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妖怪と猫の日
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「今日は、なんの日だ」
野球クラブの練習が終わった帰り。分かれ道まで来て、急に恒太が自転車を止めて、ぼくに訊いた。雲行きが怪しい。通り雨が来る前に帰りたかったけれど、恒太に付き合ってぼくも自転車を止めた。
「なんの日って、なんの?」
「なに、その答えかた。八月八日は、なんの日だって訊いてんだよ、星太」
「八月八日は、八月八日だろ」
「まじめにきいてんだから、まじめに答えろよ。八月八日はなんの記念日だか、知っているか?」
「知るわけがない」
「八月八日は、妖怪の記念日なんだ」
「へぇ。はじめて聞いた。妖怪に記念日なんてあるんだ」
そう言いながら、ぼくは空を見上げた。遠くでゴロゴロとネコがのどを鳴らすような雷の音がしている。
雨が降り出す前に帰れるかな。ぼくの家は恒太の家より遠いんだ。自転車で五分もよけいにかかる。ぼくの帰る左側の道は恒太の家のある右側の道とちがって、これといって雨宿りできる場所がない。通り雨に降られたら、家に着くころには濡れネズミだ。
なのに恒太は雨のことなんか気にも止めずに話を続ける。
「で、なぜ八月八日なのか、わかる?」
「わかるわけがない。ぼくは妖怪じゃないんだから」
「八日だから、ようかいの日なんだ」
「なんだ、ダジャレか」
「今日、星太も妖怪になっちゃうかもよ」恒太はケラケラと笑った。
野球クラブの練習が終わった帰り。分かれ道まで来て、急に恒太が自転車を止めて、ぼくに訊いた。雲行きが怪しい。通り雨が来る前に帰りたかったけれど、恒太に付き合ってぼくも自転車を止めた。
「なんの日って、なんの?」
「なに、その答えかた。八月八日は、なんの日だって訊いてんだよ、星太」
「八月八日は、八月八日だろ」
「まじめにきいてんだから、まじめに答えろよ。八月八日はなんの記念日だか、知っているか?」
「知るわけがない」
「八月八日は、妖怪の記念日なんだ」
「へぇ。はじめて聞いた。妖怪に記念日なんてあるんだ」
そう言いながら、ぼくは空を見上げた。遠くでゴロゴロとネコがのどを鳴らすような雷の音がしている。
雨が降り出す前に帰れるかな。ぼくの家は恒太の家より遠いんだ。自転車で五分もよけいにかかる。ぼくの帰る左側の道は恒太の家のある右側の道とちがって、これといって雨宿りできる場所がない。通り雨に降られたら、家に着くころには濡れネズミだ。
なのに恒太は雨のことなんか気にも止めずに話を続ける。
「で、なぜ八月八日なのか、わかる?」
「わかるわけがない。ぼくは妖怪じゃないんだから」
「八日だから、ようかいの日なんだ」
「なんだ、ダジャレか」
「今日、星太も妖怪になっちゃうかもよ」恒太はケラケラと笑った。
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