔が見えないようにしてさしあげようと思ったのですが?」
カイル王子は皮肉で返した。会場のざわめきに笑い声がまざった。
恐らく、二人の間には婚約するという話題が持ち上がっていたがカイル王子がこの場で「こいつと結婚するので無理」と言い出したようだ。
まぁ、プライドの高い貴族からしてみれば平民に取られるなんてたまったもんじゃないのだろう
「兄貴がこんな集まり来るなんて珍しいじゃねぇか」
ローラ嬢の後ろから銀髪の男性が顔をのぞかせた。カイル王子と近い容姿をしていたが、身長は男性の方が高かった。
「ミラ!久しぶりだな!元気にしていたか?」
強ばっていたカイル王子の表情が一気に緩んだ。
「おう!兄貴はまた、身長が縮んだんじゃないか」
「ミラが大きくなっただけだろう」
男性がカイル王子の肩に手を置いていた。二人は他愛ないというか、周りを寄せつけがたい雰囲気になってしまいどうすればいいのかわからない俺と顔をあか・・・顔に泥を塗られてしまったローラ嬢はすっかりおいてけぼりだった。
王子が参加するパーティーなのだからある程度の規模であることは予想していた。オメガを物としか思わない人々が多数参加することも予想していた。この国の未来を担う王子とオメガが共に歩いていたらそんな人は一体どう思うのだろうか― 想像することはそう難しくなかった
人々は好奇の目を王子に向けた。いや、その視線には俺も含まれるのだろうけど。誰一人として近づこうとせず、それどころか避けて作られた道を一歩一歩確実に進んでいく。
カイル王子は一人の女性の前で足を止めた。俺も合わせて足をとめる。女性の周りにはお付きの人と思われる方が数人いた。豪華な装飾のドレスを着る女性はおそらく相当な身分の方だろう。
「ローラ嬢この度はお招き頂き、誠に光栄です」
王子が頭を下げるので俺もなんとなく頭を下げた。
「カイル王子、ご来場誠に感謝致します。その・・・隣の方は」
「この方は、ジョン・ルーシャです。俺の婚約者です」
カイル王子が俺の名前の嘘をついたのは本名を言うと調べられ俺がベータと偽ったことがバレるからだろう。あと、婚約した覚えはないぞ?番にいずれなるという約束はしたが、婚約はしていないはずだぞ?
「それは・・・・つまり私とは結婚してくださらないということでしょうか?」
「僕はジョンを慕っておりますので」
「ああ、いえ、すみません。聞き方を間違えてしまいました。パスカル家の血を引くアルファである私を差し置いて、何処の馬の骨かもわからない下賎なオメガを選ぶということでしょうか?」
ローラ嬢(と呼ばれていた人)がそう言った。会場はざわめきを増した。空気は依然ピリピリバチバチしている。
そもそも平民であった俺にとって下賎だとかはどうでもよかったが、沢山のアルファに囲まれて俺の心臓はバクバクだった。
「ええ、だからそう言ったはずですが・・・ローラ嬢には理解し難いものでしたか?」
カイル王子が嫌な程に清楚な笑顔で言うとローラ嬢(と呼ば以下略)の顔が次第に赤くなっていく。
「パーティーの主催者であるこの私の顔に泥を塗る気かしら?」
「女性が顔を赤くして憤怒されては恥をかくと思い、泥を塗って顔が見えないようにしてさしあげようと思ったのですが?」
カイル王子は皮肉で返した。会場のざわめきに笑い声がまざった。
恐らく、二人の間には婚約するという話題が持ち上がっていたがカイル王子がこの場で「こいつと結婚するので無理」と言い出したようだ。
まぁ、プライドの高い貴族からしてみれば平民に取られるなんてたまったもんじゃないのだろう
「兄貴がこんな集まり来るなんて珍しいじゃねぇか」
ローラ嬢の後ろから銀髪の男性が顔をのぞかせた。カイル王子と近い容姿をしていたが、身長は男性の方が高かった。
「ミラ!久しぶりだな!元気にしていたか?」
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「おう!兄貴はまた、身長が縮んだんじゃないか」
「ミラが大きくなっただけだろう」
男性がカイル王子の肩に手を置いていた。二人は他愛ないというか、周りを寄せつけがたい雰囲気になってしまいどうすればいいのかわからない俺と顔をあか・・・顔に泥を塗られてしまったローラ嬢はすっかりおいてけぼりだった。
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