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一章

謝罪

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 自分がオメガとわかる前からオメガへの差別が嫌だった。幼さないがゆえ、他の人と何が違うのかちゃんと分かっていなかったのもあるのかもしれない。オメガになれば将来生活に困ることはまぁ、無いだろう。しかし、それは幸せなのだろうか。幼い頃、そんな事ばかり考えていた。

 幸せの定義が人によって違うことは重々承知しているつもりだ。楽して生きることが幸せ、貴族様の子供を生めて幸せ、オメガでいることが幸せ。そういう考えの人がいる事は否定しないし、それも1つの形だと思う。でも、特異であるからこそ俺は誰よりも普通であることが幸せだと思ってしまった


 目を開けたらいつもの何の絵も描かれていない天井が目に入った。すごく、嫌な夢を見ていた気がする。

「起きましたか!よかった」

 カイル王子は寝室の入口に立っていたが、俺を見るやいなや起きた俺の手を力強く握った。

「すみません。僕が目を離したばかりに」

「いえ、大丈夫です」

 王子が頭を下げようとするので慌てて止める。俺はそんな事に値する人間ではない。

「あの、パーティーは・・・」

「あの後、俺が貴方をこの家に連れてきたので少し早かったかもしれませんが途中で帰りました」

「そうでしたか。すみません」

「いえ!悪いのは俺なので」

 二人して罪悪感を感じているので話を振りずらくなり、気まずくなってしまった。

「俺のせいで王子の手を煩わせてしまってすみません。ですが、もう大丈夫ですので帰っていただいていいですよ」

「いえ!そんな、倒れたんですから大丈夫なはずがありませんよ!もう少し居させてください!」

 王子が熱弁したのに圧されて「わ、分かりました」と返してしまった。特に話すこともないというのに。

「・・・・」

「・・・・」

「ローラ嬢の性格を考えるとダンに当たることは分かっていたはずなのに、予想出来たはずなのに、すみませんでした」

「いえ、もう過ぎたことですし」

「・・・」

「・・・」

 王子は悲しそうに眉をひそめた。また気まずい空気が流れる。何か話題何か話題何か話題・・・

「あ!じゃあ、お詫びとして都市の方で美味しいお菓子を買って来てください。俺、街の方あんまり行きたくないんで」

「・・・そんなことでいいんですか?正直、番契約を断られる可能性も全然考えていたのですが・・・」

「そこまで重く考えることでもないですよ。ただ、あまりああいう場に慣れてなかっただけですし。あと、番のこと断ってよかったんですか?」

「じゃぁ、僕お菓子買って来ますね!」

 王子はわかりやすく慌てて出ていった。たぶん、俺が泣きながら頼めば王子はやさしいから許容してくれたのだろう。でも、番を断るのは今じゃなくていい。そう思うくらいにはパーティーの時の言葉が嬉しかった。
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