魔法の葉っぱ 〜落ち葉になった小犬〜（改稿）

ドリームボックス

　子猫の段ボール箱がなくなったその次の日の朝、またカラスがやってきました。

　その日はゴミの収集日で、生ゴミの袋がいくつも出されていました。
　側溝そっこうの枯葉も掃除されて、ゴミ袋に入れられていました。わたしは掃除の人に気付かれることもなく、ひとりでゴミ置場のすみにいました。

　カラスは、いそいそと生ゴミの袋をあさろうとして、わたしに気がつきました。

「一昨日おとといの子猫らが、どこに連れて行かれたのか、知っているかい？」
　カラスはいきなり、わたしにたずねました。

　わたしは、もちろん知っていました。
　男の子たちと入れ違うように、病院帰りのおばあさんが通りかかったのです。鳴き声を聞きつけたおばあさんは、すぐに植え込みの下の子猫たちを見付けました。
　おばあさんはスマホを出し、その場で動物愛護センターに電話をかけました。わたしはハラハラしながら、おばあさんが電話で話しているを聞いていました。
　でも、子猫を襲うようなカラスになんか、返事はしたくありません。

　カラスは、わたしの気持ちにおかまいなしに続けました。
「この街のはずれにある動物愛護センターっていうところさ。そこには、とても恐い箱があるんだぜ。街の人間たちはドリームボックスって呼んでいるんだがな。なにがドリームなもんか。その箱の中に入れられたら、犬も猫も息が詰まって泣き叫びながら死んじまうんだ。もちろん、おれら、鳥だってな。もっとも、おまえさんのような落ち葉なら平気だろうが」
　カラスは、カアカアと笑いました。

　わたしは、ツバサがないのがくやしくてたまりませんでした。
　ツバサがあれば、すぐにでも、このカラスの前から飛び立ち、山の中の目印の木に帰ることができるのに。そして、迎えの車を待つことができるのに。
　もしかしたら、わたしがこうしている間にも、目印の木に迎えの車が来ているかもしれない。おとうさんが、わたしを探しているかもしれない。それなのに、わたしは、こうしてカラスとゴミ置場にいるしかないのです。

　わたしは、このカラスがドリームボックスに入れられてしまえばいいと思いました。