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明日の兄弟
3 家族の義務
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その次の日から、奏は学校に一緒に行く時も秋と話さないようにした。
一言も会話をしないで学校の教室まで連れて行き、帰りも無言のまま教室にいる秋を連れて家まで帰る。
一週間もすれば奏はそんな疲れていたが、秋にとってもだいぶストレスだったらしい。
ある朝、朝食の席に着いた秋の顔は血の気が無くて真っ白だった。
朝はいつも貧血気味で元々あまり食べない秋だが、その朝は手が震えて食器を取ろうとしない。
奏はそれに気付いていたが、見ないふりをしていた。
「行ってきまーす」
「いってらっしゃい」
母親は全く手をつけられていない秋の朝食を、何も言わずにそのままゴミ箱へ捨てる。
秋は奏がリビングを出たのを見て、足を縺れさせながら奏を追い掛けて家を出た。
「お前……大丈夫かよ」
「……ごめんなさい」
しばらく歩いてから奏が尋ねると、秋はいつものように小さな声でそう言って、奏の後ろをふらふらと歩いている。
奏は気にしないようにしていたが、体を引き摺るように歩いている秋がさすがに心配になって足を止めた。
「学校休むか?」
「……」
秋は黙ったまま首を横に振った。しかし、夏でもないのに顔に汗が浮かんでいて息が浅く震えている。
「無理だろ。帰ろう」
奏が家に引き返そうと秋の腕を引っ張ると、意外なことに秋は足に力を入れて抵抗してきた。
「でも……怒られる」
「じゃ、行くのか?」
「……」
秋は焦点の合わない潤んだ目で頷く。
「ほら、行けよ」
奏は秋の腕を離して、秋の体をどんっと押した。
奏よりも小柄で痩せた秋は簡単に地面に倒れて動かなくなる。
「帰るぞ」
「……はい」
奏は秋の腕を引いて立たせた。秋は諦めたのか大人しく手を引かれて家に戻る。
玄関の扉を開けた音にリビングから母親が駆け寄って来た。
「どうしたの?」
「ちょっと体調悪いから、学校休む」
奏が言うと、母親は特に突っ込んで尋ねてくることも無かった。
家で勉強してなさいよ、とそれだけ言うと、リビングに戻って荒い物を再開させる音がする。
奏は秋の腕を掴んで引き摺るようにして階段を上がった。
秋を部屋に押し込むと、力尽きたように制服のままベッドに倒れる。
「何か食べたいもんとか、欲しいものあるか?」
秋はベッドの上で僅かに首を振って、そのまま動かなくなる。
多分、単なる風邪だ。寝てれば治るだろうと奏は秋を放っておくことにした。
母親に了承を貰ったから、今日は学校をサボって家でのんびりできる。
「せっかくだし、ゲームでもしてるかな……」
奏は秋の部屋を出て、自分の部屋に行って制服を着替えた。
今日は隼も望も家にいない。隼は予備校に自習に行っている。望は彼氏の家に半分同棲していて、ほとんど家に帰って来ない。
一言も会話をしないで学校の教室まで連れて行き、帰りも無言のまま教室にいる秋を連れて家まで帰る。
一週間もすれば奏はそんな疲れていたが、秋にとってもだいぶストレスだったらしい。
ある朝、朝食の席に着いた秋の顔は血の気が無くて真っ白だった。
朝はいつも貧血気味で元々あまり食べない秋だが、その朝は手が震えて食器を取ろうとしない。
奏はそれに気付いていたが、見ないふりをしていた。
「行ってきまーす」
「いってらっしゃい」
母親は全く手をつけられていない秋の朝食を、何も言わずにそのままゴミ箱へ捨てる。
秋は奏がリビングを出たのを見て、足を縺れさせながら奏を追い掛けて家を出た。
「お前……大丈夫かよ」
「……ごめんなさい」
しばらく歩いてから奏が尋ねると、秋はいつものように小さな声でそう言って、奏の後ろをふらふらと歩いている。
奏は気にしないようにしていたが、体を引き摺るように歩いている秋がさすがに心配になって足を止めた。
「学校休むか?」
「……」
秋は黙ったまま首を横に振った。しかし、夏でもないのに顔に汗が浮かんでいて息が浅く震えている。
「無理だろ。帰ろう」
奏が家に引き返そうと秋の腕を引っ張ると、意外なことに秋は足に力を入れて抵抗してきた。
「でも……怒られる」
「じゃ、行くのか?」
「……」
秋は焦点の合わない潤んだ目で頷く。
「ほら、行けよ」
奏は秋の腕を離して、秋の体をどんっと押した。
奏よりも小柄で痩せた秋は簡単に地面に倒れて動かなくなる。
「帰るぞ」
「……はい」
奏は秋の腕を引いて立たせた。秋は諦めたのか大人しく手を引かれて家に戻る。
玄関の扉を開けた音にリビングから母親が駆け寄って来た。
「どうしたの?」
「ちょっと体調悪いから、学校休む」
奏が言うと、母親は特に突っ込んで尋ねてくることも無かった。
家で勉強してなさいよ、とそれだけ言うと、リビングに戻って荒い物を再開させる音がする。
奏は秋の腕を掴んで引き摺るようにして階段を上がった。
秋を部屋に押し込むと、力尽きたように制服のままベッドに倒れる。
「何か食べたいもんとか、欲しいものあるか?」
秋はベッドの上で僅かに首を振って、そのまま動かなくなる。
多分、単なる風邪だ。寝てれば治るだろうと奏は秋を放っておくことにした。
母親に了承を貰ったから、今日は学校をサボって家でのんびりできる。
「せっかくだし、ゲームでもしてるかな……」
奏は秋の部屋を出て、自分の部屋に行って制服を着替えた。
今日は隼も望も家にいない。隼は予備校に自習に行っている。望は彼氏の家に半分同棲していて、ほとんど家に帰って来ない。
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