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筑波大学ミステリー研究会

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批評会報告『瓶詰地獄』

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批評会報告『瓶詰地獄』
 まさかの一人(会長)しか来なかった地獄のような回である。僕の作品選びが悪いのだろうか?舌打ちが出かけた瞬間だった。レジュメ八枚の努力を無駄にしたくないので絶対使いまわそう。
 だが批評会自体は割とよかったんじゃないだろうか。
 本作は推理小説かと言われると間違いなく違い、どちらかという怪奇小説だと言える。そこで怪奇小説の自体の話になるわけだが、怪奇小説の面白さは逸脱の魅せ方で決まり得るものだという結論になった。一見まともに見えるような人間が実は狂っていたとか、まともな人間が徐々に狂っていく様を描写するのが理解できる狂気であり、惹きつけられるのだと。確かにこれは僕も共感できるところで、やっぱり近年の安物サイコホラー映画にありがちな高笑いしながらチェンソーを振り回す奴じゃダメなんですよ。そういう奴に限ってお涙頂戴の激寒薄っぺらな悲しい過去(笑)がオマケでついてくるのだ。反吐が出るね。その点やっぱり夢野久作の狂気の描き方は精緻極まりないもので、唯一無二だろう。夢野久作は生活における小汚さとか垢を包み隠さず描き、そこから少しずつ日常を崩していくのだ。それ故に土俗的と言われがちなのだが、その正直さと言うか、人間の行動性を丹念に観察し文に変換する能力に長けているのだろうなとつくづく感じる。ある意味、小栗虫太郎と夢野久作って対極にいるんじゃないかと思う。
 小栗虫太郎は常人離れした知的な登場人物による徹底的な衒学趣味と過剰なまでに装飾された舞台が特徴的。その常人離れっぷりが狂気的。それに対して夢野久作は先ほども述べたように理解できる狂人を描く。誰もが狂う可能性を持っているかもしれない、そんな日常に潜む闇を粘性高く書くのだ。対極だがどちらも狂気を描く優れた作家なのは間違いない。
 三通の手紙の時系列については三通目から順に辿っていると考えるのが妥当だろう。しかし順序の作り方自体は当然六通りあるので丁寧に考察をした。ではそれぞれに考察を与える意味とは何だろう?そこでアリバイトリックだの遺産相続争いの殺人だの考察というか妄想出来て楽しかった。
 最後に過去の批評会を振り返りながら、物証と証言のどちらが確証高いものなのかの議論。
 やっぱり証言>物証だというのは自明的だろう。犯人以外は嘘の証言をつかないというのはやや欺瞞的だが、ある種暗黙のルールだ。その点物証の誤魔化しは容易かつ人間の主観の脆弱性を指摘する話を作れる上でも偽装の可能性を多分に含んだ要素だと言える。
 こんな風に様々なものを指さしてミステリーだとこじつけるのも一つの楽しみ方でもあると思う。
(A・S)
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