上 下
7 / 52
一章

しおりを挟む
 オメガは常に少量のフェロモンが出ているとお医者さんは教えてくれた。だが、俺のフェロモンの量は極端に少ない少ないらしく何かのきっかけで発情期が来ない限りは普通にベータとして生きていけるだろうとの事だった。

 そのため、カイル王子が俺がオメガであると気づいたことはイレギュラーもイレギュラーである。考えられる可能性はカイル王子の鼻が異常にいいか、俺のフェロモン分泌量が増えたか、である。


「このノッポは俺の腹違いの弟であり、この国の第三王子であるミラ・ヒルストンだ」

 どことなく雰囲気が似ていると思ったのはそれが原因かと納得する。王子である、ということはやはりアルファなのだろう。あと、耳に大量についているピアスが怖い。

「ジョン、挨拶をして」

 と言われて心臓がドキリとする。挨拶?そんなものはしたことが無い。ましてや、俺の今までの人生で関わってきた人なんて数える程しかいないのだから正しい作法もわからない。

「お初にお目にかかります。ジョン・ルーシャと申します」

「なぁ、兄貴コイツ本当にオメガ?匂い全然しないんだけど」

 ミラ王子は俺の首のカラーをぐいっと引っ張ると匂いを嗅いだ。首根っこを咥えられた子猫状態になる。

「ジョンは紛れもないオメガだよ。僕にはわかる」

「何それどういう風の吹き回し?兄貴、今までオメガだの結婚だのどうでもいいーとか言ってたのに」

「俺にだって隠したいことの一つや二つある」

 ミラ王子が匂いをわからないと言ったことにフェロモンが増えた訳では無いのだと一安心する。しかし、どうでもいいと言っていたのに俺に番になれと言ってきたのは何故なんだろう?

 ミラ王子とカイル王子が話していると緊迫していた空気がだんだん消えていった。相変わらずローラ嬢は顔を赤くしていたけれど。いや、泥をぬられていたけど、か。

 ミラ王子が「俺、腹減ったからなんか食ってくるわ」と去っていくと他の人が次々にカイル王子の近くに集まってきた。さすが第一王子。何やら国政が~とか研究費が~とか話していたが部外者の俺が聞いていいものかわからず、誰にもバレないようにその場を離れていく。

 煌びやかなご飯に手をつけようとすると横から俺と同じ歳くらいの男の子が顔を出した。目の大きな可愛らしい男の子だった。

「あ!君オメガなんでしょ!食べちゃダメだよ!あれ?でもカイル王子の婚約者ならいいのカナ?」

「あっ、すみません」

「ううん。いいよ!こっちはアルファの人用だからオメガはあっちだよ!」

 少年が指を指した先にはアルファ用の人の三分の一ほどのスペースに確かに料理が用意されていた。三分の一でも十分過ぎるくらいの量があるのだけれど。

「あとね、パーティーの主役はあくまでアルファの人達だからアルファの人と横並びになっちゃダメだよ!少し後ろを歩かないと!」

「そうでしたか。こういう場は不慣れなもので・・・肝に銘じておきます」

「気をつけてねー!」

 そう言うと可愛らしい少年は人混みの中に消えていった。首にはカラーがついていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に来たけど、自分はモブらしいので帰りたいです。

蒼猫
BL
聖女召喚に巻き込まれた就活中の27歳、桜樹 海。 見知らぬ土地に飛ばされて困惑しているうちに、聖女としてもてはやされる女子高生にはストーカー扱いをされ、聖女を召喚した王様と魔道士には邪魔者扱いをされる。元いた世界でもモブだったけど、異世界に来てもモブなら俺の存在意義は?と悩むも……。 暗雲に覆われた城下町を復興支援しながら、騎士団長と愛を育む!? 山あり?谷あり?な異世界転移物語、ここにて開幕! 18禁要素がある話は※で表します。

お助けキャラの俺は、今日も元気に私欲に走ります。

ゼロ
BL
7歳の頃、前世の記憶を思い出した。 そして今いるこの世界は、前世でプレイしていた「愛しの貴方と甘い口付けを」というBLゲームの世界らしい。 なんでわかるかって? そんなの俺もゲームの登場人物だからに決まってんじゃん!! でも、攻略対象とか悪役とか、ましてや主人公でも無いけどね〜。 俺はね、主人公くんが困った時に助言する お助けキャラに転生しました!!! でもね、ごめんね、主人公くん。 俺、君のことお助け出来ないわ。 嫌いとかじゃないんだよ? でもここには前世憧れたあの子がいるから! ということで、お助けキャラ放棄して 私欲に走ります。ゲーム?知りませんよ。そんなもの、勝手に進めておいてください。 これは俺が大好きなあの子をストーkじゃなくて、見守りながら腐の巣窟であるこの学園で、 何故か攻略対象者達からお尻を狙われ逃げ回るお話です! どうか俺に安寧の日々を。

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

弟に殺される”兄”に転生したがこんなに愛されるなんて聞いてない。

浅倉
BL
目を覚ますと目の前には俺を心配そうに見つめる彼の姿。 既視感を感じる彼の姿に俺は”小説”の中に出てくる主人公 ”ヴィンセント”だと判明。 そしてまさかの俺がヴィンセントを虐め残酷に殺される兄だと?! 次々と訪れる沢山の試練を前にどうにか弟に殺されないルートを必死に進む。 だがそんな俺の前に大きな壁が! このままでは原作通り殺されてしまう。 どうにかして乗り越えなければ! 妙に執着してくる”弟”と死なないように奮闘する”兄”の少し甘い物語___ ヤンデレ執着な弟×クールで鈍感な兄 ※固定CP ※投稿不定期 ※初めの方はヤンデレ要素少なめ

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

恋人が本命の相手と結婚するので自殺したら、いつの間にか異世界にいました。

いちの瀬
BL
「 結婚するんだ。」 残されたのは、その言葉といつの間にか握らせられていた手切れ金の紙だけだった。

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 ハッピーエンド保証! 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります) 11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。 ※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。 自衛お願いします。

転移したら獣人たちに溺愛されました。

なの
BL
本編第一章完結、第二章へと物語は突入いたします。これからも応援よろしくお願いいたします。 気がついたら僕は知らない場所にいた。 両親を亡くし、引き取られた家では虐められていた1人の少年ノアが転移させられたのは、もふもふの耳としっぽがある人型獣人の世界。 この世界は毎日が楽しかった。うさぎ族のお友達もできた。狼獣人の王子様は僕よりも大きくて抱きしめてくれる大きな手はとっても温かくて幸せだ。 可哀想な境遇だったノアがカイルの運命の子として転移され、その仲間たちと溺愛するカイルの甘々ぶりの物語。 知り合った当初は7歳のノアと24歳のカイルの17歳差カップルです。 年齢的なこともあるので、当分R18はない予定です。 初めて書いた異世界の世界です。ノロノロ更新ですが楽しんで読んでいただけるように頑張ります。みなさま応援よろしくお願いいたします。 表紙は@Urenattoさんが描いてくれました。

処理中です...