黒ネコ戦隊56562

水玉猫

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クウクウクマ救出作戦、失敗か?

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 袋から顔を出したリーダーは檻にあったリンゴを煙の中に投げ入れ、その代わりとでもいうようにぼくを袋の中に引っ張り込んだ。
 最後に袋に飛び込んで来たキツネが、内側から素早く袋の口を閉める。
「これで、玉手箱の煙もオバケ軍団も入ってこれませんよ」

 ぼくの頭の上でキツネが言った。尻尾が顔の前に垂れ下がっている。

「なんとか間に合ったみたいね。3秒過ぎたけど、ぼうやは可愛いままだもの」
 ほっぺががくっつくほど近くでリーダーが囁いた。ぼくは妖怪ネムレナイトにならずに済んだんだ。へなへなと力が抜けていく。

 たぶん、ぼくのお尻の下にいるのがクウクウクマだ。袋の中は身動きが取れないくらいぎゅうぎゅう詰めで確かめることはできないけれど、明らかにキツネや黒ネコたちと感触が違っている。ぬいぐるみのクマのクウとも違う。なんか人間みたいだった。オバケに誘拐されたときに、ぬいぐるみから姿が変わっちゃったのかもしれない。パッチリコンコンキツネが妖狐に、リーダーが猫魈ねこしょうになるみたいに、ぼくのぬいぐるみもクウクウクマになって変化へんげしたんだ。どんな姿になったのか見たかったけれど、この状態じゃ到底見ることはできない。

 だけど、これからどうなるのだろう。
 玉手箱の煙からは逃れたものの、袋に閉じ込められたってことだもの。外にはオバケ軍団と玉手箱の煙。出るに出られない。袋のネズミってことだよね。袋の中にいるのはネズミじゃなくて、黒ネコとキツネとぼくなんだけれども。
 オバケ軍団がこの袋にクウクウクマを入れて、クジラのおなかの中まで運んで来たんだから、オバケ軍団はぼくらの入った袋を担いでどこへだって運んで行けるってことじゃないのか? それって、とても不味まずくはないか—— と気が付いた瞬間、袋がフワッと浮いた。

「うっわぁ!」
「袋の中で、大きな声を出さないでください」キツネのしっぽが左右に動き、顔を擦ってこそばゆい。くしゃみが出そうだ。「星太くんも早く耳をふさぐんですよ」

「なんで? 大きな声を出したぼくが耳をふさがなきゃならないの? 聞いた方はうるさいから耳をふさぐのはわかるんだけど」

 キツネは耳をふさいでいるのか、返事がない。目だけ動かし両横を見たら、リーダーたちも耳を押さえている。ぼくはイラッとした。こんなに危機的状況に追い込まれてるんだよ。オバケ軍団にかつがれて、これから、どこに連れて行かれて、なにをされるか、わかんないんだよ!
「パッチリコンコンキツネさんもゴロゴロニャアも、耳なんか押さえている場合じゃないよ! 早く、どうにかしないと! この袋、おばけ軍団に担がれているんだよ!」
 だけど、なにを言っても返事はない。それは、そうだ。全員、耳をふさいでいるんだもの。
 黒猫戦隊ゴロゴロニャアのクウクウクマ救出作戦は、最後の最後で失敗に終わったんだ……。


 ゴオォォォッ


 突然、袋の外ですごい音が鳴りだした。


 ゴオォォォッ
 ゴオォォォッ
 ゴオォォォッ


 まさか、これから火炙りにされたり、槍で滅多刺しにされたりするんじゃないだろうな……。
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