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明日の兄弟
12 平和な朝
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翌朝、そろそろ起きて準備をしないと始業に間に合わない時間に、奏は秋の部屋に入った。
秋の部屋のベッドの上は昨夜と同じように小さな山になっている。
「秋、起きろ」
声を掛けながら薄い掛け布団を揺さぶると布団が動いた。しばらくしてから秋が怠そうに体を起こして、奏を見て半分寝たままもぞもぞと布団を整えようとする。
秋はいつもは自分で起きるのに、今日は眠そうな目でベッドから立ち上がれずにぼんやりしていた。昨日、2万円を貰う代わりに秋が何をされたのか奏は詳しく聞いていないけれど、そのせいで疲れているのかもしれない。
「……大丈夫?」
「……はい」
奏が心配になって尋ねると、秋は力の無い足取りでベッドから出て壁にかけてある制服を手に取った。秋の部屋にある服はそれくらいで、他は季節外れの奏の古着しかない。
「学校、行けるか?」
奏が尋ねると、パジャマを脱ぎかけていた秋は振り返って不思議そうに聞いた。
「……休む?」
「行くよ。朝ご飯、早く食えよ」
「はい……」
秋はまだ頭が覚めていないのか、ふらふらしながら着替えている。
考え事をしてほとんど眠れなかった奏も、目を擦りながら階段を下りて、リビングのダイニングテーブルについた。
いつものようにトーストとオムレツに、サラダやフルーツが揃った見本のような朝食が並んでいる。
「遅刻しないで行きなさいよ」
「はーい」
紅茶を置いた母親に優等生な返事をして、奏は秋が下りて来るのを待っていた。
秋が朝食に手を付けないのはいつものことで、母親がそれをそのまま捨てるのもいつものことだ。
だから奏は気にせず家を出て学校に向かったが、奏の後ろを歩いていた秋は道の途中で蹲って動かなくなってしまった。
気付かずに2、3歩進んでいた奏は、秋が後ろにいないのに気付いて振り返る。
「どうした?」
「…………」
奏がしゃがんで秋の顔を見ると、血の気が無い真っ白の顔をして、目が虚ろで焦点が合っていない。奏は経験がないが、悠が貧血でこんな風に動けなくなっているのを見たことがある。
奏は秋連れてすぐ近くの公園に入った。秋をベンチに座らせて、コンビニに行っておにぎりやパンやジュースを適当に買い込んで戻る。
秋に好きな物を選ぶように袋を差し出すと、秋は袋を覗いて手辺り次第に包みを開けている。
食べるのを嫌がって断るかと思ったのに、意外にも秋は口に押し込むようにして必死に食べ始めた。
「お前、朝は食べないタイプなのかと思ってた」
「だって、見てるから……」
「見てる……?」
奏は誰が、と尋ねようとしたが、朝のリビングには奏と秋の他には母親しかいない。
奏は秋の食事の様子なんて見ていないから、秋が感じている視線は母親のものだ。
(見てたか……?まぁ、多分、ご飯作っても秋が全然食べないから、気にしてるのかな)
「ふぁ……」
ジュースを飲み干した秋は、ようやく満足したように息を吐いた。
一緒になって二度目の朝食を食べていた奏もパン屑を払って立ち上がり、秋の手を引いて学校に向かった。
秋の部屋のベッドの上は昨夜と同じように小さな山になっている。
「秋、起きろ」
声を掛けながら薄い掛け布団を揺さぶると布団が動いた。しばらくしてから秋が怠そうに体を起こして、奏を見て半分寝たままもぞもぞと布団を整えようとする。
秋はいつもは自分で起きるのに、今日は眠そうな目でベッドから立ち上がれずにぼんやりしていた。昨日、2万円を貰う代わりに秋が何をされたのか奏は詳しく聞いていないけれど、そのせいで疲れているのかもしれない。
「……大丈夫?」
「……はい」
奏が心配になって尋ねると、秋は力の無い足取りでベッドから出て壁にかけてある制服を手に取った。秋の部屋にある服はそれくらいで、他は季節外れの奏の古着しかない。
「学校、行けるか?」
奏が尋ねると、パジャマを脱ぎかけていた秋は振り返って不思議そうに聞いた。
「……休む?」
「行くよ。朝ご飯、早く食えよ」
「はい……」
秋はまだ頭が覚めていないのか、ふらふらしながら着替えている。
考え事をしてほとんど眠れなかった奏も、目を擦りながら階段を下りて、リビングのダイニングテーブルについた。
いつものようにトーストとオムレツに、サラダやフルーツが揃った見本のような朝食が並んでいる。
「遅刻しないで行きなさいよ」
「はーい」
紅茶を置いた母親に優等生な返事をして、奏は秋が下りて来るのを待っていた。
秋が朝食に手を付けないのはいつものことで、母親がそれをそのまま捨てるのもいつものことだ。
だから奏は気にせず家を出て学校に向かったが、奏の後ろを歩いていた秋は道の途中で蹲って動かなくなってしまった。
気付かずに2、3歩進んでいた奏は、秋が後ろにいないのに気付いて振り返る。
「どうした?」
「…………」
奏がしゃがんで秋の顔を見ると、血の気が無い真っ白の顔をして、目が虚ろで焦点が合っていない。奏は経験がないが、悠が貧血でこんな風に動けなくなっているのを見たことがある。
奏は秋連れてすぐ近くの公園に入った。秋をベンチに座らせて、コンビニに行っておにぎりやパンやジュースを適当に買い込んで戻る。
秋に好きな物を選ぶように袋を差し出すと、秋は袋を覗いて手辺り次第に包みを開けている。
食べるのを嫌がって断るかと思ったのに、意外にも秋は口に押し込むようにして必死に食べ始めた。
「お前、朝は食べないタイプなのかと思ってた」
「だって、見てるから……」
「見てる……?」
奏は誰が、と尋ねようとしたが、朝のリビングには奏と秋の他には母親しかいない。
奏は秋の食事の様子なんて見ていないから、秋が感じている視線は母親のものだ。
(見てたか……?まぁ、多分、ご飯作っても秋が全然食べないから、気にしてるのかな)
「ふぁ……」
ジュースを飲み干した秋は、ようやく満足したように息を吐いた。
一緒になって二度目の朝食を食べていた奏もパン屑を払って立ち上がり、秋の手を引いて学校に向かった。
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